これは はるばると東洋から
わたしの庭に移された木の葉です
この葉には 賢者の心をよろこばせる
ふかい意味がふくまれています
これは もともと一枚の葉が
裂かれて二枚になったのでしょうか
それとも 二枚の葉が相手を見つけて
一枚になったのでしょうか
こうした問いに答えられる
ほんとうの意味がどうやらわかってきました
わたしの歌を読んであなたはお気づきになりませんか
わたしも一枚でありながら
あなたとむすばれた二枚の葉であることが
『ゲーテ詩集』(井上正蔵訳、旺文社文庫、1968年)より
1815年作、『西東詩集』の「ズライカの書」に含まれる詩。
「ズライカの書」はズライカ(マリアンネ)とハーテム(ゲーテ)
の相聞歌の形式をとってふたりの恋愛を歌ったもの。
ゲーテは二枚の葉が割れて一枚につながっている銀杏の
葉を男女の愛の象徴とみて、ハイデルベルクの古城の庭
にあった一枚の銀杏の葉をマリアンネに贈った。
GOETHE HAUS