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遊里跡の探訪録など。
ブログの日時は、行動日・撮影日に合わせております。

福山 新町

2012年05月05日 18時00分00秒 | ◆中国
遊廓→赤線
昭和5年ごろ、軒数53、娼妓数160
昭和30年、業者数約30


国道2号線沿いにある古風なビジネス旅館。ショーウィンドウのような出窓がおもしろい。
転業旅館かどうかは、なんともいえない。

 
鋭角の角地に建つ奇妙な物件。基礎は和風、手前は小料理屋風、右側面はカフェー風。
まとまりのない外観ながら、そのとっちらかったような装いが逆に個性になっている。


微妙なカーブを描く庇と、その上に乗る青い洋瓦が、まるで大波と小波を模したよう。
二階の手すりも個性的だ。花をイメージした模様なのか、あるいは七曜紋なのか。

 
[左]カフェー調の建物が並ぶ。二軒のように見えるが、実際は五軒の軒割りらしい。
[右]二階に球形の照明。こういう照明を見るたびに、よく残っているものだと感心する。

 
現役なのだろうか。場所が場所だけに、看板の名前が色っぽいものに思えてしまう。
建物は派手な造りではないものの、玄関の軒にカフェー風の特徴が見て取れる。


角を大きく切った和風建築。二重庇の構造が建物に重厚感を与えている。
窓や壁に大規模な改修の手が入っており、オリジナルの姿を想像するのは難しい。

 
帰り際に遭遇した和風建築。遊里跡と思われる場所から少し外れたところで見かけた。
表札代わりらしい照明カバーには「魚善」とある。かつては料亭だったのだろうか。

尾道 久保町(2)

2012年05月05日 15時00分00秒 | ◆中国
ひきつづき尾道を回る。

 
[左]アーチ状の入口が印象的。すぐ右横の小さめの入口は住居用らしい。
[右]モザイク状のタイルが貼られている。しかし、建築当初の外装ではなさそうだ。


和風建築が向かい合う路地。


一階も小規模だが、二階はさらに小さい。
このなんとも不安定な二階がどのように利用されていたのか、想像がふくらむ。

 
和風建築が和洋折衷に改造されている。尾道では同様の改築を頻繁に見かけた。
二階に目を向けると、縦長の窓が並んでいる。建て付けが悪いと開閉に難儀しそうだ。


十字路に残っていたゲート。中央のスペースには看板が収まっていたのかもしれない。
看板のまわりには、華やかな電飾があしらわれていた可能性もありそうだ。


落ち着いたたたずまいの木造三階建て。
それほど大きな建物ではないとはいえ、三階建てともなるとやはり迫力を覚える。

 
通路を覆うように張り出した長い軒。どのような意図でこの形になったのだろうか。
見上げると、黄色っぽい漆喰の壁と、欄干に彫り抜きの装飾が目につく。

尾道 久保町(1)

2012年05月05日 14時00分00秒 | ◆中国
遊廓→赤線
昭和5年ごろ、業者数78、娼妓数220
昭和30年、業者数50、娼妓数180

 
堂々としたたたずまいの三層楼。道幅が狭く、建物全体を撮影できないのがもどかしい。
路地にある入口は、人目を忍ぶのに好都合である反面、呼び込みしづらい欠点もある。


こちらも三階建て。後から貼り付けたらしい鉄蓋(?)の数々も、かなり年季が入っている。
基本的には和風だが、欄干や面格子、レンガなど、洋式の趣向も取り入れられている。

 
カフェー風の物件。正面から見ることのできないドアが想像をかき立てる。

 
かなり強引な改築をおこなったようだ。カーブの意匠はカフェー建築からの影響だろう。
裏手へ回ると、壁全体がトタンで覆われていた。もとは和風建築だったらしい。


路上に突き出た看板の様子がユーモラス。遠くからでも目につくようにという工夫だろう。
建物とは直接関係のないことだが、郵便ポストの突拍子もない位置もユーモラスだ。

 
和洋折衷の建物。奥深い入口を見ていたら、ふらふらと吸い込まれそうな気分になった。
二階の窓のデザインが凝っている。青い色ガラスは当時からの装いだろうか。


スナック風建築の一階部分。目を引くのはなんといっても、左側の極小サイズのドア。
まるで小人の入口だが、「勝手口」とプレートにある。どうやら腰をかがめて出入りするらしい。

三原 糸崎

2012年05月05日 10時00分00秒 | ◆中国
遊廓→赤線
昭和4年、業者数25、娼妓数49
昭和32年、業者数31、従業婦数61


「松浜」は、当時の地名であると同時に、遊里名でもあった。
消滅している地名だが、いまでも電柱や町内会館にその名を見ることができる。

 
平入りの和風建築。
外壁はトタンに覆われているものの、出格子や採光窓は昔のままのようだ。


上部の連続模様がおもしろい。模様の中の穴がひし形になっている。
前面がカフェー調であるのに対し、後方は和風。本来の意匠は和風のほうだろう。

 
二重の格子をあしらった一階と、総ガラス張りの二階。対照的な装いが印象的。
その造作を近くで確かめ、心の中で喝采した。木造建築の美しさが詰まっている。


竪板張りが特徴の長屋建築。色合いから推測すると、板は新調したものかもしれない。
一方、玄関の唐破風、花壇のレンガ、屋根瓦の一部は、旧来のまま残されている模様。

 
大店だったと思われる和風建築。右半分は崩壊が進み、危険な状態になっている。
崩れた建材の向こうには凝った窓がのぞき、華やかだった過去の断片が垣間見える。

 
[左]欄干が特徴的な物件。塀は残念だが、建物の維持にはこのほうがよいのだろう。
[右]戸袋は細やかな簓子下見板。左手に突き出た木材は、袖看板の跡か盗賊返しか。

広島 東

2012年05月05日 07時00分00秒 | ◆中国
遊廓→芸娼混在
昭和5年ごろ、業者数40、娼妓数250


かなり大きめな和洋折衷の物件。二階の腰に張りめぐらされた格子がおもしろい。
一階は最近リフォームがおこなわれたようす。まだまだ現役でいてくれそうだ。


料亭のようなたたずまい。塀に施された梅形の彫り抜きが印象的だ。
全体的に相当改修の手が入っているようで、どこまでが本来の姿なのかはっきりしない。

 
一直線の道路に沿って四つの入口が設けられている。
タイルの色分けから想像するに、色別に異なる店という扱いだったのかもしれない。

 
菱井桁や丸窓など、飾り窓が目を引く旅館。薄黄色の建物と黒い建物はつながっている。
心に強く残ったのは玄関先の円柱。ななめに貫く円柱の不安定感が強烈だった。

 
カフェー風の建物。奥まった入口、鉄製の格子など、気になる特徴が目につく。
しかし、築年数が浅めに見えなくもない。実際にそうなのか、リフォームの成果なのか。

 
年季を感じさせる和風建築。二階の欄干に透かし彫りが施されている。
丸窓の細工も見のがせない。これは山、川、雲の図案だろうか。


不思議な外観だ。不規則な凹凸のある壁面と小さい窓がそう見せているらしい。
奥行きがなく、非常に薄い構造も特徴。こうなると設計者の意図に関心が向く。

広島 西

2012年05月05日 05時30分00秒 | ◆中国
遊廓→芸娼混在
昭和5年ごろ、業者数55、娼妓数300


洋風の建物と和風の建物が並ぶ。間口に比べ、奥行きはどちらもかなりのもの。
洋風側の壁面に、謎の丸いへこみがある。昔は看板がはめ込まれていたのだろうか。

 
あちこち気になる造りをしている。おそらく元旅館だろう。
問題はそれ以前だが、はたして。

 
庇から入口までつながる出っ張りが特色。すべての窓が縦長というのも個性的だ。
カフェー建築と断定したいものの、そこまでの年代物件ではないようにも思える。


和洋折衷のこぢんまりとした一軒。入口の腰と床には、石材の装飾が施されている。

 
妓楼と料亭とカフェーが一体化したかのような豪快な建物。界隈一の大店だったろう。
ディテールにも注目。特に惹かれたのは、絵入りのすりガラスとしゃれた組子細工。

 
[左]屋根が張り出していないせいか、妻入り様式なのに、看板建築のような風情がある。
[右]照明用の穴がずらり。これだけの光源を要する商売だったということになる。


きれいに改修されていながら、それでもカフェーのような雰囲気のただようファサード。
横から見れば、相当古い物件であることは疑いない。増築されたような奥側も気になる。

笠岡 伏越

2012年05月04日 17時00分00秒 | ◆中国
遊廓→赤線
明治10年、遊廓指定
昭和5年ごろ、業者数16、娼妓数63
昭和11年、業者数12、娼妓数60

 
地福寺の入口のあたりから山陽本線を渡ると、町家風の建物が連なる通りへ出る。
遊里はこの先に広がっていたようだ。


二階の窓を広く取った洋風建築。カフェーのようにも見えるし、理容店のようにも見える。
心情的にはカフェーと考えたいところだが、あまりそういう建物には見えない。

 
妻入りと平入りが複合したタイプの木造建築。老朽化が進んでいる。
妓楼という感じの外観ではないものの、平入り側の奥深い入口は気になった。


正面の空き地には近年まで三階建てのカフェー建築があったが、火災に遭って消失。
書籍の表紙を飾るなど、非常に見映えのする建物だっただけに、残念でならない。

 
横に長い和風建築。かつては車庫の部分にも入口があったと思われる。
腰のタイルがうねっているように見えるが、タイルの模様が引き起こす目の錯覚らしい。

 
格子窓や欄干といった往年の趣向が残る中で、もっとも気に入ったのは袖壁の先。
当時のままと思われる盗賊返しがいまなおしっかり残っている。


相当手直しされている一階、それに対して昔の造作そのままの二階。対照的な眺めだ。
採光用らしい小窓にまで親子格子がしつらえられており、細部へのこだわりが光る。