院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

えひめ丸事件とPTSD

2011-09-11 12:50:03 | Weblog
 えひめ丸事件をご記憶だろうか?2001年、宇和島水産高校の漁業練習船が、急浮上した米海軍の潜水艦に衝突され沈没し、乗員35名中9名が死亡した事件である。その多くは練習生だった。

 このとき救かった練習生の一部がPTSDに罹ったとする精神科医たちがいた。その治療に2年を要したという。

 これって、おかしいとは思わないだろうか?私はおかしいと思った。

 水難事故で溺れそうになったことがある少年はたくさんいる。水難事故でなくても、交通事故などで死にそうな目に遭った少年も入れるとゴマンといるはずである。

 もし、えひめ丸事件で練習生がPTSDになったというなら、上記の災難に遭った少年たちもみなPTSDにならなければおかしい。

 当時からしきりにPTSDのことは言われていた。えひめ丸事件は米潜水艦との衝突という、極めてセンセーショナルな事件だった。そこで、一部の精神科医たちは事件とPTSDを短絡させ、あちこちで発言したのだろう。

 生き残った練習生は十分な労(ねぎら)いと同情を受けていたはずである。そこがベトナム帰還兵と決定的に違うところである。練習生が罹ったのはPTSDではなく、たんなる「驚愕反応」または「急性ストレス反応」に過ぎない。

 えひめ丸事件が世間の耳目を引いたことと、阪神大震災以来PTSDが何かと取り沙汰されているところへ一部の精神科医が悪乗りしたというのが真相だと私は考える。

 このたびの東日本大震災に当たって、えひめ丸事件の「担当医」が、またPTSDについて発言していた。彼は今でも、えひめ丸事件で練習生がPTSDに罹ったと信じ込んでいる。(週刊朝日5月20日号。)

 専門家がこれでは素人さんは何を信じてよいのか分からなくなるだろう。

http://www.youtube.com/watch?v=G5jAwLfw158