名塩御坊 教行寺

西宮市北部にある蓮如上人創建の寺 名塩御坊教行寺のブログ
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キュウリが嫌い

2018年03月29日 21時25分54秒 | 愚僧独言・「寺だより」掲載

 春のお彼岸に、寺だよりに掲載しました。

 キュウリが嫌いだ。記憶をたどれば4歳の時には既に嫌いだったから、かれこれ60年になる。好き嫌いの激しい子供だったが、長ずるに及んで、ほとんどの食べ物は克服した。それでもキュウリ嫌いだけは改まらなかった。
 親は好き嫌いを直そうとして、たとえわずかでも食べさせようとしたが、キュウリだけは効果がなかった。キュウリが出る日の学校給食は辛かった。食べ物の好き嫌いは恥ずべきことと教えられ、食の冥加を考えれば、我慢して食べるしかなかった。しかし、我慢も限界。還暦を迎えて、ついにキュウリ嫌いを宣言した。店で「キュウリ抜き」と言える幸せ。
 それにしても、どうしてキュウリが嫌いなのか。西瓜、メロンも好きではないから、キュウリ独特の瓜臭さが嫌いなのだ。これなら、柴漬けやピクルスを食べられるのも説明が付く。では、なぜ、瓜臭さが嫌いなのかと自問しても、答えはわからない。キュウリの香り成分は、スミレ葉アルデヒドとキュウリアルコールで、キュウリ特有の臭いはスミレ葉アルデヒドだと聞く。しかし、その臭いを嫌う人間がいることについては何の説明もない。結局私は、なぜ、キュウリが嫌いなのかという些細なことさえ知らずに死んでいくのだろう。まこと、人間とは切ない生き物である。