ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

サソリとカエルの話

2018年03月13日 | 日記

 ある時、川を渡りたがっていたサソリが泳ぎの得意なカエルに向こう岸まで渡してくれるよう頼んだ。

カエルは断った、

「だめだ。きみを背負ったところで僕はきみに刺されて死んでしまう」

サソリは言い返した、

「何て理屈の通らない言い草だ。きみが死んだら、僕まで溺れてしまうだろう」

そう言われてカエルは納得し、サソリを背負って川を渡り始めた。

ところが川の真ん中でカエルは背中に痛みを感じ、刺されたことを知った。

「理屈だって!」

サソリと共に沈みながら、カエルは叫んだ、

「理屈も何もないじゃないか!」

するとサソリは言った、

「分かってはいるけれどやめられない。それが僕の性(さが)なんだ」

 

  オーソン・ウエルズ監督・脚本・主演の映画「ミスター・アーカディン」(1955年)の中で、ウエルズ扮する謎の大富豪アーカディン氏が仮装舞踏会に集まった客たちに披露している、出典不明の小話。

非常に印象の強い内容なせいか、そのあと繰り返し映画やドラマに引用されており、元ネタは「イソップ物語」、あるいはインドの寓話だなどという方々もいるが、案外ウエルズの創作かも、と個人的には思っている。

「第三の男」(1949年)の「黒い点を数える」話や、下の「鳩時計」の話のように。 

 

「誰かが言っていただろ、イタリアではボルジア家の30年間の圧政下で戦火や恐怖、殺人、流血が横行したが、ミケランジェロやダ・ヴィンチのルネサンスが誕生した。ではスイスはといえば、友愛精神の下で500年にわたる民主主義と平和がなにを産み出した?―鳩時計だ!じゃあな、ホリー」

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