全米で人気を博したテレビドラマシリーズ「ザ・ホワイトハウス」(1999年~2006年)の中で、再選を果たした大統領へ就任演説の作成を依頼された新任のスピーチライターが言う。
「大統領、スピーチライターと雇い主の間にはパートナーシップが芽生えるんです。
好みがわかってくる。
どこで句読点を打つのが好きか、どの言葉が嫌いで、どの言葉が好きか、なぜ『手段』という言葉が嫌いで、『困惑』という言葉が好きか、まるでジャズ・ミュージシャンのように―」
「名前を思い出せないが、きみは私をデートに誘っているのか?(笑)」
「いいえ、いずれお誘いします。」
「わかった。」
「では失礼します。」
*
NPO法人なごやか理事長の執務室へ入って行くと、理事長が妙な表情を浮かべているので、どうしたのですか、と尋ねた。
彼は机の上にある二つの可愛らしい紙袋を指し示した。
「午前中にグループホームジョバンニ一関の運営推進会議に出席して、帰り際に管理者と事務主任から少し早いのですが、とバレンタインデーの義理チョコをもらったんだ。
それがね、こちらの(と手に取って見せて)お菓子は、昨日出張帰りに娘へお土産にと買ってきたものと同じシリーズだし、もう一つの方も、いつも期間限定の商品が出るたび買ってくるもので、心底驚いたというか、よくよく観察されているなあ、と(笑)」
「介護福祉には様子観察や気づきはなくてはならないものだけど、それが優れているあのホームの入居者様は幸せだなと思う。そして、やっぱり僕はあちらの10人目の利用者のようだ。」
私は後ろを向いて、笑いをこらえた。
実は私もすでにプレゼントを準備していた。
理事長が愛してやまない「星の王子様」のチョコレートだ。
虔十デイサービスのH管理者はビートルズのマグカップを買ったと言っていた。
理事長、あなたの好みはもはや私たち職員にすべて把握されていますよ!