新年会の会場に入り、自席に着こうとした僕は思わず吹き出してしまった。
隣りの副組合長席に、男装したざしき童子が端然と座っている。
「ちょっとやりすぎじゃないですか。」
澄ました横顔に頭の中で話しかけると、あなたのもてなしぶりを見に来たのよ、との答えだった。
次の公務へ向かうため途中退席する主賓を出口で見送った僕に、後ろから彼女は言った。
「思いは相手に確実に伝わっていたわね。あなたのスピーチのあとの祝辞で、今日は自分の誕生日で、井浦さんの今のお話は最高のプレゼントだ、と言ってたもの。でも、ふふふ、あちらの方が一枚上手だわ。」
「、、、そうですね。
僕はスピーチが相手にとって最高のプレゼントとなるよう心掛けています。
言葉を慎重に選びつつ、渾身の力を込めて書く。
そのせいか、ひょっとすると、少し性急で、少し窮屈かもしれないな、と思うこともあるけれど、それが自分の持ち味だと考えたい。
こうして贈る相手に恵まれると、本当に嬉しいですね。」