今夜の月は忙しく流れる雲に隠れがちだった。
運転しながら、これを叢雲(むらくも)というのだな、などと考えていると、雪まで降り始めた。
むらくもや 月の隈をば 払ふらん
晴行くたびに 照りまさるかな 源 俊頼(「金葉和歌集」)
叢雲が月のかげりを払い去っていく。
雲が晴れるたびに、さらに照り輝いていくようだ。
叢雲が、月の輝きを引き立たせている。雲間から時々月がのぞく。むらむらと集まっては散っていく雲にさえぎられるからこそ、晴れればまた一段と美しく月は輝く。隠された月、完全ではない美しさに面白さを見た昔のひとたちの美意識に感服する。