ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

サキノハカ

2022年02月04日 | 賢治先生

 「サキノハカといふ黒い花といっしょに」

   

   サキノハカといふ黒い花といっしょに

   革命がやがてやってくる

   ブルジョアジーでもプロレタリアートでも

   おほよそ卑怯な下等なやつらは

   みんなひとりで日向へ出た蕈(きのこ)のやうに

   潰れて流れるその日が来る

   やってしまへやってしまへ

   酒を呑みたいために尤らしい波瀾を起すやつも

   じぶんだけで面白いことをしつくして

   人生が砂っ原だなんていふにせ教師も

   いつでもきょろきょろひとと自分とくらべるやつらも

   そいつらみんなをびしゃびしゃに叩きつけて

   その中から卑怯な鬼どもを追ひ払へ

   それらをみんな魚や豚につかせてしまへ

   はがねを鍛へるやうに新らしい時代は新らしい人間を鍛へる

   紺いろした山地の稜をも砕け

   銀河をつかって発電所もつくれ

 

   

 上の「サキノハカといふ黒い花といっしょに」は昭和二年に宮沢賢治が書いた未発表詩だ。

サキノハカという植物は存在しない。

賢治先生の造語である。

その意味に関しては、「釈迦の墓」であったり、暴力という文字を分解したものだなどと諸説あるが、どうもしっくりこない。僕だけか。

花巻をハーナムキヤ、仙台をセンダードと素敵にもじった賢治先生のパターンではないように思える。

もう一つ、冒頭から激しい言葉が続いて行くが、最後の二行でぐんと上昇曲線を描く。

この曲線が急で、印象深い半面、このあとがもう少し続くのではないかと長く思っていた。

そこは誰も何も言っていない。これも僕だけか。

 

 

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