一週間ぶりに喫茶店アルファヴィルのオーナーが帰ってきた。
入院した隣県にいる友人を心配して、看病に出かけていたのだ。
お店は休業するとオーナーは言ったけれど、常連さんたちのことを考えて、私と女スパイルックのIさん、それにアルバイトのコでなんとか留守を守り切った。
NPO法人なごやか理事長も気が気でないのか、何度も顔を出している。
コックスーツに着替えたオーナーは手早くアップルパイを作りながら、私たちにお土産話をたくさん聞かせてくれた。
「あちらへ行って五日目の朝に、なんだか夢見が悪くてね、理事長さんに電話したの。こちらはもうだいぶ涼しくなりましたよ、と何でもないことをいつもの口調で話されるうちに気持ちがみるみる落ち着いてきた。ありがたかったな。そしたら急に、『オーナー、痩せたり太ったりしていませんか』と尋ねられて。それがおかしくって笑ったら、電話の向こうでも笑い声がして、ああ、早く帰りたいな、と思った。」
とりとめがないようでいて胸を暖くするエピソードに、私たちも顔を見合わせて吹き出してしまった。
今度夢見が悪かったら、私も理事長へ電話しようかな。