新しく購入した香蘭社の急須を机の上に置き、ためつすがめつ眺めていると、頭の中で声がした。
「素敵なお品物ね。」
きみか。
ざしき童子がいつの間にか目の前に立っていた。
うん、美しい白磁に上品な菊小紋。金彩も朱色も控え目。背が高めでスラリとして、きみを連想させるよ。
「あらあら、そんなにお褒めいただいて、どういう風の吹き回しなの?」
こないだね、センダード市の雑踏を歩いていたら、小さな女の子のつくも神の手を引いている年配の女性を見かけて、なんの精霊かな、って思ってね。
「ーひょっとして、私をつくも神とごっちゃにしていない?あれは古くなった道具やらに魂が宿ったものでしょ、失礼しちゃうわ。」
これは申し訳なかった、と平身低頭あやまる羽目になってしまったのだが、そういうざしき童子だって、南北朝時代から生きてるわけだから、相当なものだと思けどな。