NPO法人なごやか理事長の執務室に入って行くと、理事長は背中を丸めて机の上で手を動かしていた。机の両袖には二匹のアマビエ—アマンダとビエラが立ち、その手元に頭を寄せている。
何をされているのですか?と尋ねると、理事長は顔を上げたのだが、額には大粒の汗が浮かんでいた。
「この二人がね、被災地支援を続けているあるじの元に里帰りするというので、お土産がわりにミニチュア千両箱を持たせると話したところが、やれ作れ早く作れ作って見せろと大騒ぎされて、こんな状況なんだ。でも、こうして両方から顔を寄せられると、これがなかなかの圧で、手元が狂ってばかりで進まなくて。」
珍しく泣き言を言っている。
私は八つある千両箱の一つを手のひらに載せた。
とっても可愛らしいですね、と口に出そうとして、言葉が喉にからまった、ジェラシーで。