また書斎仕舞いの話である。
ビデオとレコードは相当整理したが、蔵書の処分は全く手つかずだ。
そこへまた困惑するニュースが飛び込んできた。
本邦未訳だったウィリアム・フォークナーの選集「ポータブル・フォークナー」(1946年)が出版されるという。なぜ今なのだ?
よりによって、学生時代に古書店を巡り歩いてちまちま買い揃えた「フォークナー全集」(全27巻)から処分しようか、と考えていたこのタイミングで。
「ポータブル・フォークナー」は彼の膨大な作品から架空の地ミシシッピー州ヨクナパトーファを巡る短編等を抽出した高名な選集で、収録作は作品内の年代順に並べられ、1800年代から1960年代まで150年以上に渡る一つの長大な物語(サーガ)としても読めるのだと、これまでさまざまなフォークナー解説文で言及されていた。実際、洋書店で原書を手にとっては、自分程度の語学力では難しいなあ、と棚に戻したことも何度かある。
フォークナーと映画というと、脚本担当としてハワード・ホークス監督とタッグを組んだ「脱出」(1944年)、「三つ数えろ」(1946年)が有名だが、ダグラス・サーク監督が長編小説「標識塔」を白黒で映画化した「翼に賭ける命」(1957年)も、一度観たら忘れられない作品だ。
うらぶれたスタント飛行ショー一座と新聞記者の、短くも濃厚な数日間の物語。
危険な航空スタントとレースを縦糸に、パイロットとメカニック、新聞記者と、パイロットの妻との愛憎の四角関係を横糸にして編み上げた、一種異様なメロドラマだった。
左からパイロット(ロバート・スタック)、メカニック(ジャック・カーソン)、パイロットの妻(ドロシー・マローン)、新聞記者(ロック・ハドソン)。手前はパイロットの妻の子(パイロットとの子なのか、メカニックのとの子なのか、と周囲にからかわれているという設定)。