日本でも放映された「バットマン」TVシリーズ(1966年)に、リドラー(日本名ナゾラ―)という、なぞなぞを次々繰り出してバットマンを困惑させる脱力系悪役キャラクターがいた。
それが1979年冬、高校生だった僕が週末の深夜、海外の音楽ビデオを放映する当時としては貴重な番組を一人で観ていると、ヘンテコな服を着た男性シンガーが映し出された。
緑色のスーツへ明らかにフェルトペンで手書きした?マーク。おいおい、あんたナゾラーか、と画面にツッコミを入れたのだが、その彼の歌うポップチューンにすっかり心奪われてしまった。苦労人ニック・ロウのヒット・シングル「恋するふたり」だった。
以来、彼の音楽との付き合いは40年に及んでいる。初来日公演も観た。ニック・ロウを知ったことは、僕の人生の宝物だ。
長くなるので彼の生涯については書かないが、カントリーの大御所ジョニー・キャッシュの苦い伝記映画「ウォーク・ザ・ライン」が第一章だとすると、彼の義理の娘と結婚したニック・ロウの波乱の人生は、そのエンディングから始まる続編にあたるのだ。