福法組(K市福祉施設等運営法人組合)の中で通所介護、訪問介護、それに訪問入浴の各事業所が所属する居宅サービス部会の会議が開かれた。
部会長のNPO法人なごやか理事長が議長を務め、私は司会と書記役だったのだが、上司の人さばきの見事さに改めて舌を巻いた。
というのも、今日は非常に難しい案件が議題で、事前に行なったアンケートでも賛否が真っ二つに割れ、拮抗していた。
実際、会議が始まるまでの会場は、25名の参加者が体から発する殺気に近いものが充満しているように思えた。
それに動じず理事長はサクサクと進めて行く。
賛成・反対の管理者へ交互に意見を求め、討論は始めない。
発言者と目を合わせ、大きな相槌を打ち、相手が話し終えると謝辞を述べてから、正反対の意見の管理者を指名する。
それが三往復したところで、オブザーバーとして出席している県・市の担当者への質問はないかと尋ね、また交互の指名を三往復繰り返した。
興味深いことに、何名話したころからか、発言者が理事長へ訴えるような口調と態度に変化していた。
その彼は親身に耳を傾け、よくわかります、と声を掛けるものの、それ以上の私見は決して述べない。
そうこうしているうちに自然と双方の意見が出揃い、討論なしで収束して行くように私には感じられた。
議長はそのタイミングを見計らっていたように会議を切り上げた。
座がダレる暇などなかった。
「皆さんのご意見は一通りお聞きしました。次は日程未定ですが、反対の方のみ集まって、今日いただいた賛成の方々のご意見を参考にしながら、どこが不安なのか、難しいのか、それを智恵と工夫で乗り越えられないか、話し合う機会をいただきたいと思います。」
みな一様に納得した表情で帰って行った。
理事長へ素直に賛辞を述べると、彼は笑顔を浮かべた。
「ウチの月例管理者会議と同じ要領だよ。
丁寧に接すれば、しっかり聞いてくれていると思えば、他法人の職員でも、必ず伝わる。
僕自身、今日はとっても面白かった。」