ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。

大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。 また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。

かしわ手

2017年10月20日 | 珠玉

 施設の地元の市議の要請で、選挙の出陣式に出かけた。
席に着き、ふと正面の祭壇を見やると、のし紙に「櫻森神社」と記された御神酒が置かれている。
同行してくれたI管理者に尋ねたところ、この選挙事務所から車で5分ほどだという。
式のあと車に乗ると、ご案内しましょうか、と再度声を掛けられた。
 ざっと百段はある不揃いの古い石段をふうふう言いながら登り切り、小さな社殿の前まで来るうちに、迷いは消えていた。
震災後、僕は神社仏閣、神棚やお墓に手を合わせることを一切やめた。
ささくれ立った気持ちから、頑なに。
けれども今日は、「木が4本」という珍しい名前にひかれてやってきて、この誠実で有能な管理者のために手を合わせ、頭を垂れることに決めた。

どうぞこのお嬢さんもきっとしあわせになりますように。

ひと気のない境内で打ったかしわ手の音はよく響いた。
(それはそうだ、かつては職業の一環として、何百回と打ってきたのだから。)

 神社の歴史を記した看板に目を通して驚いた。
『この地名の由来は、聖武天皇の時代の726年に奥玉と摺沢境の鶴ケ峰(大東町摺沢字羽根折沢)より玉(水晶)を採掘し、坂本宿禰という住人が、多賀城の国司大野東人へ献上したと言われ、その後、この玉を地中に埋めてその上に祠を建て、奥玉神社(現櫻森神社) となった。興玉が転訛し奥玉になったと伝えられている。』

(つい昨日、来客と美しい珠について深く語り合ったばかりなのが、この足元にもそんな玉が埋められているというのか。)
僕はがぜん慎重な足取りになって境内を出た。
それがおかしい、と管理者は明るい笑い声をあげた。

コメント
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