ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。

大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。 また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。

地上より永遠に

2016年11月04日 | ハリウッド

「地上より永遠に(ここよりとわに)」(1953年)は、真珠湾攻撃直前のハワイの基地を舞台に、軍隊生活の過酷な現実と空虚な人間関係を鋭く描き出して一大センセーションを巻き起こした、860ページに及ぶ同名ベストセラー小説が原作である(邦訳が角川文庫から4分冊で出版されていた)。
 ただし、映画化にあたって軍の協力を得るため脚本はペンタゴンの検閲を受けねばならず、作者ジェームス・ジョーンズの軍隊経験に基づいた赤裸々な告発はかなりトーン・ダウンしている。またストーリーも5人の主要なキャラクター-頑固なラッパ手プルーイット(モンゴメリー・クリフト)、彼の恋人でクラブのホステス(ドナ・リード)、身持ちの悪い中隊長夫人(デボラ・カー)、彼女と愛し合う有能なウォーデン軍曹(バート・ランカスター)、プルーイットの親友のいなせなイタ公マジオ(フランク・シナトラ)に焦点を合わせ、整頓されている。
 
ハワイのスコフィールド基地へプルーイットが転属してきた。有能なボクサーでもあった彼はスパーリング中に誤って相手を失明させてしまって以来二度とボクシングはやるまいと固く心に誓っていたのだが、連隊内のボクシング大会でチーム優勝することで昇進を計ろうとする中隊長はなんとしてもプルーを出場させようと士官たちに命令し“治療”と呼ばれるあの手この手の迫害を加える。黙って耐えるプルー。ウォーデンとマジオはなにかとかばうが、プルーの疲労の色は増して行く。恋人はなぜそうまでして軍にいるの、と難詰する。「軍隊が好きなんだ。」「軍隊からは好かれていないみたいよ。」
 酔って軍規を破り営倉へ入れられたマジオは脱走を企てて失敗、事故死してしまう。プルーはサディストの営倉主任(アーネスト・ボーグナイン!)へ決闘を挑み、かたきを討つが自らも重傷を負い、恋人宅へかくまわれる。そんなとき突然、運命の12月8日(現地時間7日)がやってきた-。

 注目の53年度アカデミー賞レースはクリフトとランカスターの二人が主演男優部門にそろってノミネートされたが、その間隙を縫って「第十七捕虜収容所」のウイリアム・ホールデンが受賞、共倒れの格好となる。共演のシナトラ(助演男優賞)、ドナ・リード(助演女優賞)、監督フレッド・ジネマンが受賞するなか、3度目のノミネートでもオスカーを逃したクリフトはひどいショックを受け、酒びたりの生活に堕して行く。
 一方、ボビー・ソクサー[女学生]を中心とした40年代の絶大な人気が失速、エージェントやレコード会社とトラブルを起こしてまさに断崖絶壁に立たされていた歌手シナトラは(ギャラのディスカウントやプロデューサーへの電報攻勢など)必死の売り込みで得たこの役の成功により、演技派俳優として新しいキャリアの第一歩を踏み出した。
 シナトラとクリフトは撮影終了後もニューヨークやハリウッドで会っていたが、あるときシナトラは自分が催したパーテイで(ホモセクシャルだった)クリフトが男性客の一人に言い寄っているのを目撃する。シナトラはガードマンに命じてクリフトをつまみ出させ、二人の友情は終った。



クリフト、ドナ・リード、シナトラ



リードとシナトラ、アカデミー賞授賞式で



歩く暴力、あるいは遅咲きの名優、ボーグナイン

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