長生き日記

長生きを強く目指すのでなく良い加減に楽しむ日記

55  『ねこじゃらしが揺れる』

2015-12-19 22:32:10 | 日記
 かりんの仲間の三木郁さんの第二歌集をいただいた。まだお会いしたことはないが、同年配のようだ(短歌年鑑で知る)。歌材が豊富で上手な作風である。辛いことも冷静な詩的表現に移行させる心、技を持っておられるのだろう。明日の忘年会には来られるのだろうか。フェイスブック・ブログでかりんの鹿取さんも紹介していたが、僕の取り上げたのと見事にずれていたのでちょっと遅れて悔しいがださせていただく。
悠然と伏すライオンを襲ひおりZOOのさくらはたえまなく散り
父母眠るおのころ島をいだく海こをろこをろと揺れつつ光る
記憶なき母の骨抱き七十歳(ななじふ)の男が仰ぐふるさとの空
ハイエナを前にすくめるヌーとなり車は止る警官の前
白胡瓜あたまの少し曲がりゐて精霊馬となるべく育つ
いざなはれときめきて見つ月の世を毬の裂け目に光る栗の実
家の鍵かけ忘れたる君を待つあかのまんまの揺れゐるそばで
高楼をひつかけさうな低さにて飛行船浮く京の街空
願ひごとする人される流れ星 終(つひ)は炎に包まれて果つ
皮膚をさす風のわづかにぬるみゐてヘレン・ケラーを思ふ朝明け
海亀のやうに楽器のケース負ひ雑踏泳ぐ子らの集団
きつとあれは蝮よと騒ぐ声がする言葉に毒を持つていさうな
ふり返ればアイパッドの灯消えてをり飼い犬が死んだあの時のやう
来春に襟替すると首すくめ舞妓は衣装の重きを訴ふ
水脈を地震(なゐ)にはづされ枯れ果てた井戸にちりゆく庭のさくらばな
押入に四十年をひそみゐし長靴撫でれば愛馬のにほひ




54   風

2015-12-19 00:10:31 | 日記
 冬の青空に誘われて、所用のあった新宿で新宿御苑まで足を伸ばした。入り口の銀杏が風に舞ってきれいだったので動画をとろうとしたら風がやんでしまった。シニア優遇がないのも気にせず200円を払って園内に。それほど混んではいないが、外国人が多い雰囲気で、東洋系はどこの国の人たちかわからないが(話が聞こえないと)、自撮り棒で取り合っている若者は日本人でなさそう。欧米系も多い。周辺回廊から西洋庭園のほうに回る。そう、ここは手入れされたプラタナスの並木があるんだったっけ。で、また思い出が。30代の中頃だったか、東横線の都立大学駅近くの居酒屋だ。僕はなりたての助手でポスドクの男と飲んでいた。話題はなんだったっけ。彼が発見しかかっていたケラチウム(渦鞭毛藻)の筋肉的構造のことだったか、研究室の大将だった助教授が転出することになったので後の体制のことだったか。しばらくすると、近くにいた年配男性が「君たち、北山修、知ってるだろう?、北山はウチのクリニックに勤めてもらっているのだが、彼に比べると君たちは地味だねえ」なんでそんなことを言われなければならないかわからなかったが適当に返事をしたのではなかったかな。北山修を見たことはなかったが、ああやはり歌手っぽい人たちは派手なんだなあと印象も持った。
 それで今日帰ってから、北山修を検索したら、派手かどうかは分からないが、精神科医の本職も歌世界も活躍している様子が分かった。妻の年上の友人は北山の追っかけをしていたということだった。硬軟活躍できる人なのだろう。そのあといくつかの樹種をながめてそれぞれの思いを浮かばせながら門を出た。また風が吹き出していた。