絵本の古本屋 【えほんやるすばんばんするかいしゃ】

営業時間:14時~20時
定休日:火曜、水曜
電話/FAX:03-5378-2204

2冊目| 「いちにのさん」 きくちちき / 著

2020-10-31 | ●思うこと




2冊目 『いちにのさん』
著者|きくちちき
装幀・デザイン|サイトヲヒデユキ
発行日|2014年9月
発行所|えほんやるすばんばんするかいしゃ

※特装版・・・限定300部 / 手刷り木版画付き / サイン&ナンバー入り

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お店の10周年記念でちきさんに制作をお願いした絵本。
実際は、11周年も過ぎて完成しました。
通常版と特装版の2種類作りました。

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2013年7月。
お店は10周年を迎えました。
何周年だから何かしようとか、普段あんまり思わないのですが
10周年というのはなんとなくキリもいいし、
せっかくなので何かやってみようと思ったんじゃなかったかな。たしか。
たぶんこういうことは普通、10周年記念の日に合わせて前々から準備するものだと思うんですが
うちの場合は、その日が過ぎてから考え始めたので 日程の感覚は結構ぐだぐだでした。
出口さんにお願いしたり、他にもいろいろ企画を考えてたりしましたが
結局、実現したのは きくちちきさん作の「いちにのさん」のみ。
10周年ということで、1~10の数字の絵本を作って頂きました。
と言っても、完成したのは2014年9月だったので、11周年も過ぎたあとでした。

ところで、話が少し前後しますが
前作「つながる」には、ちきさんによる手彩色が一カ所、そしてサインがあります。
絵を描くのも構成もデザインも入稿も全部ちきさん。
つまり、印刷・製本以外はちきさんによるもの。

そうです。
「つながる」を作ったあと、ぼくは「ちきさん一人で全部できちゃう問題」に直面したのです。
これだったら、自分は要らないかも。版元ってなんだ?出版てなんだ?
反省という感じではないけれど、甘えてばかりじゃいけないな、と思えた出来事です。
なので今度やるときは、ちきさん一人ではできないことをやってみようと決心したのでした。
細かいことは端折りますが、本作りが動き出したのは、たしか2013年10月頃だったはず。
まずは自分たちに何が出来るのかいろいろ考えました。

10周年ということもあって、これまでのことを少し振り返ってみると
さんざんお世話になった古本たちのことが頭にぼんやりと浮かびました。
ちょっと大袈裟に言うと、たくさんの古本に教わったことを
これから作る本に反映させられないかという気持ちがあったのだと思います。
特に印刷については前々から感じていたことがあり、それを機会があれば試してみたいと思っていました。
イメージとしては、印刷で着地する感覚を忘れない本。
そんな本を作ってみたい。
(この感覚についてはまたいつか書けたら書いてみようと思います)

ちきさんには、1~10までの数字の絵本ということと
印刷方法のことをお伝えして制作に取り掛かって頂いてました。

と言っても、自分たちは何をしていいのかわからないので
まずは、好きな絵本の好きな印刷を探すところから始めてみようということに。
いいなと思う印刷があれば、奥付をチェックして気になる印刷所をリストアップしていく作業。
その中でもここは良さそう、というのを数社に絞りました。
すぐにアポイントを取り、純子さんと二人で話を聞きに行ってみました。
結局、伺ったのは2、3社くらいだったかな。
しっかり話を聞いて下さる印刷所もあり、それが妙に嬉しくってやりとりするようになりました。
何だかよくわからないけど、自分たちで何かやってる感じがして異常に楽しい。
ただ、そんな能天気なことが続くわけもなく、やりとりをしていく中で重大なことに気付き始めます。
自分たちの圧倒的な経験不足と知識不足。
なんか違うと思っても上手く言葉にできないのです。
何も提案ができないし、イメージはあってもそれを伝えられない。
いや、それよりなにより一番の問題は もしかしたら、うまく自分のイメージを伝えられて
その通りになったとしても”つまらない”ものになるんじゃないか、ということかもしれない。
それなのに、ああしたいこうしたい、を伝える。
何を言ってるんだ、何をしているんだ、自分は。
印刷会社の方々は、それを実現するべく対応してくれるのだけど
それが忠実に具現化されたところで、この本はたぶんなんか違う。
足りないのは、知識や経験なんかじゃない。
創造力なのかもしれない。
どうしよう。

いや、違う。
たぶん、どうもしなくていい。しないほうがいい。
例え、ここから何か急に創造力が増したとしても結局は自分の世界。
想像を超えられない。
ならば、自分で解決することを諦めればいいのかもしれない。

なるほど。
ひとり、勝手に腑に落ちる。
そうか、だからデザイナーという仕事があるのか。
そう思うと急に清々しい気持ちになり、デザインをお願いすることを考えました。
ありがたいことに「誰がいいだろう?」という迷いは一切ありませんでした。
少し前からイベントなどでお世話になっていた
デザイナーのサイトヲヒデユキさんのことがすぐに頭をよぎる。
サイトヲさんは、同じ高円寺で書肆サイコロというお店もやっていて
そこにはサイトヲさんが装幀・デザインを手がけて自身で出版している本たちが並んでいました。
そのどの本も美しく、お店に行く度、毎度毎度感動してました。
こんなお店とこんな人が近所にいるなんて恵まれすぎじゃないか。

すぐにお願いをして、サイトヲさんは快く引き受けてくれました。
そのお返事が嬉しかったのは言うまでもありませんが
一緒に本が作れるとういうことを想像するとわくわくしてしょうがありませんでした。
うん、たぶんこれでいい。これが楽しい。

サイトヲさんは楽しく案を出してくれました。
自分では思いもつかないことがどんどん出てくる。
イメージは伝えてるけど、いい意味でイメージ通りじゃない。
自分の言ってることをそのままやってもらいたいわけじゃないから、すごく嬉しい。楽しい。
言ってることと感じてることが矛盾だらけ。でも、しっくりくる。
この感じ、この感じ。

結局、やりとりしていた印刷所ではなく(こちらの力不足で申し訳なかった)
デザイナーのサイトヲさんの付き合いのある印刷所にお願いすることになりました。
そうすることで意思疎通が格段にスムーズになったのも興味深かった。

本はどんどん完成に近づいていった。


そんなとき、一報が入る。
7月の半ばくらいだったかな。
当時、うちの店は2階のみで1階は古着屋さんでした。
その古着屋さんが、お店を閉めるという。
うちの店はそのお店があるから、やってこれたようなところがあるので
びっくりだったし、なによりショックでした。
でも、意志は固いようで、こちらも腹を決める。
一緒に借りていた物件だったので、自動的にうちの店がその空間を借りることになりました。
わりと急な話で、古着屋さんが空っぽになるのが8月半ば。
本が完成するのが9月半ばの予定。9月から家賃が発生するらしい。
なにもしなければ、家賃が発生するだけ。
何をやるか。
2階のような本だらけ空間を拡張するつもりはありませんでした。
正直なところ、本の量を増やして数を売っていくことに限界を感じていた時期でもありました。
反射的に「つながる」の展示をやったときのことが頭をよぎる。
普段、古本を3000冊以上常設しているのに、空っぽの空間のときの方が本が売れた、
という事実が頭のどこかで引っかかっていたのかもしれません。
いま思えば、示唆的な出来事だったのだと思います。
とにかく、迷っている時間はない。
ギャラリーというよりも、展示をして本を売るという感覚で、本屋の延長線上にある空間をイメージしました。
2階が待ちの姿勢で本を売る場所だとしたら、1階は能動的な本の売り方にしていこうと思いました。
1階も2階も本屋だけど売り方が違う場所。
これならしっくりくる。うん。そうしよう、そうしよう。

1階が出来るまでのことは、当時のブログを見て頂けたら。
https://blog.goo.ne.jp/nabusuraynohe/e/8c3db571e0226044a8c09aa6ed8f3fd9

「いちにのさん」の原画は特殊なので展示するつもりはありませんでした。
(版画のような手法の原画で、色ごとに絵がバラバラになってて展示しにくい)
1階が出来たのはいいけど、展示するものがない。
と思っていたらほぼ同じ時期に、
思い入れ深い「ちきばんにゃー」が学研さんから刊行されることになり
その原画を飾らせてもらったりして、めでたく壁は埋まりました。

「いちにのさん」は、2階で地道に売っていくつもりだったのですが
ひょんなことから1階スペースが出来たため、賑やかな感じで販売することになりました。
いろんなあれこれがころころと転がっていき、ひとつにおさまった感覚がありました。
世の中、なにが起こるかわかりません。ほんとに不思議なものです。
10周年記念で作り始めた本は、11周年も過ぎてなんでもない日にぼんやり完成する予定でしたが
そのなんでもない日になるはずの9月11日は、とても特別な始まりの日になりました。

あ、ここまで書いて本が完成した時のこと書いてませんでした。
過去に何度か書いたこともあるし、まあ、よしとします。


あと、ここ数年、ちきさんとサイトヲさんがコンビのように
一緒に本を作っているのはなんだかうれしいです。



< 「いちにのさん」及び展覧会で試した印刷方法 >
・シルクスクリーン|本体表紙
・活版印刷|特装版外函
・手刷り木版画|特装版奥付
・オフセット印刷(特色5色)|本文4色、見返し1色
・オフセット印刷(プロセス4色) |販売用ポストカード
・リソグラフ印刷|販売用ポストカード
・オンデマンド印刷|展覧会DM
・箔押し|本体背表紙 ※正確には、印刷ではなく加工です。

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◎「いちにのさん」通常版
https://rusuban.ocnk.net/product/7506

◎「いちにのさん」特装版
https://rusuban.ocnk.net/product/7504





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1冊目| 「つながる」 きくちちき / 著

2020-10-31 | ●思うこと


1冊目 『つながる』
 
著者|きくちちき
デザイン|きくちちき
発行日|2013年3月
発行所|えほんやるすばんばんするかいしゃ

限定500部 / 一ヶ所手彩色 / サイン&ナンバー入り

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ようやく一冊目に辿り着きました。
この本は初めてうちの店から出版した本です。
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2011年「ちきばんにゃー」の展示のとき、展示方法にすっかり反省してしまって
もう二度とお店で展示はやらないでおこう、と思っていました。

ところが、2012年の末。
ひょんなことから店内を改装する計画が浮上し、お店の中を一旦空っぽにすることになりました。
自分で計画しておきながら「店内を空っぽにするのめんどくさー」なんて一瞬思ったりもしたけど
よくよく考えてみたら、これはいい機会かも、とすぐに気分を入れ替えました。
空っぽになった空間で ちきさんの展示がもう一度できるかもしれない。
というわけでさっそく、ちきさんに連絡。
快くOKを頂き、2度目の展覧会が決まりました。
(この頃は、ほんとにあっさりしてたなぁ)
「ちきばんにゃー」のときの反省を活かして、リベンジしたいという気持ちもやっぱりありました。

一年前の2012年1月、ちきさんは「しろねこくろねこ」(学研)で商業出版デビューしていて
うちで展示する2013年の3月には、計3冊の商業絵本が出版されてました。
聞くと、ほかの出版社からも依頼があって このあともいろいろ出るらしい。
その一連の出来事や流れが、なんだかとても嬉しい。

ただ、商業の絵本が出るようになってからは手製本は一冊も作っていない。
展覧会をやるなら、本があるといいな、となんとなく思っていたけど
どうやら、そんな悠長なことは言ってられなさそうだ。
手製本が無理なら、どうする?
うちで手製本をやってみるか。いやいや、作れるわけがない。
ということは、うちが版元になって本を出すか。
うーん、、、。時間もないし、ほかにいい方法も思い浮かばないし
どうやら、そうでもしないと本は作れなさそう。
でも、版元ってなんだ?出版ってなんだ?よくわからない。

よくわからないけど、印刷・製本は入稿さえすればなんとかなるんじゃないか。
手製本は無理だけど、少しでも手作業を入れれば手作りに近づくかもしれない。
そうだ、そうしよう。

それじゃあ、内容はどうしよう。
おそらく、これから商業出版の仕事はさらに増えていくだろう。
商業で出来ることをうちでやっても仕方がないし、
そういうことは商業出版の人たちに任せるのが一番いい。
商業ではやりにくいものをやれたらいいなと思っていろいろ考えてみるものの、いい案は思い浮かばない。
でもあるとき、個展のときにしか観られない描き下ろし絵(絵本の原画ではない絵)があるのを思い出しました。
絵本の絵とはまた違う魅力を放っていて、その存在は以前から気になってました。
本のために描かれた絵ではないものを集めた作品集的なものはどうだろう。
いまいちかな、、、。ま、考えるより、聞いてみよう。

ぼく「ちきさん、個展のときに展示した過去作品(売り絵)って手元にあったりデータって残ってたりしますか?」
ぼく「もしあれば、それらを集めた絵だけの本(画集・作品集のようなもの)を作れないかと思いまして」
ちき「ほとんどないですねぇ。それだったら新しく描いた方がいいので描きますよ」
ぼく「え、ほんとですか」
忙しいのに、描いてもらうというのが申し訳ないなと思いつつも
こちらにいい考えもないので、甘える形でお願いをしました。
最初は申し訳なさの方が大きかったけれど、
待っていると無責任なもので、だんだんと楽しみになってきました。

ところが数日後、ちきさんから電話がかかってきて
ちき「あのー、荒木さん。すみません。そういえば、ぼく お話がないと絵が描けないんでした」
ぼく「え、どういうことですか?」
ちき「頭の中にぼんやりとお話が浮かんで、それを絵にするんです」

一瞬、びっくりして戸惑いましたが、そのことがじわじわと嬉しさに変っていきました。
この人は、画家ではなく、素で絵本を描いちゃう人なのかもしれない。
そうか、そんな人もいるのか。なんておもしろい。
ぼくにとってこの出来事は、後々の本作りに影響を与えるものすごく大きな発見となりました。
(ものすごく見当違いなのかもしれないけれど)

ちき「なので、すこしお話があってもいいですか?」
ぼく「あ、はい。もちろんです。ぜひ、よろしくお願いします」

今回も内容については何も話し合いはしていません。
結局、デザインもちきさん自身にやって頂きました。
「ちきばんにゃー」のときと同じで、完成まで待つだけの時間でした。
これでいいのかよくわからず、そのときはあまり深く考えないようにしていたと思います。

展覧会の数日前、完成したのが「つながる」という作品でした。
その作品には、言葉はなく、色は白と黒だけ。
白黒の絵の羅列の中にぼんやりと物語が漂う。
「ああ、そういうことかあ」
ちきさん、すごいな。やさしいなあ。
こちらの言ったことをいろいろ汲み取ってくれていました。
さみしいお話だけど、なぜだか嬉しい気持ちになりました。
ちきさんによる手彩色を一ヶ所、そしてサインと番号も入れて頂きました。
タイトル部分は半透明の帯になっていて、それを一つずつ巻いて本は完成しました。

無理やり結び付けるような感じに聞こえるかもしれないですけど、
この本からいろんなことが「つながる」ことになるなんて、このときは思ってもみませんでした。
この本に教わったことがいっぱいあって、自分にとっていまもずっと大事な本です。

そんなわけで、これが当店発行の本の記念すべき第一号となりました。
ただ当時、「これから、どんどん本を作っていくぞ!」という意気込みはなく
ひとまずの手段として版元という立場を取っただけでした。
これはこれ。という考え方だったと思います。
だから、限定500部にしたんじゃなかったかな。
いま、奥付を見ると、じんわりとその様子がうかがえる。  

あと、商売的なことを言うと、3000冊以上の古本がぎゅうぎゅうしていた普段の店内より
空っぽの店内の方が、本が全然ないのに(ちきさんの本が数種類あるだけ)
本がたくさん売れたことにびっくりしました。
この体験と発見も自分にとってすごく大きな出来事でした。

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◎ 『つながる』 きくちちき / 著 ※現在、重版未定
https://rusuban.ocnk.net/product/5739




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営業日と展覧会の会期延長のお知らせ|11/3(火)まで営業します。

2020-10-27 | ●展示のお知らせ


今日でおしまいの予定でしたが、どうもやり残したことがあるような気がするので
一週間延長して11/3(火)まで営業と展覧会をやることにします。

作品をお預かりしている皆さまのご協力に感謝いたします。


残り一週間、本のことも少し掘り下げられたら、と思います。
今回、何度もお越し頂いている方もたくさんいてすごく嬉しいです。
初めての方はもちろん、一度いらした方もぜひぜひお気軽に遊びにいらして下さいね。
目的なく、店内でぐだーっとしてくれるだけでもうれしいです。



< 参加作家 >
・きくちちき ※原画の販売はありません
・近藤晃美
・はらぺこめがね
・中村まふね
・出口かずみ
・花松あゆみ
・まつむらまいこ
・杉本さなえ ※原画の販売はありません
(敬称略・刊行順)

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会期も残りわずかですが、これまで出版した15冊のことをブログに一冊ずつ書いていくつもりです。
興味のある方は見てみてください。

・ブログ|https://blog.goo.ne.jp/nabusuraynohe
・15冊の展覧会(仮)|https://blog.goo.ne.jp/portal/tags/15冊の展覧会(仮)
(少しずつ更新してます)

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会期|10/10(土)~10/27(火) → 11/3(火)まで延長になりました
休み|水曜(10/14、10/21、10/28)
時間|14:00~20:00
会場|えほんやるすばんばんするかいしゃ
住所|東京都杉並区高円寺南3-44-18
(JR高円寺駅6分|メトロ新高円寺駅12分)

※この期間が終わったら、お店はまたちょっとだけお休みに入ります。


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< 出版リスト >

2013 「つながる」 きくちちき
2014 「いちにのさん」 きくちちき 
2015 「そのたの束」 近藤晃美
        「レンガおとこ」 はらぺこめがね
        「とおのちいさな とびらのむこう」 中村まふね
2016 「どうぶつのねいろ」 きくちちき
        「円い草」 近藤晃美  /  「聴こえてきたこと」いろんなためいき(CD)
        「TOOMIN VALLEY」 「ABCかるた」出口かずみ
2017 「ロシアの装丁と装画の世界」
        「VOYAGE」 花松あゆみ
2018 「とらこのおくりもの」 きくちちき
        「どうぶつせけんばなし」 出口かずみ
        「わたしはしらない」 まつむらまいこ
        「Close Your Ears」 杉本さなえ
2019 「小八」 出口かずみ




0冊目|「ちきばんにゃー」きくちちき著 2011年

2020-10-25 | ●思うこと



「ちきばんにゃー」
きくちちき / 著
2011年発行 / 私家版

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この本は、うちの出版物じゃないので書くかどうかものすごく迷いましたが
書かないと気持ちの辻褄が合わない部分があるのでやっぱり書いて残しておこうと思います。
というわけで、これはうちの出版ではなく、ちきさんによる手製本作品。
0冊目、ということにしておきます。

この本のことを書こう!と決めてから何度も書き直してましたが
結局、出だしに関しては当時自分が書いたブログが一番しっくり来たのでそれをコピペしておきます。

==== 2011年9月のブログから引用 ====

ちきさんと初めてお会いしたのは、2010年のはじめ。
お店に来てくれたのが最初だったと思います。
探している絵本があったようで、ずいぶんお話ししたような気がします。
その際に絵本を描いているということも知りました。
ただ、実際に絵と絵本を観たのは、それから数ヵ月後に行われた個展のときです。
いやあ、なんというか、とても嬉しかったです。
うまく表現できないのが非常にもどかしいのですが、
斬新とか衝撃とかそういう尖がった攻撃的な刺激ではなく
丸く澄んだ刺激というのでしょうか、刺激的な刺激じゃない感じの強い刺激を受けました。
それ以来会うたびに「なんかやりましょうよ」と言っていたのが
今回ようやくかたちになりそう、というわけなのです。

==== ここまで ====

当時うちのお店は、2階のみでギャラリースペースはなく、絵本のみを扱う古本屋でした。
もちろん、絵の展示なんてやったこともありませんでしたし、おまけに狭い。3坪しかありません。
本もぎゅうぎゅうに詰まっているし、展示なんてできる場所はないのに
「なんかやりましょう」なんて言ってたわけです。
たぶん当時は、とにかく気持ちを伝えたかったんだと思います。
それに対して、ちきさんはいつも「いいですよー、なんかやりましょう~」
と言ってくれて、毎度毎度いちいち嬉しかったのを覚えてます。
でもまあ、こんな感じなので特に進展もなく日々が過ぎていきました。

個展を観てから半年くらい経ったときだったかな。
ちょっとだけ進展がありました。
ぼくが突然、展覧会名を思いついてしまって、その勢いでメールしました。


==== 以下、その時の自分のメールのコピペ ====

何するかはまったく分かりませんが、名前が勝手に決まりました!
「チキチキ・ばんばん」展
いいでしょ、これ!
もう決定しちゃって申し訳ないですが、よろしくおねがいします!
でも何やるのか全然わからないのでビビッときたら
何でも良いのでおしえてください。

==== ここまで ====

こんな馴れ馴れしくも一方的なメールだったにもかかわらず、
ちきさんから好意的なお返事を頂き、開催が決定しました。
(うれしかったー)

何はともあれ、なんかよくわからないけど、こうやって始まったようです。

と言っても、しばらくはこんな感じで平和なやり取りが続くだけで
なにか具体的なことが進むわけではありません。
とりあえず、チキチキバンバンの映画くらいは観ておこうということになりました。

観たあとに会ったときの会話。
ぼく「どうでした?映画?」
ちき「おもしろかったですよ」
ぼく「え、そうですか。ぼくは苦手だなあ、あれ」

また、平和です。

でもこんな何気ないところから、少しずつやることが決まってきました。
敢えて書く必要もないと思いますが、「絵本を作る」ということが、この後、ようやく決まります。
やることがこれしかないのは、お互い最初っからわかってました。
展示する場所がないから踏み切れなかっただけなのです。
とにかく、踏み切った。えらい。
、、のはいいけど、本を作るのはちきさんなので、ぼくは特にやることがない。
一体なんだ?展示って。本を作るって。なんだ?  
(この問いを自身に問い続けていくことを、この先何年もやっていくことになるとは、このときは想像もしませんでした)


ちょっと話は逸れますが、ちきさんの作品を初めて観たときにすごく印象的に感じたことがありました。
「わ!この人、怖さをしらないのか、怖くないのか、痛覚がないだけなのかわからないけど、すごい!」
なんというか、間違うとか失敗とかそういうものを怖がらない線を描くなあと思ってびっくりしたのです。
そしてその線から生まれる余白も色彩も印象的で、ものすごく感動したのをいまでもはっきり覚えてます。
勢いや衝動とも違うし、技術ともちょっと違う。勇気とかでもないし、なんだろう。
人の評価なんかとは無縁な、限りなく素直な線というのでしょうか。うまく言えないけど。
まあ、実際はこんな切り離して感動しているわけではなくて、
全体で感動していたのだけれど、言葉にするとこうなってしまうことがもどかしいです。

絵を描くだけでなく、手製本の絵本をすでに何冊も作っていたことにも驚いたけど
そのどれもが素直に作られていることにびっくりしました。
このへんのことまで書くとほんとにキリがなくなるから書かないけど
製本やその販売方法まで全てが素直に思えました。
しかもまだ絵本を描き始めて2年くらいだと言うから、もうなんというか言葉が出ない。
いろんなことに感動して、よくわからなくって頭が追いつかなくなっていました。
初めて見た展示では、ほんとにたくさんのことに驚きました。


ものすごい的外れかもしれないと思いながら、自分なりの仮説を立ててみる。
「もしかしたら、この人は技術や経験をあまり使わずに何かを作っているのかもしれない」
もしそうだとしたら興味深い。
いやまて。そんなこと言ったって、誰だって何度も作っていけば手癖は出てきてしまうはず。
うーん、、。そうなったら、この人の作るものはどうなるんだろう?
気になるけど、まあ、それは今考えても仕方ないし、余計だし、
なによりこの仮説自体、かなり的外れかもしれないわけだし。そこは気にしなくていいか。
頭がぐるぐるするけど、いまはとにかく、この線から生まれるものが気になる。
この人の持っている、この線をさらに生かす方法はないか。

ふと気になったことがあって、確認をしてみる。

ぼく「ちきさん、木版画ってやったことあります?」
ちき「ないです」
ぼく「え!ほんとですか!興味あります?」
ちき「やってみたいです」
ぼく「え!そうですか!じゃ、木版画の絵本が見てみたいです」
ちき「じゃ今度、試しにやってみますねー」
(のちのち、気軽に頼み過ぎたなと反省する)

それから少し経って、一枚の絵を見せてくれました。それは、5色刷りの美しい木版画でした。
初めてとは思えない堂々とした絵なのに初めてだと思える良さが随所に滲み出ている絵。
不思議な魅力を放っていて、わくわくが抑えられませんでした。
(ちなみに、その絵はちきちきばんばん展のDMになりました)

迷うことなく、絵本は木版画で作ることに決まりました。
ぼくが本に関わった(と言えるのか?)のは、ここまで。

展覧会までの数か月、絵本に関しては待っているだけだったけどその時間も楽しかった。
ちきさんが、神保町で高級な彫刻刀を買って嬉しそうにしていたこと。
全32ページ、全て彫るんだということ。
彫るだけでなく刷るというのも難しいということ。
版画なのに一回しか刷れなかったこと。
お互い、知らないことばかりが起きて、なにもかも無邪気に楽しかった。
(ちきさんは、楽しいだけじゃなかったと思うけど、、、)

展覧会が近づくと、絵本も完成しました。

初めて見たとき、うわあっとなりました。
すごい、すごい、すごい。
タイトルが「ちきばんにゃー」なんて、わけわからないし、
ほんのりチキチキバンバンの映画も意識してくれてるし、
ねこ、かわいいし。描き方が変わっても、変わらないし。のびやかだし。
製本も素晴らしいし、お話もおもしろい。もう、全てがやさしい。ああ、すごい。
一瞬でその本のことが、大好きになりました。

素晴らしい本が出来たという嬉しさですっかり安心してしまってましたが
これから展示の設営をしなければなりません。
そうだ、そうだった。忘れてないけど、忘れてたふりをしてた。
展示スペースについて何も解決してません。
幸い?うちの店は三角屋根の高い天井だったので
空間があるとしたら、ここしかなさそう、、、ということで
ちきさんと話し合って、天井から吊るすことにしました。
数時間後、できた、、、のか?わからないけど、できたことにしよう。
思っているより高い位置で、首が、、、、疲れる。あまりよく見えない。
でも仕方ない、ここしかない。 ひとまず展示完了。

正直なところ、展示方法はたくさんの反省が残りました。
お世辞にもいい展示方法だったとは言えません。
それでも無責任なことを言ってよいのであれば、展覧会はものすごく楽しかったです。

お店にとって、初めての展覧会はとてもとてもあたたかな時間でした。
それぞれの知り合い(お客さん)が祝うように
お店はちきさんを紹介し、ちきさんはお店を紹介してくれました。

これが、お店にとって初めての展覧会です。  




※ちきさんが初めて刷った木版画(ちきちきばんばん展DM)

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あれこれ ③ 「はじめに」

2020-10-24 | ●思うこと


お店をはじめて17年。本作りをはじめて7年。
現在15冊、8名の作家さんと一緒に本を作りました。
7年も(?)やってるのに、未だに本のつくり方なんて全然わかりません。
そもそもそんなものないのかもなぁ、と思ったりもします。

ぼくはお店をはじめた頃から、作家さんとの付き合いというのがどちらかというと苦手です。
もうすこし違う言い方をすると、こわいというか近寄らない方がいいと感じてしまうというか。
それは作品が好きか嫌いか、興味があるかないかは全く関係なく、です。
そんな人間が展示をやったり本を作ったりしているなんて昔の自分からは考えられません(今でも信じられないけど)。

なんで苦手なんだろうと、ずーっと疑問でした。
今もわからないことはいっぱいあるけど最近なんとなく思うのは、人付き合いというのは社会的な行為なのに
作品と触れ合って自分が感動しているのは個人的な行為だからかもしれない、ということ。
作った人とあんまり関係のないところで、作られたものを自分勝手に楽しんでいるんです。
それを人に勧めたいわけでも、人と共有したいわけでもないし、答え合わせがしたいわけでもない。
そこは、良いも悪いも正しいも正しくないも上下関係も優劣もなく
個人的な、ただただどうしようもない世界なんです。
たぶん、そこは自分にとって社会ではないはずなんです。
ひとりで完全に成立しちゃってる。

自分が感じたものは自分のものでしかなくて、他の誰のものでもなくここにしかなくて
その世界には作った人間でさえ入れないはずなんだけど、
それでもやっぱり影響力はあって、他の誰よりも入ってこれてしまう力がある。
だから、ちょっとだけこわい。

もしかしたら逆もまた然りで、作家の側もそんなところがあるのかもしれません。
おそらく自分たちのやってる本作りは、ものすごく個人的なことを他人と共有して社会になる。
これに違和感を覚える作り手がいても不思議じゃないし、その場合、摩擦が起きないわけがない。
でもそういうことを繰り返すことで、本が出来ることもある。できれば摩擦は避けたいですけど。

誰かと本を作るとき、社会の上で関わったその人数分の個人的ななにかがカチッとあてはまり
一つの円になるような感覚があります。もちろん、読者という個人も含めて。

これまで、自分たちは こういうことをやってきたんじゃないかと思ったりします。
ただ最初に書いた通り、基本的に作家さんとのやり取りが苦手なのは
いまも特に変わらない気もするから、なにかきっかけみたいなものがあるはずで
心当たりがあるとしたら、おそらく、店で展示をやったり本を作ったりする前から付き合いのある、
出口さんとちきさんの存在が大きくて、この人たちに少し気を許してしまったのだと思います。
ここからだったら入ってもいいよ、っていう小さな隙間が生まれたのかもしれません。
そして、そのあと関わってくれた人たちがみんな優しかったからだと思います。
こわがらなくても大丈夫と思わさせてくれたことが大きいです。
これは自分にとって本当にありがたかったです。

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というわけで、これからうちの店で作った15冊のことを書いていこうと思ってます。
会期も終わりそうなこのタイミングにようやく書き始めてみようと思います。
一冊ずつ書いていこうと思うので15回以上更新するなんて無理だろうと思ってます。

これからブログに書いていくことは、本とそれを読む人にとっては全て余計なことだと思います。
本作りに関わった人たちにとっても余計なことかもしれません。
書く理由はわからなけど、なんとなく書いておいた方がいい、と感覚的に思うのです。
まあ、そんな理由なので書いていいのか結構迷いました(今も迷ってます)。
具体的な目的がないので、たぶんただの自己満足なのだと思います。
細かいことは、やっぱりわかりません。

とにかく書いてみようと思います。

本の周辺には、作家、デザイナー、印刷屋、製本屋、読者などなど
いろんな軸がある中で、今回はこの誰にも軸を置かず
自分に軸を置いて、出来るかぎり自己中心的に書いてみようと思います。
その軸の中で、この15冊を通して見ていくと
矛盾もはらみながら一本の筋が通るような気がしています。  


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・ブログ|https://blog.goo.ne.jp/nabusuraynohe
・15冊の展覧会(仮)|https://blog.goo.ne.jp/portal/tags/15冊の展覧会(仮)
(少しずつ更新します)

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会期|10/10(土)~10/27(火) → 11/3(火)まで延長になりました
休み|水曜(10/14、10/21)
時間|14:00~20:00
会場|えほんやるすばんばんするかいしゃ
住所|東京都杉並区高円寺南3-44-18
(JR高円寺駅6分|メトロ新高円寺駅12分)

※この期間が終わったら、お店はまたちょっとだけお休みに入ります。



期間限定営業|10/10(土)-11/3(火)

2020-10-10 | ● お知らせ
◎営業時間 14:00~20:00 / 水曜定休

※現在、新型コロナの感染防止対策のため、変則的な営業日程になっています。



あれこれ ② 「10/10(土)からの営業を前に」

2020-10-03 | ●思うこと


2018年が終わったとき
「ああ、終わったぁ、、」という感覚がありました。
満足感のような、充実感のような。
大きな区切りがついたような。

でも、よくよく考えてみたら
一体なにが終わったのか自分でもいまいちわからない。
だけど「終わった」という感覚は確かにある。
うーん、、。

これが一体なんなのか、はっきりさせておきたくて
これまでに何度も言語化しようと試みているのですが
どうにもうまくできないので、もしかしたら感覚的なものなのかもしれません。

とはいえ、やっぱり気になる。
芯の部分は言葉にできる自信はないので、その周辺のことを書いてみようと思います。

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2018年が終わると、2019年がやってきます。
終わったんだから、自然と別のなにかが始まるものだと思っていました。

ところが、いつものように何気なくお店を開けていたとき
「あれ、そういえば終わったはずなのに続いているぞ。なんで?」
という疑問がやってきました。
気持ちとしては終わっているのに、
現実は終わっていないし、なにも変わってない、という違和感。
変な例えかもしれないけど
「あれ?そういえば この映画、エンドロール全然終わらないな」
みたいな感じ。

もしかしてだけど、
終わり方がわからない、のかも。

あたり前かもしれませんが、時間が進んでいるんです。
それに合わせてお店も開くんです。
不思議に思って、意識して休んだりもしましたが
時間が進むと、また営業日がやってくるんです。
休んでるのに止まらないから、終われないんです。

そんなこともあって、2019年は どうしたら終われるのかが全くわからず
試行錯誤し続けた一年だったと思います。

「本が今までと一緒だからだ!」と思って、
とにかく一旦空っぽにしようと店内の古本も全て手放そうとしたし、
「場所に甘えすぎているからだ!」と思って
自分にとって一番落ち着く場所である2階部分を閉鎖したし、
(お店は元々2階部分だけだったのが後に1階ができて、さらに1階の奥に部屋ができました)
「計画を立てちゃうからだ!」と思って
出来るかぎり予定も立てないように、お誘い頂いたイベントもほぼお断りしたし、
店内での展示もやらないようにしました。
けれど、こちらのペースとは関係なく進んでいく何かがある。
ベルトコンベアーのような何かに乗っているような、
なんだかわからないけど、意思とは別の何かに動かされている。

一度終わった気分でいるので、とにかく終わりたいし
ひとまず立ち止まりたいのに、そもそも「立ち止まる」が、わからない。
時間が進んでいるように見えてしまう、感じてしまう。
これをどうにかしないと、立ち止まれない(ような気がする)。

そうこうしているうちにも時間はちゃんと進んでいて
2019年はなんとなく、終わった。

でも、年明け早々、転機があった。
背骨さんにお願いしていたお店の改装が終わったのです。
(倉庫だった部屋をお店に改装して頂きました)
内装について具体的な要望も示さず、明確な締め切りも設定せず
背骨さんにほぼお任せ・丸投げのお願いだったので(つまり自分たちは何もしてない)
いつ終わるのか、自分たちも正直よくわかってませんでした。
2019年の2月末にお願いしたので、約一年が経過していたことになります。

新たに生まれたその空間は、心地いいのか悪いのかすぐにはわかりませんでした。
うちの店の中に、うちの店じゃない店がある。
なんかそわそわする。
主観でしか見れないはずの店が客観でしか見ることができない。
客観ではすごくおもしろいと思っているけど、
これを無理やり主観で見ようとすると、妙に緊張する。
これ触っていいですか、とか店主にいろいろ許可を得たくなる感じ。
店主は自分のはずなのに、店主がいない。なかなか主観で見ることができない。
でも、脳内でこんなやり取りをしていると、
知らない自分が時々現れてちょっとおもしろい。
このそわそわ、なんかいいかもしれない。

そして、その空間や現象にはいろんなヒントがあって
古さや時間について、考えさせられました。
少しずつ、いろんなことが思い浮かぶ。

いろいろ実験してみようという気になってきた矢先、
世界中にコロナが発生し、お店は休みになった。

それからお店を4カ月休むことになり、その長い長い休業期間は、
強制的に休まされたという感覚はあまりなくて、
どちらかというと矯正に近い休みであり、時間だったような気がします。
(なんとなく韻を踏んでみた)
いま思えば、凝り固まった頭を柔らかくするために必要だったのかもしれない。

幸か不幸か、何度もやろうと思っても出来なかった
「立ち止まる」も、少しだけ出来たような気がする。
時間やカレンダーやお金に動かされていると思っていたけど
実際は、自分で決めた仕組みやルールに動かされていたことに気付く。
そしてその仕組み・ルール作りのベースに、時間やカレンダーやお金の存在があった。

これをまず無視するところから始めてみようと思ったけど、なかなか難しい。
抜けない自意識、感覚、クセ、執着。

毎日開いているお店への尊敬・敬意だったり、
街に根付いているお店への憧れだったり、
そういうものたちがちらつく。
たぶん、そういう店になりたかったんだと自覚する。
薄々気付いてはいたけれど、うちの店は街に根付いたお店ではない。
17年、高円寺でやってるけど スーパーや八百屋さん、
喫茶店や、ご飯屋さんや、新刊書店のように毎日通う人がいない。
その必要がないし、そもそも役割や性質が違う。
これをまず受け入れなければ。
うちの店は、高円寺やその周辺だけでは成り立たない。
日本中、世界中、広い世界にいるどこかのだれかに気付いてもらって
はじめて、商売としては成り立つ。
大多数の人にとっては興味がないことかもしれないけど、
遠くの近くのどこかのだれかっていうのが、自分にはちょうどいい気がする。
そうだそうだ、古い本なんて元々そういうものだったじゃないか、と思い出す。
その関係性が自分にはとてもちょうどよくて、気楽だったから
(新刊ではなく)古い本のお店を始めたんだった。そうだった。

人と会わない期間が長かったおかげか、
古い本たちとたくさん戯れられた。

古い本を見てると、時間の進み方が違うことに気付く。
うまく説明できないのだけど、時間がぺったんこになってる感じがする。
時間が止まっているわけじゃない。確実に動いている。
けど、進んでる、戻っている、という感じではない。
方向が決まっていない。あっちいったり、こっちいったり、とどまったり。
そしてそれは、自分の体感時間よりずっとゆっくり動いている。
ここになんとなくのヒントがあるような気がした。
と言っても、これをどうすればいいかはまだわからないけど、
これをお店にも反映できないかということを、ずーっと考えている。

でもまあ、考えてるだけじゃどうしようもないので、
実験を繰り返しながら少しずつ形にしていってみようと思っているところ。

前置きが長くなりましたが、10/10(土)から始まる営業期間と展覧会は、
お店としても個人としても大事な一区切りになると思っています。
そして同時に、はじまりにもなるといいなと思います。


店主




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10/10(土)~10/27(火)、期間限定営業いたします。 → 11/3(火)まで延長になりました
それに伴い、展覧会も開催します。

◎詳しくはこちら
https://blog.goo.ne.jp/nabusuraynohe/e/d545641dde926f29758e23538e83a425



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