絵本の古本屋 【えほんやるすばんばんするかいしゃ】

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きくちちきさんの個展、無事終了しました。

2018-04-25 | ●思うこと


きくちちきさんの個展、無事終了しました。
今回ほど「無事」という言葉が
しっくりくる展覧会もないんじゃないかな、と思う。
 
今回の展覧会と本づくり。
なかなか始まらなかったし、なかなか終わらなかった。
だから、無事に始まってくれたとき、
そして無事に終わったとき
本当に嬉しい気持ちでいっぱいでした。
あと、安堵みたいなものもあったかなぁ。
とにかく、無事終わりました。
心から、やってよかったと思える展覧会になりました。
ありがとうございます。
.
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(もうちょっと続きます)
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実はこの展覧会、数か月前に開催するはずでした。
ところが、いろいろと試行錯誤をしていたら
延びに延びて、お互いここが最後のチャンス、ということで
3月末の開催でいきましょう、となりました。
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[ あ、ここからは、なんとなく小説風にしてみました ]
.
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なかなか、はじまらない。
いや、たぶん、とっくにはじまっていたんだと思う。
はじまりがどこのなのか、わからないままにスタートしていて
会期が決まらないままに、DMを作り、印刷を躊躇った。
DMの裏面には、会場と会期のような数字だけを記した。
展覧会に関するメッセージも
展覧会に合わせて手製本を作ることも書かなかった。
書けなかった。
 
開催が無理だったら、配らなければいい。
それだけだ、と思ってDMを印刷した。
 
印刷すると、当然、その紙はDMになった。
3月7日のことだった。
刷り上がったDMを見ると、
2018.3.24(sat)-4.15(sun)と記されている。
おお。と思う。
もうすぐ、はじまるのか。
この予言みたいな数字、当たるといいな、と思った。
 
これ、配るのか。配っていいのか。
 
こっちは、気持ちとか決断を
わざわざ先延ばしして、ぼやかしているのに
DMの文字は容赦なく、印刷ははっきりしている。
 
いま思えば、これまでの進行状況を
なんとなく把握しているつもりだったから
余計、心配だったのかもしれない。
話し合いなどはするものの目に見える進展は何もないまま、
時間だけが、どんどん進んでいった。
 
展覧会まであと4日。
3月20日のこと。
しばらく連絡のなかった、ちきさんから一通のメールが届いた。
展覧会に合わせて作っている手製本(絵本)の本描きのデータだった。
びっくりした。
本描きが終わっていることに、まず驚いた。
これまで何度もラフを書き直していたので
正直、完成はまだまだ遠いと思っていた。
が、出来ている。
しかも、最後に見たラフのときから大きく変わっている。
タイトルは、「とらこのおくりもの」。
すごい。
よい!
 
ここに至るまでに、なかなか思うようにいかず
ちきさんも、相当大変だったと思う。
たくさんのやり取りをする中で、それはすごく伝わってきた。
そんな状況の中、これがやってきた。
 
いや、すごい。
あの状況で、こんなにも穏やかで
こんなにもあたたかな作品を生み出すなんて信じられなかった。
改めて、尊敬した。
 
その作品が発する力と、ちきさんの姿にとても救われた。
なんというか、生き返ったような気分になった。
嬉しさのあまり、間に合うとか間に合わないとか
もう、どうでもいいと思った。
とにかく、この作品が健全に完成してくれることを祈った。
 
よし、先へ進もう。
と、自然と思えたのは、自分自身びっくりしたし
なにより嬉しかった。
 
すぐに、装幀・デザインをお願いしている
サイトヲさんに連絡した。
打ち合わせをし、デザインや紙の相談なんかをしたと思う。
 
少しずつだけど、先が見えてきて
希望みたいなものが湧いてきた。
同時に欲みたいなものも出てきた。
間に合いたい、、、。
いや、ちょっと違うな、、、なんだろう。
終わらせてみたい。
終わりを見てみたい。
みたいな感じかな。
 
 
そうこうしているうちに、個展初日がやってきた。
初日の朝。
壁はまだ白いままだった。
ぎりぎりまで描いているらしい。
正直、心配だった。
が、その心配はお昼前に解消された。
ちきさんがやってきて、絵を見せてくれた。

本のデータを見たときと似た感覚だった。
いや、すごい。
びっくりするくらいに、よい。
しかも、その作品数は30点近くあった。
一点一点、壁に飾る度に感動してしまった。
さっきまでものすごく心配してた人間が
いま、ものすごくワクワクしている。
自分勝手だな、と思った。
 
設営もギリギリ間に合い、無事に初日を迎えることが出来た。
 
展覧会が始まると、今までとは別の忙しい日々が始まった。
賑やかな時間はあっという間に過ぎていく。
ぼくらは、本の完成を急いだ。
サイトヲさんと試行錯誤の日々。
予定していた装幀を実現するべく、準備を進めた。
 
準備が整い、完成予定の日がやってきた。
材料はすべて揃い、作ってみる。
で、できた?
が、、、なにかがしっくりこない。
みんなの感想も同じだった。
 
完成は、しなかった。
会期は、残り一週間。
その晩、みんなで集まっていろんなことを試してみた。
前進したような気もしたけれど、
決定的な案は出なかったような気がする。
 
万事休す、という自分には馴染みのない言葉がよぎった。
 
サイトヲさんに託し、その日は解散となった。
 
その数日後、サイトヲさんから連絡があり
開店前に書肆サイコロ(サイトヲさんのお店)へ直行した。
 
すると、そこには真っ黄色の本が置かれている。
あれ?完成してる。
すごくすごく、いい本だ。
反射的にそう思った。
さすが、サイトヲさんだ。とびっくりした。
 
いま思えば、とても不思議な感覚だったように思う。
完成しているであろう、その本を前に
ものすごく満足と感動をしているのだけど
これまでの時間があまりに長すぎて、
完成とか、終わりとか、そういう区切りが、
もうよくわからなくなっていたのだと思う。
その境界線を察知する感度が明かに鈍っていた。
どうしようもなくうれしかったのだけど
ここが喜んでいいタイミングなのか、全然わからなかった。

サイトヲさんに礼を言い、本を家にいったん持ち帰った。
その後、微調整をして 本当に完成した。
会期終了3日前のことだった。
 
すぐにちきさんに連絡をして、見てもらって
販売をスタートしよう、ということになった。
興味深かったのが、ちきさんもぼくらと同じようなリアクションだった。
すごく喜んでいるのだけど、ほんとに完成したの?という感じ。
お互い、完成したことが理解できていなくて可笑しかった。
 
正直、会期中の完成はない、と思っていたけど
完成したことで、急に名残惜しくなってきた。
 
展覧会終了前日、ちきさんに「一週間延長させてください」と、お願いした。
快くOKを頂いた。他にも、たくさんの人がお力を貸してくれた。
最終日に、会期延長が決まった。
本当にありがたかった。
 
そして、その延長期間も終わり展覧会は終わった。
 
 
ああ、終わった。
終わることが出来た。
無事、終わった。
よかった。
 
今回のことで、終わりがやってくることって
とても大事なことだと思った。
最終日の営業が終わってすぐ、ちきさんから電話があった。
「おつかれさまでしたー」と優しい声が聞こえてきて
なんだか込み上げるものがあった。
 
 
[ 小説風おしまい ]
 
 
ちきさん、たくさんたくさんありがとうございます。
そして、サイトヲさん。
急遽デザインをお願いしたにもかかわらず
引き受けて下さって、本当に本当にありがとうございます。
いつも感謝しています。
(サイトヲさんのこともいつかちゃんと書いてみたいなぁ)
 
そして、この展覧会を観て下さった皆さま、
とてもうれしかったです。
気にかけて下さった皆さま、とても支えになりました。
ほかにも、たくさん感謝したい人がいます。
 
皆々さま、本当にありがとうございました。
 
あ!本が出来たと言ってもまだ見本ができただけなので、
これからたくさん作っていきます。製本がんばります。
ご予約頂いた方々、ありがとうございました。
到着まで、もうしばらくお待ちくださいませー。
あ。ご予約はまだまだ受付中です。もしよかったらぜひ。
 

店主






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