坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

モダン・アート、アメリカン 自然との対峙

2011年09月28日 | 展覧会
今日から国立新美術館で〈モダン・アート、アメリカン〉展が始まりました。ポロックら戦後の抽象表現主義に注目が集まるアメリカ美術ですが、本展では、その全段階である19世紀中頃からヨーロッパに起こったロマン主義とリアリズムの流れから印象主義、キュビスム、アメリカン・モダニズムの時代を経て、抽象表現主義への道のりを、フィリップス・コレクションから110点でたどる内容となっています。
ワシントン近郊に設立されたアメリカ初の近代美術館であるフィリップス・コレクションは、ヨーロッパ近代美術の大コレクションを誇る一方、創設者のダンカン・フィリップス(1886-1966)は、まだ無名であった同時代のアメリカ人作家の作品を積極的に購入し、若手作家を支援しました。ジョン・マリンやエドワード・ホッパー、ジョージア・オキーフ(6点)、幾何学抽象のスチュアート・デイヴィス、ダイナミックなアーサー・G・ダヴの作品も見ごたえがありました。

印象主義のコーナーでは海辺などを主題とした外光派のアメリカ印象主義の明るい作品が並びましたが、印象派の並列的なタッチを応用しながら、アメリカの土壌、風土的なモチーフに独自の展開を見せていました。

手前の作品は、抽象表現主義のコーナーのアドルフ・ゴットリーブ「見者」1950年です。黒の大胆な筆触が、画面を有機的な律動感をつくりだしています。
マーク・ロスコやサム・フランシスなど日本でもなじみのある作品も並びましたが、全体を通して感じたことは、アメリカの絶対的な自然の力です。寂寥感を伴う壮大な自然へのヴィジョン。それと対する人工的な都市の力。拮抗するのではなく、アメリカの土壌として両極的な魅力をアメリカ美術の流れの土台として築いていました。

◆モダン・アート、アメリカン/開催中~12月12日/国立新美術館(六本木)