坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

作家主導による展覧会 所沢ビエンナーレ美術展2100「引込線」

2011年09月16日 | 展覧会
2008年から埼玉県所沢市で始まった同展覧会は、美術家が自ら企画・運営する方式をとり、統一テーマを設けないという点に特質があります。〈もの派〉〈ポストもの派〉世代の所沢近郊に住む美術家たち、遠藤利克(敬称略以下同)、戸谷成雄、中山正樹らが立ち上げ実行委員会を組織しました。
〈もの派〉は60年代から70年代にかけて、物質を素材として加工するのではなく、物質そのものの組成や成り立ちに立脚した志向に特質があり、日本の前衛の第一線に現在まで深く関わっています。60代となった美術家たちをリーダーとして、同実行委員が選んだ20~60代の計30作家が、旧小学校と旧学校給食センターの2か所で、その場を踏まえた作品を発表。
プール脇や更衣室に展示された作品などが建築的な構造と面白い対比を生んでいました。
・小学校の入り口付近で公開制作を行っている彫刻家の山本麻璃絵さんです。楠の合板を使って破格な大きさの拳玉を制作中です。武蔵野美術大学の大学院生で、木彫で自動販売機や赤いポスト、扇風機など、日常的なポップな楽しさのある作品をコツコツと制作してきました。木彫の素朴さと温かさが感じられました。

◆所沢ビエンナーレ美術展「引込線」/開催中~9月18日/所沢市生涯学習推進センター、旧所沢市立第2学校給食センター
 (西武新宿線航空公園)