坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

金沢健一展 出発点としての鉄 多様な展開

2011年09月21日 | 展覧会
金沢健一さん(1956年~)は、1887年から制作を始めた鉄板を溶断した「音のかけら」シリーズで、昨年も数か所の地域でワークショップを展開。素材と形、音を結びつけたパフォーマンス性豊かな表現で近年ますます注目を集めています。
80年代の初め、鉄柱を組み合わせた幾何学的な構成のインスタレーションで、現代日本美術展(毎日新聞社主催)などにも出品。鉄のグリッドやL字型など、鉄板という素材に本質的な美しさを見出し、加工を最小限に留めたミニマル的な方向性に特徴がありました。それは鉄板を重ねた層としての作品においても今回の展覧会で感じられたことでした。
現在では、「音ー振動ークラニド図形をつくる」のワークショップも展開。鉄の多様な側面の魅力を引き出しています。
・掲載作品は、「音のかけら5」1997年。マレットがさまざまな形に溶断された鉄板の上に置かれています。思わず誰でも叩きたくなる気持ちに誘導されます。複数の人が叩き始めると、澄んだ音の響きが思いがけない不思議なハーモニーをつくりだしていきます。この作品は、第1回岡本太郎記念現代美術大賞準大賞(大賞は該当者なし)を受賞しました。
初期の作品から現在まで、集大成としての作品の流れが一望できます。

◆金沢健一展/開催中~9月25日まで)/川越市立美術館