坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

彫刻の時間ー継承と展開ー

2011年09月06日 | 展覧会
東京藝術大学美術学部彫刻科は、創立以来120年の歴史をもち、竹内久一、高村光雲の二人の教授による指導から始まった彫刻科の教育は幾多の改革を経て、数多くの彫刻家を輩出してきました。
本展は、彫刻科が企画して第4回目を迎え、時代とともに変わりゆく彫刻の過去から現代までを、本学の歴史を振り返りながら辿ります。
「継承と展開」が副題になっているように、本展は二つの要素が絡み合っています。ひとつは、本大学美術館所蔵の彫刻の中でも、鎌倉時代の快慶「大日如来坐像」など仏教彫刻から展開した木彫作品を選定することで、彫刻の歴史構造をひも解いていきます。もう一つの柱は、名誉教授、現職教員の展示です。空間を意識的に使い、現代の彫刻のあり様を提示していきます。
とくに橋本平八の作品17点と、平櫛田中の作品29点の展示は、近代ヨーロッパから導入された塑像彫刻と比較する上で、また日本の彫刻の独自性を考える上でもあらためて注目されている彫刻家です。
他に、「そりのあるかたち」のシリーズで知られる澄川喜一(敬称略、以下同)、大理石における新たな表現領域を開拓する原真一、木彫の森淳一、参加型のインスタレーションなどで活躍中の大巻伸嗣など多彩な顔ぶれが楽しみです。

◆彫刻の時間ー継承と展開ー/10月7日~11月6日/東京藝術大学大学美術館(上野公園)