坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

世界遺産 ヴェネツィア展開幕

2011年09月23日 | 展覧会
ヴェネツィア共和国は、697年の共和国成立から1797年のナポレオン侵攻までの約1000年の間に、強大な軍事力と交易による富を背景として、〈アドリア海の女王〉とたたえられる美しい都を築きました。
現在でも歴史的な街並みが数多く存在し、その栄光はサン・マルコ広場やドゥカーレ宮殿などに受け継がれています。
本展は、ヴェネツィアを代表する13の館からなる組織であるヴェネツィア市立美術館群から、黄金期に宮殿や人々の生活を彩った宝飾品や衣服などの品々や、16世紀ヴェネツィア派の巨匠のベッリーニの「聖母子」、異才を放つヴィットーレ・カルパッチョの板絵「二人の貴婦人」などは、色彩の美しさに目を見張りました。ティントレットの壮大な「天国」など次代の画家に影響を与えた大胆な筆触でスケール感がありました。
絵画では、ピエトロ・ロンギの18世紀中頃の「香水売り」など、ロンギの数点の秀作があり、貴族の館で繰り広げられる情景が妖しく秘密めいた作風でヴェネツィア絵画の魅力を伝えていました。
・展示空間も上品な華やかさが演出されていて、照明も工夫されていました。
 手前に、9世紀末に制作された大理石の井戸の井筒があります。小アーチの中の十字架やばらの花、様式化された動物などこの時代の装飾文様を伝えています。
このように絵画だけでなく、古地図や地球儀や帆船の模型なども設置され文化人類学的な視点の展示に特徴がありました。

ヴェネツィアングラスも華やかさと上品さを併せ持つ草花模様が美しかったです。

本展は、東京会場を皮きりに以下の5か所を巡回します。

◆ヴェネツィア展/開催中~12月11日/江戸東京博物館(墨田区)・12月22日~12年3月4日/名古屋市立博物館
 ・3月17日~5月13日/宮城県美術館 ・5月26日~7月16日/愛媛県美術館
 ・7月28日~9月23日/京都文化博物館・10月6日~11月25日/広島県立美術館
 http://www.go-venezia.com

★東京都美術館リニューアル・オープン記念展
 「メトロポリタン美術館展 大地、海、空ー4000年の美への旅」の開催が決定!
 自然をテーマにレンブラント、ターナー、モネ、ゴッホらの傑作を中心に、同館所蔵の絵画や工芸、
写真など約130点が出展され、古代から現代までの西洋美術の粋を一堂に集める。
開催期間は、12年10月から翌年1月まで。