坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

川端康成コレクションと東山魁夷

2011年09月01日 | 展覧会
川端康成(1899~1972)は、美術にも深い造詣を持ち、確かな審美眼で知られた文豪として芸術家との交流がありましたが、中でも日本画家、東山魁夷(1908~1999)との交流は深く、美の本質をみつめる心の在り方に共感の念を抱いていました。
コレクターとしての川端というと、中国と朝鮮の陶器などが思い起こされますが、本展では、土偶にはじまり、仏像、近代工芸などの日本美術、さらにロダン、ルノワールら西洋近代美術も華を添えています。
とくに、南画の池大雅と与謝蕪村による合作「十便十宜図」など後に国宝になった作品も含まれています。
一方、東山はガンダーラ仏像、ローマン・グラス、中国の陶磁器、旧家伝来の茶道具など、筆を休め、名品に生活の折々にふれる至福のときを味わい、創作の源としました。
・掲載作品は、東山魁夷「北山初雪」1968年 川端康成記念会蔵。京都の周山街道を描いたもので、雪に覆われた木立の林立する山肌を描いた作品ですが、寂寥とした中にも清らかな白の響きが奏でられています。
川端が蒐集した美術コレクションを中心に、東山のコレクションも併せて紹介されるという極めて特色のある企画内容に注目しました。

◆川端康成コレクションと東山魁夷/9月17日~11月6日/山梨県立美術館
 12年1月2日~2月12日/新潟市立美術館

☆7月29日~31日に開催されたアートフェア東京2011は、プレビューを含む4日間で延べ4万5千人を超える来場者を数えました。
京都市立芸術大学学長で数々の国際展のディレクターを行ってきた建畠氏は、「日本の新しい美術の方向とスタンダードを示唆する役割を果たした。⋯韓国や中国のアートフェアに対抗する国際性があってほしいし、今後も期待がもてる」と、今展の感想が入ってきました。