ロック探偵のMY GENERATION

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『どろろ』

2019-07-24 19:53:30 | アニメ
 

アニメ『どろろ』を観ました。

もちろん、今年の新作のほうです。amazonプライムで見られるようになっていたので、そちらで視聴。テレビ放映終了からやや遅れて、最終回まで到達しました。


原作はいうまでもなく手塚治虫の漫画で、過去にもアニメ化され、また実写映画化されたこともありました。
で、また新たにアニメ化されたわけですが……

まず、絵のクオリティが素晴らしいですね。
中世の日本を描いた美しい背景画に、百鬼丸や鬼神たちの姿が映えます。和風を基調にしたBGMも秀逸でした。


ストーリーも、原作とはだいぶ変わっていますが、原作の設定をうまく取り入れながら、新たな『どろろ』の世界を作り上げてます。最近のアニメを見ないのでよくわからないんですが、この十年ぐらいのなかでも傑出した作品なのではないかと思いました。


原作との最大の違いは、百鬼丸のキャラクターでしょう。

鬼神に身体機能を奪われていながらも、原作の百鬼丸は普通の人間と同じように行動することができますが、今回のアニメにおける百鬼丸は、まったく他者と意思疎通できない状態で登場します。そこから鬼神を倒すごとに、感覚を一つずつ取り戻していくのです。

一方で、百鬼丸のライバルである多宝丸や、醍醐景光に関しても、かなりキャラが変っています。
原作では、ふつうに悪役として登場しますが、今回のアニメ版では、それなりに領民のことを思いやる領主であったりして、そこに、全体のために個を犠牲にしてもよいかといった重いテーマがたちあらわれることにもなります。


そういう大きな設定変更がなされてなされはいますが……原作の持っていたテーマは踏襲しています。

それは、戦争の悲惨さというところですね。

戦争を体験した手塚治虫だからこそ描いた、残酷なまでにむごたらしい戦の姿――子供も容赦なく殺戮する武士たちや、戦災で親を失い四肢を欠損した孤児たち。
武将の勇ましい活躍を描くのではなく、辺境においやられたものたちのリアルな姿がそこにあります。
アニメでも、そこはしっかりと描かれていました。特に、第五、六話「守子唄の巻」は、原作のエピソードを巧みにふくらませ、胸に迫る物語でした。

もっとも、戦争の惨禍を描くという点に関しては、原作のほうがより凄惨ではあると思います。手塚御大独特のユーモアセンスで、あまり重苦しくはならないんですが……アニメでは変更されていた部分や、カットされていた部分も少なくありません。

戦争の悲惨さという以外にも、『どろろ』には現代に通ずる重要なテーマがいくつも描かれています。
そういうこともあってか、海外では、数ある手塚作品の中で『どろろ』が最高傑作という人も少なくないらしいです。
……というわけで、今回のアニメで関心を持った人は、ぜひ原作のほうも読みましょう。


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