前回、ボブ・マーリィがメジャー・デビュー50周年だという話をしました。
クイーンも、ウルトラマンタロウも、50周年という話でした。
その流れを引き継ぎ、今回も50周年アニバーサリーについて書きたいと思います。
登場するのは、マーヴィン・ゲイです。
デビュー50周年ということではりあませんが、名盤として名高い
Let's Get It On が、今年で50周年を迎えるのです。
一応、マーヴィン・ゲイという人について簡単に説明しておきましょう。
マーヴィン・ゲイは、ソウルの巨人として知られる伝説的シンガーです。
当初はソロシンガーではなく、コーラス隊の一員やドラマーとして活動。一時、ブルースやソウルの名門として知られるチェス・レコードに在籍したことがあり、ボ・ディドリーとも親交がありました。
そんなマーヴィン・ゲイのステージを、モータウンの社長ベリー・ゴーディJrが目にし、彼をモータウンに引き抜きます。
このとき「ゲイ」のつづりを Gay から Gaye に変更。英語名で最後に読まないeがついているのはよくありますが、マーヴィン・ゲイの場合、敬愛するサム・クックのつづりが Cooke となっているのをもとにして、ということです。このエピソードには、ソウルの王道をいくんだという矜持がみとてれるかもしれません。
さらに、ゴーディの妹アンナと結婚し、公私ともに充実した状態でモータウンで活躍……そして、絶頂期ともいえる時期にリリースされたのが、Let's Get It On でした。
そのタイトルチューンです。
Let's Get It On
このLet's Get It On が50周年だということですが……しかし私としては、その前作にあたる What's Going On も捨てがたい。
ということで、ちょっとそちらの話を。
タイトル曲のWHat's Going On は、以前このブログの記事で引用したと思います。
ベトナム戦争末期の世相を反映して、社会的なメッセージが前面に出た歌です。「戦争は答えじゃない」というフレーズは、ウクライナ戦争での反戦デモなどでも目にしました。
そういう歌なので、前回ボブ・マーリィの記事で紹介したPlaying For Change にも動画があります。
What's Going On (Marvin Gaye) Feat. Sara Bareilles | Playing For Change | Song Around The World
ボブ・マーリィとは意外な接点もあって、マーヴィン・ゲイがジャマイカ公演を行った際に、解散していたウェイラーズが一時的に再結成して共演したりしているのです。
ボブ・マーリィの代表曲One Love/People Get Ready のもとになったのはカーティス・メイフィールドの People Get Ready なわけですが、カーティス・メイフィールドがああいう曲をやったのはマーヴィン・ゲイのWhat's Going On の影響ともいわれ……こうしてすべてがつながってきます。
ついでに、What's Going On からもう一曲。
このアルバムにはSave the Children という曲があります。
前回ボブ・マーリィの曲が Save the Children のプロジェクトに使われているという話でしたが、こういうところにもつながってくるわけです。このセーブ・ザ・チルドレンという団体は1919年から存在しているということなので、マーヴィン・ゲイの曲と何か関係があるわけではないんですが、「子供たちを救って」という普遍的なメッセージで自然と接点ができてくるのです。
この歌を、ダイアナ・ロスがカバーしたバージョンがあります。
マーヴィン・ゲイとは何度かコラボしており、とりわけAin't No Mountain High Enough が有名なダイアナ・ロスさんですが、ジョン・レノン「イマジン」とのメドレーでSave the Children を歌いました。
Medley: Imagine / Save The Children (Alternate Version)
この歌は、U2のボノがカバーしたバージョンなんかもあります。
ボノも、前回のボブ・マーリィ記事で出てきました。すべてがつながってくるとは、こういうことなのです。
カバー曲を続けて載せてきたついでで、最後はマーヴィン・ゲイにとって最大のヒット曲「悲しいうわさ」を、CCRのバージョンで。
Creedence Clearwater Revival - I Heard It Through The Grapevine (Official Music Video)
最大のヒット曲とはいうものの、マーヴィン・ゲイのオリジナルではありません。
最初にやったのは、やはりモータウンの巨人であるスモーキー・ロビンソン。これを、60年代末にマーヴィン・ゲイがカバーし、大ヒットしたのでした。
このヒットからWhat's Going On、Let's Get It On というところが、マーヴィン・ゲイの最盛期でしょう。その後はアンナとの離婚があり、それもあってモータウンとの関係もぎくしゃくし、低迷していた時期もありました。そして最後は、父親との口論との末に、銃で撃たれて死亡……決して長いとはいえない一生でしたが、そのなかで、マーヴィン・ゲイは色あせない輝きを放つ名曲を残したのでした。