今日は7月4日です。
前回の記事も日付に関してでしたが……今回もその流れを引き継いで、日付記事でいきたいと思います。
7月4日は何の日かというと……アメリカの独立記念日です。
アメリカの話という点でも前回からの流れを引き継いでくるわけですが、そうなるとやはり、いまアメリカで起きている地殻変動についての話になります。人種差別の問題は、アメリカという国の独立以来――いや、独立の以前から社会の根底に横たわっているのです。
ここで、名曲を一曲。
ガース・ブルックスの
We Shall Be Free です。
人種差別の問題だけを歌っているわけではありませんが……
これは 預言者なんかじゃなく
ありきたりな男の言葉
目を閉じれば浮かんでくるんだ
みんなが手を取りあって歩むときに
この世界の進んでいく道が
ひとかけらのパンのために泣くような子どもがいなくなるとき
口にした言葉のために死ぬものがいなくなるとき
どんな貧しい人にも住む家があるとき
僕らは自由になるんだ
肌の色なんかじゃなく
内面の美しさに人々が目をむけるとき
空と海がもういちどきれいになったとき
僕らは自由になるんだ
僕らは自由になるんだ
まっすぐに立ち 誇りをもって歩こう
僕らは自由になるんだから
自分の選んだどんな人でも自由に愛していいとき
世界がどんな価値観も受け入れるとき
どんな信仰も許されるとき
僕らは自由になるんだ
カネがものをいうのではなく
取り残される者がだれもいなくなるとき
人種の争いがなくなるとき
僕らは自由になるんだ
僕らは自由になるんだ
ささやかな信念をもち あきらめずにいよう
僕らは自由になるんだから
ガース・ブルックスといえば、もうカントリーの世界では超のつく大物ですね。
来日したことはないそうなんで日本での知名度はあまり高くないかもしれませんが、本国アメリカでは一億枚以上のアルバムを売り上げているというモンスターアーティスト。アルバムを一億枚以上売ったアーティストは、ほかにビートルズやエルヴィス・プレスリー、レッド・ツェッペリン、イーグルスしかないということで、その顔ぶれからも、いかにすごいことかがわかります。
そのガースさんが、こういう歌を歌っているわけです。
人種差別、貧富の格差、言論の自由、環境汚染……と、広範な問題が取り上げられていて、それらはアメリカだけにとどまらない世界規模のテーマともいえるでしょう。
カントリーの世界は結構保守的な人が多いそうですが、そのなかでこういう歌を歌うのは結構異例なことのようで、その筋では物議をかもしたといいます。「そんなに問題になるとは思っていなかった」と本人は後に語っていますが、そりゃそうでしょう。この歌が問題視されてしまうというところに、アメリカという国の病理がみえるようです。
アメリカは“自由の国”を謳っているわけですが、独立から2世紀半近く時が経って、その理念が本当に実現されているのか考えさせられます。
ガース・ブルックスの歌う定義でいえば、アメリカも、この世界も自由からほど遠いということになるでしょう。
問題は、差別をなくそう貧困をなくそうというようなメッセージにさえ反発する人がいることでしょう。
ガース・ブルックスの場合も、先述したように、この歌を歌ったことが問題視されました。歌詞が“左翼的”なので、あいつはアカだというようなことをいわれたらしいです。
まあ、どこの国にもそういう人はいるということなんでしょうが……ここで歌っているようなことにさえ反発する人が少なからずいるというのは、人間の業かもしれません。
hold out という言葉が歌の中で使われているのもそういうことでしょう。
いろんな訳し方があるようですが、この歌の中では、向かい風とか逆流に押し流されないように持ちこたえるというイメージだと私は解釈しています。
ダークサイドのエネルギーに押し流されないように、まっすぐ立っていよう――そのメッセージをかみしめる、そんな7月4日でした。