ロック探偵のMY GENERATION

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九州国立博物館「ビュールレ・コレクション 至上の印象派展」に行ってきました

2018-07-11 23:50:37 | 日記
九州国立博物館で行われている、ビュールレ・コレクション展にいってきました。

印象派を中心とする絵画を集めたコレクションで、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、モネ、ドガ……といった巨匠たちの作品が含まれています。

そんなものにお前は興味があるのかといわれるかもしれませんが……音楽と絵画は結構リンクしてる部分があったりもするんです。
脳の内部でも、音楽をメインに扱う部分と絵画のそれとは近い領域にあるらしく、60年代ごろのロックミュージシャンにはアートスクールに通って絵を描いてたという人が結構たくさんいます。
日本でいうと、忌野清志郎なんか高校時代に油絵をやってました。RCサクセションに「君を呼んだのに」という歌がありますが、あれはゴッホのことを歌ってるんだそうです。

また、19世紀の絵画で起きた動きは、ロックにつながっていく音楽の世界での動きともリンクしていると私は思ってます。
以前音楽に関する記事で書きましたが、19世紀ぐらいから「権威にとらわれない新しいムーブメント」が芸術のあらゆる分野で起きていて、絵画の世界では自然主義や印象派がそれにあたるというのが私の見方です。

印象派は、出てきた当初はその斬新さゆえに画壇に相手にされなかったわけですが、そこで彼らは自分たちのグループを作り、旧来の権威とは一線を画した自分たちの展覧会、“印象派展”を開きます。まさに、パンクやハードコアのバンドが自分のレーベルを作るということと相似形だと思うんです。アートにおける中央集権の否定ですね。セザンヌなんかは、何度落選してもサロン展に応募し続け、審査員のほうが間違っていることをはっきりさせてやるといっていたそうですが、これこそまさにロックですね。

で、印象派の代表格と目すべきルノワールです。

今回の展覧会では彼の「イレーヌ」の絵が撮影可能となっていたので、撮影してきました。



印象派の絵は、もう一目見てそれまでの絵と明らかに違う感じがしますが、ルノワールは一気にそこまでいきません。
それまでの絵画の伝統を踏襲しつつ、印象派的な要素をそこに付け足します。
つまり、王道路線にちょっとだけ実験性を持ち込む、というやり方なんですね。

そしてそれは……
そう、まさにロックの世界においてビートルズがやったことなんです。

“王道にちょっとだけ実験的な要素を取り入れる”というのは、実に強いんです。その配合が絶妙であったがゆえに、ビートルズは単に“大ヒットしたバンド”ではなく、ロック史上に足跡を残すバンドになれたのです。
ビートルズは、実験的な要素の割合を次第に大きくしていき、従来のロックとそれ以降のロックの架け橋となり、ロックの流れそのものに大きな影響を与えました。
シーンが大きく動く時には、そういう存在がいるんだと思います。
そして、ルノワールこそが絵画界のビートルズだったんではないか……
今回ビュールレ・コレクションを見て、私はそんなことを考えました。

ちなみに、記事トップの画像はモネの「睡蓮の池、緑の反映」です。
これも撮影可だったので、撮ってきました。写真がボケてますが、このボケ具合はなかなか印象派っぽさをブーストしてていいなじゃないかと思います。