ロック探偵のMY GENERATION

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Bruce Springsteen, Let's Be Friends(Skin to Skin)

2018-07-05 15:45:01 | 音楽批評
今回は、音楽記事です。

以前、歌と愛国心について書いた記事で、ブルース・スプリングスティーンの名前が出てきました。

そこからのつながりで、今回はこのアメリカンロックの“ボス”について書いておきましょう。

ブルース・スプリングスティーンといえば、やはり Born in the USAが有名ですね。
もともとは、そこまで政治的な主張を前面に出すアーティストでもなかったと思いますが、Born in the USAではそういう傾向が強く出ています。同じころのWe Are the World に参加したりしていたのも、うなずけます。

アルバムの Born in the USA 発表後、バックバンドであるEストリートバンドはいったん解散しました。
しかし、それからおよそ20年後に、Eストリートバンドは復活します。
それが、The Rising というアルバムでした。



このアルバムが発表されたのは、2002年。
前年に起きた同時多発テロに触発された曲が多く収録されています。The Rising というタイトルは「立ち上がる」ということであり、テロで受けたダメージから立ち上がろうというメッセージがそこに込められています。

このアルバムに、Let's Be Friends (Skin to Skin)という曲が収録されています。

直訳すると、「友だちになろう」ですね。

まさにそのとおりの歌です。


  君と僕が違うことはわかってる
  歩き方が違うこともわっている
  “過去”を“歴史”にするときがきたんだ
  そうさ、僕らが言葉を交わすことができたなら

  崩さなきゃいけない壁はたくさんある
  一緒なら 一つずつそれができるはずさ

  次のチャンスがいつくるかわからない
  好機はすぐに終わってしまう
  次のチャンスがいつくるかわからない
  好機はすぐにすり抜けていってしまう
  さあ、友だちになろう


ブルース・スプリングスティーンという人は、ここまでストレートな表現をすることはめったにないアーティストだと思いますが、当時は、そうせざるをえないような心境だったということなんでしょう。

当時のアメリカは、同時多発テロのショックから一種のヒステリー状態になっていて、アフガンへの報復攻撃、さらにはイラクへの攻撃に突き進もうとしていました。そのなかで、ボスは融和を歌っていたのです。
その声にみなが耳を傾けていたなら……と思わずにいられません。そうしていれば、その後中東がカオス状態に陥ることもなかったでしょう。

ここで以前の記事で書いた“愛国心”というテーマにもつながってきますが、本当にアメリカ人が国を愛しているなら、イラクへの攻撃は全力で止めるべきでした。
ところが実際には、“愛国心”の名のもとにイラクへの攻撃が行われ、その泥沼の戦いがアメリカの社会に大きな傷をもたらしたのです。

この歌のメッセージは、いまの東アジア情勢にも通ずると思います。

好機はすぐにすり抜けていってしまう。そして、次のチャンスはいつくるかわからない……
いたずらに勇ましいことをいって武力行使なんてことになったら、その後東アジアがカオス状態に叩きこまれることはかなり確実です。それが中東の教訓です。

今朝の読売新聞を見たら、8割以上の人が北朝鮮の非核化に懐疑的という調査が出ていました。
もちろん、非核化はそう簡単にはいかないでしょう。これまでの経緯を考えれば、素直に期待できないのももっともです。しかし、今のこの道しか、進める道、進んでいい道はないんです。

投げ出してしまうのは簡単ですが、これからのことを考えるなら、崩さなければならない壁を一つずつ崩していく努力をするべきでしょう。