What’s ノーマリゼーション?

福祉について考えるUMEMOTOのブログ

新型特養はスタンダードになれるのか?

2006-01-08 21:08:49 | 介護保険
昨年10月の介護報酬の改定により、大打撃を受けている新型特養(全室個室、ユニットケア)の居住費に関する調査結果が明らかになった。
調査は、全国757施設に調査票を送り、369施設から回答があったもので、それによると、居住費の平均は6万7千円になるという。国の基準(居住費の補填限度)の6万円と比べても7千円も高い結果となっている。最高額は長野にある特養で15万円となった。これにより、施設側が低所得の人の受け入れを控えるのではないか、という不安が指摘されている。(asahi.com)

これには背景があることを説明しておかなければならない。平成15年度ごろより、新設する特養は原則新型特養とするとされており、補助金についても公共スペースや事務部分のみとなっている。これは、従来の多床室の特養と比べても補助が少なくなっている。その分、個室やリビングスペースに費やした建築費は、利用者からホテルコストとして徴収することができていた。
介護保険制度の改正により、既存、新型に関わらず居住費は各施設で自由に設定してよいことにはなったが、補助金の少ない新型にとっては、減価償却のため高い居住費を設定せざるをえない状況になっている。
また、利用者から多くの費用を徴収することを鑑み、介護報酬が利用者一人当たり1日千円程度の減額になってしまったのである。多くの新型特養が何千万円とうい規模での赤字が見込まれており、そのため居住費をさらに上げる施設が出てきているのだろう。

10月以降の新聞にもたびたび取り上げられているが、このままでは利用料が払えずに新型特養を出ざるをえない者、新型特養への入居を断念せざるをえない者が続々出てくる可能性もある。特養側で、利用者を選別することもあるかもしれない。お金のあるなしで、施設を選ぶ時代になってしまっているのである。
今後、新型特養が最低基準となるようでなければ、日本の介護施設の質の底上げはないだろう。そのためにも、厚労省には低所得の人でも安心して入れる環境を整えるためにも新型特養の介護報酬の引き上げを期待したい。

新型特養はさらなる苦戦が予想される。それは近年急増している特定入所施設の存在である。株式会社や有限会社の参入により、終の棲家となりうる介護付きケアハウスや有料老人ホームが増えている。なかには、特養の個室よりも広くトイレやお風呂まで付いているものもあり、さらには居住費、食費を含めた全体の利用料でも新型特養と大差はない状況となっている。入居一時金も以前と比べてかなり安くなっており、これではどちらがよいのかわからない。夜間の人員体制(看護師の有無)、ケアの質ではまだ差はあるようだが、その差もすぐに埋まってしまうだろう。
資本金がある株式会社に社会福祉法人が太刀打ちできるわけはなく、今後苦戦を強いられることは間違いない。民間の新たなアイデアや、機動力はこれまでの社会福祉法人にはあまりなかったものである。一利用者の立場としては、民間の参入はぜひ期待したい。

一方、社会福祉法人が生き残る道は、王道を進むということだろうか。つまり、ケアの質を高めていくことである。人材育成は一朝一夕にできるものではなく、またこれまでの取り組みが人材を集めるということにつながってくる。そのような継続的な人材育成が必要だろう。
また、低所得の人の救済を第一に考えることではないだろうか。利益を求める株式会社にとって、低所得者は対象外の存在となる。そのため、社会福祉法人としても金銭のことを心配せずに安心して入ることができる施設であるべきだ。そのためにも重ね重ね国には、それなりの対応を求めたい。

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