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福祉について考えるUMEMOTOのブログ

地域包括支援センターとは何か

2005-02-10 22:07:26 | 介護保険
2000年度にスタートした介護保険が今年、初の大幅な見直しの時期を迎えている。先日2月8日には、改正法案が国会に提出され4月から本格的な審議が始まることになる。「介護予防サービス」が目玉として注目され、各メディアも大きく取り上げているが、今回の改正法案の中に「地域包括支援センター」という新しい機関も盛り込まれている。今回はその「地域包括支援センター」に焦点を当てる。

「地域包括支援センター」とは、高齢者が地域で生活していくために介護だけではなく、医療や財産管理、虐待防止など様々な問題に対して、地域において総合的なマネジメントを担い、支援していく中核機関とされている。
基本機能として―
 ① 地域の高齢者の実態把握や、虐待への対応など権利擁護を含む「総合的な相談窓口機能」
 ②「新・予防給付」のマネジメントを含む「介護予防マネジメント」
 ③ 介護サービスのみならず、介護以外の様々な生活支援を含む「包括的・継続的なマネジメント」
とされており、原則的に市町村が実施主体となる。市町村は非営利法人などに運営を委託することもできる。中学校区ごとにつくり、全国で5,000ヶ所程度整備する予定。

と、ここまできて何かお気づきにはならないだろうか。「介護予防」を除けば、どこかでみたことのあるような役割・・・、そう「在宅介護支援センター」である。この「地域包括支援センター」と「在宅介護支援センター」は位置づけが非常に似ているのである。そのため、「介護予防」をマネジメントする「地域包括支援センター」と紹介するメディアが多くなっている。

しかし、明確な違いとして様々な専門職(社会福祉士・保健師・ケアマネージャー)をその機能ごとに配置するなど地味に目新しい部分もある。
具体的には―
 1.相談業務においては社会福祉士が窓口になり、高齢者や家族などからの相談を受け付け、病院や弁護士、ボランティア団体などを紹介したり、連携したりして解決を図る。サービスを見直す必要がある場合は、事業者や医師らに働きかけてチームを作ることもある。
 2.介護予防には保健師が中心になり、利用者の心身の状態を判断、希望を聞きながら個別に目標や利用計画をたてる。
 3.ケアマネの支援はスーパーバイザーとしてのケアマネが担う。経験を積んだケアマネに研修を受けてもらいセンターに配置。認知症高齢者のケアプランや金銭管理、家族との関係などに悩む民間ケアマネに指導や助言をする。ケアマネが孤立しないようにネットワークをつくったり、地域の医師会や介護保険施設、住民らが連携する核になったりする。

以上3点、どの役割も重要かつ広範囲にわたっている。社会福祉士にとっては、これまでの曖昧な位置づけではなく、ようやく本来の役割を担うことができる位置づけになっている。
これらすばらしい理念も、現状のままでは問題が山積みである。まず、最も重要な専門職の確保が難しい。このような人材をどこから集めるのか。また、今までケアプランを立てたことのない保健師が、個人に合わせた介護予防の計画を立てることができるのか・・・など数え上げたらきりがない。

また、現在ある「在宅介護支援センター」との関係はどうなるのか。現在、全国に約8,700ヶ所整備されている「在宅介護支援センター」は、現在もほぼ同じような業務を行っており、また市町村が実施主体であるため財源も介護保険給付で賄われている。
限られた介護保険財政の中で5,000箇所を整備するということは、おそらく現行の「在宅介護支援センター」のうち、その役割を担えるセンターが「地域包括センター」へと移行していくことになるだろう。しかし、市町村によっては「在宅介護支援センター」をまとめる存在として「地域包括支援センター」を設置するところもあるかもしれない。それでは本末転倒になりかねないため、国は適切な指導をしていく必要があるだろう。
また、現行の「在宅介護支援センター」の役割や存在意義も改めて見直される機会になる。もしかしたら、「地域包括支援センター」に移行できなかった「在宅介護支援センター」は不要として閉鎖に追い込まれることもあるかもしれない。

なにはともあれ、明確な目的と位置づけに支えられた「地域包括支援センター」が軌道に乗れば、より地域における支援が充実することになるだろうし、そう期待したい。また、そこを拠点に高齢者施策だけではなく、障害者や児童にも向けた支援ができるようになれば望ましい。