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福祉について考えるUMEMOTOのブログ

介護予防の矛盾

2005-02-13 14:27:03 | 介護保険
今回の介護保険の見直しで、最も注目されているのが「介護予防サービス」の導入である。この介護予防の導入の背景には、毎年10%のペースで増え続けているサービス給付費の存在がある。
もともと要支援の人にサービスを提供する目的は予防にあったのだが、実際には軽度の人が多く利用しているのはヘルパーが掃除や調理などを行う家事代行サービスで予防にはつながっていない。それを裏付ける結果として、厚労省は介護度の重度化を挙げている。また、要支援と要介護1の数は4年半で2.5倍近くに増えており、要介護認定者全体の半数に及んでいる。この増え続ける対象をどうにかして減らすことが、増え続けるサービス給付に歯止めをかけるとして今回の見直しで導入されることになったのである。

改正案では介護予防の対象は、状態が軽い要支援と要介護1。市町村の介護認定審査会が主治医の意見参考にして、介護予防を必要か判断する。
判断基準はまだ確定していないが、認知症や末期がん、脳梗塞、心疾患、筋萎縮性側索硬化症などの神経難病、骨折の直後などは対象外になる見通し。
現在6つに分かれている要介護度の区分は、要支援が「要支援1」、要介護1が「要介護1」と「要支援2」に分かれ7つになる。その「要支援1」と「要支援2」が介護予防サービスの対象となる。

具体的な内容は―
 ・デイサービスセンターなどで機器を使ったトレーニングや体操による筋トレ【筋力向上】
 ・栄養士らが自宅を訪問して食事の栄養バランスをチェックし、栄養改善指導をする(医師から食事制限をされている人は除く)【栄養改善】
 ・高齢者を集めて歯科医や歯科衛生士らが歯や舌の汚れをチェックし、口腔ケアの仕方を指導する【口腔ケア】
 ・これまでヘルパーが全面的に行っていた家事を、できるところを一緒に行う【予防訪問介護】
 ・利用者の状態に合わせてデイサービスセンターなどでレクの変わりに、入浴、昼食、筋トレなどのメニューを個別に選べるようにする【予防通所介護】
などとなっている。まだ改正案なので変わる可能性もある。

介護予防のメニューを作るのは、事業所のケアマネではなく、新たにできる地域包括支援センター(仮称)の保健師となる。これまでケアプランを立てたことがない保健師にとっては、その責任は大きなものとなってくる。

また、難しいのが【予防訪問介護】において、家事を利用者とヘルパーが一緒に行うことだろう。利用者の状態にもよるが、要支援1・2といっても、体に障害が残り生活おいて何らかの支障がある状態である。これまではヘルパーが短い時間で掃除や料理などをてきぱきとこなしていただろうが、家事を一緒に行うとなるとこれまで以上に時間がかかることになる。例えば片麻痺の人が包丁を持ち、野菜を切るだけでも慣れないうちは大作業である。今まで1時間で済んでいたことが、2時間かかれば増えた1時間のサービスをどうみるのか。まさか、本人の自己負担ともいえまい。
いくら保健師が予防計画を立てるとはいえ、実際に現場でケアをするヘルパーにとっては大きな不安が残る。
それよりは、病気により体に障害が残った時点で、まずPTやOTなどの専門職がその障害に合わせたリハビリをすることが望ましい。リハビリもこれまでのようにただ歩けるようにするのではなく、その人の家でどうしたら家事やこれまでの暮らしができるのかを考えた上でのリハビリであってほしい。

筋トレは短期間でも効果があることは、すでに介護予防を取り入れている自治体の報告でも証明されている。意欲のある人が持続的に行えるようなシステムづくりが望まれる反面、意欲のない人にいかに意欲を引き出させるか、また重度の人でも意欲がある人にどう対応していけるのかなど課題は山積みである。