What’s ノーマリゼーション?

福祉について考えるUMEMOTOのブログ

こんな夜更けにバナナかよ

2005-02-18 12:56:03 | 読書感想文
1年半前ほどだったか、おもしろいタイトルの本に出会った。その時に読んだ感動と衝撃は今も薄れていない。この本を紹介してくれたのは、当時同じ職場で働いていた同僚で、彼も日々ケアのあり方に悩んでいた。それが『こんな夜更けにバナナかよ』であった。

この本の主人公はボランィアである。そして、そのボランティアを言葉だけで叱り、おだて、教え、自らの身体の一部にしているシカノという青年。彼は筋ジストロフィーを患っており、人工呼吸器をつけなければ生きることさえできない。24時間の介護が必要な彼は、ボランティアと共に一人暮らしをしていたのである。

実際に読んでもらいたい。特に、今介護の現場で行き詰っている人には。
この本から大きな力を得ることができるかもしれないし、介護の仕事をやめたくなるかもしれない。それだけ奇麗事だけでは済まされない世界に私たちはいることを教えてくれる。
当時、私は仲間と共にボランティアグループで活動していた。仕事もやりながら、自分の休みを使ってのボランティアにそれなりの価値を見出していたからであったが、自分の中に抱える矛盾も多かった。そんな私にとっては、この本はヒントを与えてくれた。きっと読む人によって、そのヒントは様々な色を見せるに違いない。

この本には、障害者の生き方についても考えさせられる。辛い思いをしながらなぜ一人暮らしを続けるのか。障害を持っている時点で「自立」はあるのか?

脳性マヒを持ちながら「いちご会」という障害者を支援する団体の会長をやっている小山内美穂さんが、ある著書の中でこう言っていた。「私たちが生活をし続けることが社会に対してのメッセージである」と。

『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』渡辺一史/著、北海道新聞社、2003年3月発行