むじな@金沢よろず批評ブログ

台湾、国際情勢、アニメなどについて批評

「台湾の声」こそマレー人を差別している 「台湾人=マレー系」で何が困るのか?

2007-03-27 01:47:35 | 台湾その他の話題
「諸君!」4月号で李登輝氏の転向について指摘したところ、その信者団体である「台湾の声」一派がそのメルマガで執拗に酒井論文批判キャンペーンを行っている。
ほとんどが、酒井の背景に対する誤認や憶測に基づいた単なる罵倒の類だ。
その中で唯一まともな反論といえるのは
http://www.emaga.com/bn/?2007030045568193016047.3407 件名:「台湾の声」【寄稿】酒井亨論文に駁す 李登輝氏のイメージダウンが狙いか 酒井亨論文(『諸君!』四月号)に駁す(台湾研究フォーラム会長 永山英樹)くらいのものだ。
だが、その永山氏の反論にしてすら、ちゃんと台湾で取材もせずに、日本で入手できる断片的な情報だけで、あれこれ言っているところがお粗末である。
それにしても、私は悲しい。
「台湾の声」一派については、私とは思想的には違うとはいえ、日台関係の増進という立場から、それなりに応援もしてきたし、期待もしてきたが、今回の悪質かつ低劣なキャンペーンを見て、あまりの低劣さに驚きを通り越して、哀れに思う。
しょせん、彼・彼女らには「日台関係」や「台湾の前途」そのものへの関心がなく、単に日本の右翼が「親日政治家李登輝」をおかずにして、自らの右翼思想を満足させたかっただけであることが、この間の言動で明らかになった。

では日本に親台湾派はいないかというと、それが増えているのだ。若者は純粋に台湾を好きになるものが増えている。これは心強いことだ。
そういう現実を見れば、いかに「台湾の声」が失格であり、時代遅れであるかがわかる。これ以上、台湾および日台関係に危害を加えないで欲しいものだ。

それにしても、「台湾の声」一派は、気が小さいらしく、私に直接何も言ってこない。直接言ってくることを手薬煉ひいて待っていたのだが、空振りに終わっている。そのかわり、私が直接受け取っていないメルマガでわあわあ騒いだり、諸君編集部に威力業務妨害まがいの下劣な脅迫を行ったりしているようだ。
あまりにも低レベルでお粗末すぎるので、無視するつもりだったのだが、ここ最近になって片言隻語をとらえて、「人種差別」だと攻撃するキャンペーンを張り出したので、これについてはちゃんと反論しておかねばなるまい。

まず、「台湾の声」は3月25日付けで
件名:「台湾の声」【酒井論文】人種差別論文を掲載した『諸君!』 台湾人への侮辱を許さない! 人種差別の酒井論文を掲載した『諸君!』(台湾の声編集部)
http://www.emaga.com/bn/?2007030073735287003185.3407
という文章を配信した。
これは文体や語気や攻撃の方向性から見て、東大院生のT氏が執筆したものと見られる。
つまり、「諸君!」で「これはレイシズムではなく文化人類学的な話として理解してほしいが、台湾人の多くは血統的にはマレー系平埔族を受け継いでおり、事実台湾で生活していると、中国よりもフィリピンやマレーシアなどと社会や人間の関係性が似ていることに「李登輝が懸命に推していた候補が惨敗し、しかも李登輝が最近罵ってきた民進党が勝ったことで、李登輝自身は大きく面子をつぶされたことになる」
「(文化人類学的に)マレー系や台湾人の場合、面子がつぶれると一種のパニック状態になり、自分は間違っていないと言い聞かせながら、面子がつぶれた状況からの当否を図ろうとする。往々にしてそれまで言ってきた立場や主張をかなぐり捨てることも多い」
と書いたことを取り上げて、

>『諸君!』(4月号)が掲載した酒井亨論文「李登輝は『転向』したのか」は、
>話がいいかげんなだけでなく、台湾人を侮辱する人種差別の内容だ。

と攻撃している。

まず、「台湾の声編集部」およびT氏に聞きたいことは、そもそもこれのどこが「差別」なのか、ということである。これが差別だというのは実に面妖な主張だからだ。

台湾人が中国人特に福建人よりも、マレー系の血統と気質を色濃く持っていることは、台湾人社会で生活し、中国福建、フィリピン、マレーシアなどにも足を運べば、容易にわかる現象であって、これを「差別」などというなら、あらゆる民族性の指摘や比較などできないことになる。

まして、台湾人がマレー系だということは、中国人、福建人とは違うということを指摘していることになるわけで、「脱中国」という観点で見るならば、台湾独立支持勢力ならば賛同して感激するべきことであっても、批判すべき話ではない。
それとも、「台湾の声」は、台湾人が「偉大なる漢民族であって、汚らわしい東南アジアの蕃人と一緒にするな」とでも言いたいのだろうか?

確かに台湾人の中でも、いまだに国民党教育やかつての漢人思想の影響で「台湾人は漢民族だ」と信じ込んでいる人間が多いが、まさか「台湾の声」も漢民族主義に立って東南アジアを夷戎視するとは思わなかった。

しかもこれは「諸君!」昨年11月号の台湾新幹線についての論文でも指摘していることであって、別に今回になって初めて出てきた話ではない。この部分については昨年10月に反論するならともかく、今ごろになって噛み付くのはどうかしている。

また、ここで「台湾人はマレー系だから駄目だ」などと誰も書いていない。
台湾人を含めたマレー系は、面子がつぶされるとその状況から逃避して、往々にして前言を翻すことがよくある。それは生活経験があれば容易にわかることであって、それは善悪の問題ではなくて、ただ、日本人にも中国人にもない、そうした気質や特徴があることを指摘したに過ぎない。
それを逆に「悪いこと」だと解釈して、「差別」だと騒ぐとしたら、そう主張している人がマレー系を差別していることになる。

「台湾の声」はどうも李登輝氏が「転向したこと」を「悪いこと」だと考えているからか、「転向などしていない」と強調し、「意見をころころ変える」台湾人の民族性も「悪いこと」だと思っているようだ。
しかし、意見や立場をころころ変えることが「悪いこと」だと言う思想は、日本人には根強いが、それが世界に普遍的な基準ではないことを知るべきだ。
少なくとも現在の台湾で李登輝氏が意見を変えたことそのものを誰も非難していない。問題は変わった方向性と内容そのものなのであって、「変節が悪いこと」だという台湾の声や日本人の認識は、台湾から見てずれているのである。

実際台湾では変節や転向そのものは悪いことだとは見做されない。私自身も台湾在住6年にして、やっぱり日常的にころころ意見を変えてきている。
それは冬でも零下にならず、従って地面が凍結することがなくて、植物が育つところで、別に「歴史的経験の蓄積」というものが重視されないし、暑い夏が長いので、「そんな昔のことなど固執していられない。その場しのぎでいいじゃないか」という発想が強くなるのは当たり前のことである。
それをあたかも「悪いこと」だと決め付けている「台湾の声」特にT氏の発想こそが、日本人に特有の感覚にとらわれて、台湾やマレー系アジアの発想やルールを否定する差別主義者だと言える。

>冗談ではない! 明らかにレイシズムではないか。いつから台湾人がそのような
>民族性になったというのか。

いつからも、昔から台湾人はそういう民族性です。
「冗談じゃない」ということは、そういう民族性を「悪い」と決め付けていることになって、それこそ傲慢で横暴な偏見というべきである。

あらゆる民族性には一長一短があるし、欠点に見えることも長所になることがある。
台湾人が意見や立場をころころ変えることは、日本人から見れば、節操がないと見えるかも知れないが、逆に日本人にはない柔軟性やフレキシビリティが生まれる。
台湾の中小企業の柔軟性と縦横無尽の活躍は、「意見や立場をころころ変える」からこそ生まれるのである。
たとえば、独立派の後援者として知られる蔡コン燦氏も、かつてはウナギ養殖業だったのが、後でIT部品メーカーに転身している。こうした転身は頭の固い日本人ではなかなかできない。

だから、「冗談じゃない」という感情的な一言は、台湾人がころころ立場を変えることのプラスの側面を見ないで、日本人的な偏見で一概に「悪いこと」だと決め付けているからこそ出てくる言葉なのである。T氏こそ台湾人を否定しているのである。

>面子をつぶされてパニックになる人は台湾に多いだろうが、日本でも、どこの国でも、そのような人間は普通に見かけることができるはずだ。

どうもこのT氏は読解力というものがないようだが、問題はその後。「その場から逃避しようとして、往々にして前言を翻す」ことが、特徴だといっているのである。
日本人の場合は(中国北方や朝鮮人もそうだが)、面子をつぶされてパニックになるが、その場合は前言に固執して、他人を変節していると罵倒することで、逆に自己の正当化を図ろうとする。これがマレー系と日本人との違いである。
「面子をつぶされてパニックになる」だけを読んで、後段を見落として噛み付いても意味がない。

>李登輝氏が台湾人の血を持っているために、パニック状態になって、立場や主張
>を変えて、中国に工作されたという証拠を示してほしい。

であれば、李登輝氏が中国の工作を受けていないという証拠はあるのか?

こちらの証拠はきちんと挙げている。
パニック状態になったのは、羅志明が6000票しか取れずに惨敗したことで面子がつぶれたと具体的に指摘している。
また、中国に工作されたことも、南方快報や李登輝の個人顧問の話を紹介している。
多少ぼかしているのは、情報源の秘匿という記者として当然の行為であって、ぼかされているから証拠として不十分だというのは言いがかりである。
まして、南方快報は台湾独立派のネットニュース広場である。そこで指摘されたことを否定するなら、「台湾の声」はもはや台湾独立も否定するということなのか?

>このような「文化人類学」の学説がどこにあるのか。酒井氏一人の学説だ。李登輝
>氏が転向したという考えを正当化するため、好き勝手に作った人種差別の学説だ。

学説も何も台湾やマレー社会で生活していれば、誰でも気づく、「日本人とも中国人とも違う特徴」である。
台湾に生活者として住んで、台湾人の集団の間で格闘した経験がない青二才にはわかっていないだけである。

>何も知らない『諸君!』の日本人読者は、このような悪意の「学説」を信用してしまうに違いない。

台湾に住んで台湾人の組織で働いたことがない日本人のT氏こそ何も知らない。
しかもT氏は福建にもフィリピンにも行ったことがなく、日本で組織に勤務した経験もない。

>台湾人にとっては、とても不愉快なことだ。訂正を拒む『諸君!』は台湾人が中国人や韓国人と違って大人しい民族だからとなめるのは傲慢である。

現在台湾に住んでいない人は台湾人とは言えない。
もし、この部分を台湾出身のL氏が書いたとしても、台湾出身であることは、台湾人として主張できることにはつながらない。
もし台湾人として生まれたことが台湾人の資格だというなら、それこそ国民党と同じ血統主義でしかない。
現在の台湾においては、台湾人の定義は、「台湾にアイデンティティを持ち、現に台湾に住んでいる人」である。
台湾に住んでいない人、高給を棄ててまで戻る気のない人は、台湾にアイデンティティを持たない馬英九氏と、実は同列でしかないのである。

>『諸君!』に良識があるなら、即刻に訂正するべきだ! 

良識があるからこそ、威力業務妨害や脅迫まがいの圧力は通用しない。


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さらに呆れたのは、26日に配信された慶応大学教授野村亨氏の文章。

>件名:「台湾の声」【読者便り】台湾人の名誉のために申し述べます
http://www.emaga.com/bn/?2007030079128670001927.3407

と、まるで台湾人社会の現象指摘が、台湾人の名誉を侵害していると言わんばかりの標題である。

>「文化人類学的」に「マレー系や台湾人の場合、面子がつぶれると一種
のパニック状態になり、自分は間違っていないと言い聞かせながら、面子がつ
ぶれた状況からの当否を図ろうとする。往々にしてそれまで言ってきた立場や主
張をかなぐり捨てることも多い」と書いているそうですが、文化人類学からみて
まったく誤りです。
>

> 私の専門フィールドであるマレーシアでは、英領マラヤ時代に、マレー人がパニ
ック状態に陥るとマレー語で「アモック」と呼ばれる一種の錯乱状態になって親族や
村人を誰彼の見境なく殺してしまうという現象が見られ、ここを統治したイギリス人
はこれを一種の民族的な形質に由来するもの、あるいは一種の風土病と考えていまし
た。
>

「面子がつぶれる」こととその後の行為について述べているのであって、それが必ずしもアモックのことだとは誰も書いていない。勝手にアモックのことを連想したとしたら、それこそ的外れである。

>まして、台湾人がマレー系の血筋を引くからと云ってこれを直ちにマレー半島のマレー人と関係づけることはまったく論理的に成り立ちません。

などと言っているが、この教授は台湾のことを知らないで、専門外のことに首を突っ込もうとするからヤケドをする。
そもそも民族性の現象説明に論理的に成り立つかどうかなど関係がない。
また、文化人類学に論理を持ち込んで説明しようとしたら、それこそスチュアート・ホールらに批判されたような「帝国主義者の学問」そのものではないのか?

しかもこの教授、論理にこだわる割りには、自らの論理は破綻している。

>ここを統治したイギリス人はこれを一種の民族的な形質に由来するもの、あるいは一種の風土病と考えていました。
>しかし現在では、これは追い詰められた状況に陥った個人が起こす行動の一種と捉えられており、人種や社会に由来するという学説はまったく否定されております。

として、アモックがマレーシアの社会に由来することを否定しておきながら、

> 私の知る限り、台湾の原住民はフィリピン群島のマレー系人種と近い関係にあるこ
とは知られておりますが、フィリピン社会に上記のようなアモックに類似した現象が
あるという研究報告は寡聞にして聞いたことがありません。また日本領時代に行われ
た台湾原住民の調査などでもこのような学説が示されたとは聞いたことがありません。
>

とアモックがやはりマレーシアに特有の現象、つまり社会に特有の現象だと指摘する始末。
他人の言説を否定しようとすることに汲々として、自分の論理の破綻を招いたお粗末さ。

> 結論として、このような学問的な基本常識を欠く酒井論文は単なる強牽付会に基づ
くものに過ぎず、したがってなんらの学問的根拠があるとは到底思えません。台湾人
の名誉のために以上申し述べます。

「強牽付会」なる日本語はそれこそ「聞いたことがありません」。
他人の言説を否定したいなら、それ以前にまともな日本語を使ってほしいもの。

>慶応義塾大学教授      野村 亨

「大学教授が言うことだから、偉いのだ」とでも言いたいのか?

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そもそも「台湾の声」は最近中国人に秋波を送るようになっている。

たとえば、

>件名:「台湾の声」【訃報】張 超英氏死去
http://www.emaga.com/bn/?2007030027501540000338.3407

だが、張超英氏は私もよく知っているが、宋楚瑜の手先のような存在。確かに台湾意識も強いのだが、宋楚瑜との関係の深さはよく知られていた。

>件名:「台湾の声」【案内】21日に阮銘先生の講演会
http://www.emaga.com/bn/?2007030059110654002229.3407

阮銘氏は昔は中国共産党幹部として、胡耀邦に仕えた人。確かに現在は台湾に住み、台湾独立を支持しているが、依然として台湾語はできず、表現スタイルが中国共産党そのものの大げさな北京語の長広舌で、聞いていると閉口する。

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