むじな@金沢よろず批評ブログ

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中国に台湾市民社会の怒りが爆発 6時間足止めの快挙 国民党内部にも意見対立か

2008-11-09 23:18:38 | 台湾社会運動
いやあ、興奮の5日間だった。

陳雲林の台湾訪問では、日頃中国の台湾に対する高圧的な対応に対してこれまで鬱積した台湾市民の不満が大爆発したという感じだ。
これまで台湾に中国側から高官が訪問することもなかったから、中国に対する抗議、あるいはチベット独立への支援などの行動は、直接の対象が見出せなかった。今回は抗議すべき対象がわざわざのこのこやってきたのだから、これは絶好の機会であった。そして、実際台湾人民は世界初の快挙を成し遂げたのだ。
それは5日夜、晶華飯店(リージェントホテル)で開かれた国民党主席呉伯雄と陳雲林との会談で、陳らが会談が終わってから7時間以上もホテルに足止めされたということだ。

これはおそらく前代未聞の事態で、独裁体制になれた陳雲林は肝をつぶしたことだろう。
そして、おそらくこの背後には、国民党内部にも、陳雲林の来訪と中国の日頃の対応を快しとしない勢力があって、意図的に抗議行動の制圧に待ったをかけ、馬英九と陳のメンツをつぶそうとしたものと思われる。
実際、国民党内部でも、今回の来訪には反対意見も強く、市民の間でも「9月にメラミン問題が起こってその補償もされていない」として現時点での来訪は反対の声が多かった。
それなのに来訪が強行された背景には、中国共産党側は馬英九政権が長く持たないと見てできるだけ早く協定を結んで台湾を縛り付けておく必要を感じたこと、そして馬政権もそれをうすうす気づいていて(実際、独立派元老の辜寛敏が前週に馬にあった話を8日になって暴露したところでは「この機会を逃すと永遠に機会はない」と馬は言ったという)急いだものと思われる。
しかも「両岸和解」を世界に向けて喧伝したいはずなのに、わざわざ米大統領選挙という世界的に注目されない時期に設定したのは、よほど急いでいたに違いない。

ともかく、陳の来訪は、拙速であるという見方は台湾社会では強かった。
案の定、台湾では対中国としては世界でも最も人数が多く、最も強い部類に属する市民の抗議の声があげられたのである。

ホテル前は夕方から抗議の民衆が詰め掛けていたが、午後6時ごろホテル正門から呉と陳が入った。
私自身は6時半に現場に向かったが、不思議なことに警官のほとんどは遠巻きに見ているだけで、積極的に民衆を排除したりはしなかった。これは、おそらく前日4日にこのホテルと国賓飯店(アンバサダーホテル)周辺で起こった抗議行動に対する警察の過剰制圧行動が、社会から大きな批判を呼び起こしたことが大きく作用したと思われる。
正門前ではチベット人と支援グループが風刺劇を行っていて、緑の台湾人旗を振って中国に抗議する人が多かった。
同ホテルは車の出入り口が4箇所あるが、最初は正門前だけ群衆が集まっていたが、後で人も増えるにつれて分散、4箇所とも包囲した。
ところが、普通は夜の宴会が終わる8時あるいは9時になっても抗議対象らしきものは現れない。一部ではもう去ったのではという声もあったが、抗議の人波は収まらなかった。
私自身は翌朝早くに取材予定が入っていたので、11時には引き上げた。しかし実際には帰宅しても興奮していたので、現場にいればよかったと思う。

家でテレビを見ていたら、実際には午前2時10分過ぎまで、陳は足止めを食らわされていたようだ。警官たちも積極的な排除行動を行わず、ようやく午前2時過ぎになって本格的な排除を行い、陳らはホテルを脱することができたようだ。
つまり、普通の終了時間8時を基点として、6時間強にわたってホテルに足止めを食らわされたことになる。陳は恐怖しただろう。
しかし、これが自由な市民社会・台湾なのである。中国のように、幹部が特権ですべての道を何の障害もなく通行できる社会とは異なるのだ。

だから、AP通信はこう書いたらしい。「台湾と中国は国が違うばかりでなく、宇宙さえも違うようだ」。


5日午後7時20分ごろ、リージェントホテル正門前、チベット人の風刺劇


5日午後9時50分過ぎ、リージェントホテル裏門

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