月光院璋子の映画日記

気ままな映画備忘録日記です。

「ディファイアンス」(「Defiance」)

2009年02月13日 | ◆タ行&ダ行

監督は、エドワード・ズウィック監督
日本人から観るとちょっと時代考証がヘンだった「ラスト・サムライ」でも、ディカプリオを死なせる「ブラッド・ダイヤモンド」でも、ラストの緊張感ある場面で静かに感動を呼び込むズウィック監督。
その仕上げまでの撮影を担当しているのは、ユダヤ人たちの森での暮らしの映像を戦闘シーンに負けない映像美で映し出したエドゥアルド・セラ・・・「真珠の耳飾の少女」は忘れがたい映像でしたね。そして、本作で重厚な交響詩のような音楽を担当していたのは、ジェームズ・ニュートン・ハワード
こうしてみると何と言っても硬派なスタッフという印象です。



1941年、ナチ政権下のユダヤ人強制収容所から脱出したユダヤ人たちがレジスタンスに合流したという話は聞き知ってはいたが、これほど多くのユダヤ人が脱出し隠れ住んだ森があり、そこで終戦までそして終戦後も生き続けた人々の物語があったなど信じられない思いで観ました。



本作は、親衛隊SSによるユダヤ人狩りがドイツ国外にも及び始めた時期、彼らが銃を手に自らの生存と自由を賭して戦ったという史実を忠実に再現したものだというだけあって、007のイメージとは程遠いダニエル・グレイブを始め皆かなり地味です。(もっとも、ダニエル・グライブ自身、もともとがアクション俳優ではなかっただろうと思いますが、007での魅力を本作でも発揮しているといえるかもしれませんね。)
アクションや戦闘シーンを期待していい映画ではないけれども、そうしたシーンが淡々と撮られているだけに実にリアリスティックな印象で、そこが共感を呼ぶエンターテイメントに仕上げているのかなと感じました。



そこで、銃を持って戦うことを決意した男たちは、普通の男たちでした。



このハレッツという人物を演じているのは、アラン・コーデュナー。森での暮らし・・・・、神への祈りや射撃訓練のシーンなど、さながらケビン・コスナーの「ロビンフッド」を思い起してしまったくらいで、特に射撃の訓練シーンには共通するものがあるように思いました。

デファイアンス・・・プロテストとは違う意味での「抵抗」という意味。人間の自由や尊厳を抑圧し奪うものに対して危険を無視して挑むほどの抵抗を意味する言葉です。

こちらが、妻子もナチに殺害された弟のズシュ・ビエルスキ。
リーヴ・シュレイバーが好演しています。

いいキャスティングだと思いました。
兄のダニエル・グレイブと戦法に対する考え方の違いから反目し、喧嘩して森を去りソ連軍と行動を共にすることになるのですが・・・・当時のソ連の赤軍もドイツ軍と闘っているのであり、ユダヤ人を守るために闘ってくれているわけではありません。

誰もどこも守ってはくれないというユダヤ人の歴史を思うと、何だか現イスラエルの軍事行動の心理的背景と重なって感じられてしまいます。
この森でも、彼らは、自分たちの生存権を死守するために、つまり生きるため生きていくために戦う道を選んでいく。
けれど、森での厳しい暮らしは難題だらけ・・・・

トヴィア・ビエルスキ(兄)=ダニエル・クレイグはナチに妻を殺害され、森に逃げてきたユダヤ人たちのリーダー的存在。
両親のみならず愛する妻もナチに殺されているという人物。
しかしながら、007とちょっと重なる設定ですが、復讐心を抱きながら強い意志と戦闘力を持つ男などではなく、現実に存在した普通の男性・・・・。ゆえに、そこには多くの人間的な側面が見え隠れし、まさに普通の男としての迷いや苦悩や弱さが共感を呼ぶのではないでしょうか。
そんな彼がリーダー的存在となっていくときに、その能力や資質に不満や疑問を投げかけられ異議が出されたり・・・・
実にリアルな人間関係の襞というか綾というか、そういったものが描かれているために観ているこちらもその場にいる一人になったかのように感じられてきます。

ぎりぎりの中で生きて戦う彼が森の暮らしの中で出会い求め合う女性を演じているのはリルカという収容所から逃げてきた女性。
アレクサ・ダヴァロスという女優ですが、音楽を学んでいたという経歴の感受性の豊かな女性で、彼をまっすぐに見つめる青い目が印象的でした。

ただ・・・・、仮にそれが事実だったとしても、ダニエル・グレイブに白馬に乗って人々に演説させるのはやめて欲しかった。何だか北の将軍様を思い起こされてしまって。。。。

そして、
兄弟の中で一番下のこちらの弟。



どこかで見たような・・・・

誰だろう・・・・と見入ってしまうほど好印象だったこの俳優。
このビエルスキ兄弟の末の弟アザエルを演じている青年が、あの「リトル ダンサー」のジェイミー・ベルだとは気付きませんでした・・・

彼が森で挙式するカップルを演じるのですが、
相手の可憐な少女ハイア役を演じているのは、
ミア・ワシコウスカという若手の女優です。
これも違和感のないキャスティングだったなあと。

史実の重み、そして事実の忠実な再現に意を砕いたという制作姿勢が、本作を地味ながらいい意味でのエンターテイメント性のある戦争映画にしているのだろうと思います。

ラストに静かな感動を集積する仕掛けをするエドワード・ズウィック監督、本作でもその辺は踏襲されているように感じました。
これを機会に、この映画で描かれた3兄弟の史実について、
じっくり知りたいと思いました。

 


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