むかし、むかし、あるところに「もいち」という名の、
たいそう食いしん坊のきつねがおった。
もいちは、仲間から「もいちどん、あっちにうまいもんがあったぞ」
と聞けば出かけていって食べ歩き、
「もいちどん、こっちにもうまいもんがあるぞ」と聞けばまた、
出かけていって食べ歩く、
というなんとも食い意地の張ったきつねじゃった。
ある冬の寒い日、もいちは風のうわさで気になることを聞いた。
そのうわさとは、聖天山というお寺の近くに、
それはそれはおいしいおいなりを食べさせてくれる店がある
という話じゃった。
その話を聞いてからというもの、もう、もいちの頭には寝ても覚めても
聖天山のおいなりのことしか浮かんでこなかった。
「食べたいのう。いったい、どんなおいなりなんじゃろう。」
「今はまだ寒い時期だ。暖かくなったら出かけてみたいのう。
早うあったかくなんねえかのう。」
そんなことを考え、日々もんもんとして暖かな春を待っておった。
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春の暖かな日差しの中、もいちは朝早うから聖天山を目指して
自転車に乗っておった。
そう、今日はあの念願のおいなりを食べれる日、
ちょっと遠いけどおいなりが食べれると思えば、足も軽くなる。
ただ、出かける時に仲間から聞いた話が少し気にかかる。
それは「いたちがきつねを捕まえようと狙っている」ということじゃった。
でも、もいちの頭にはおいなりのことしか浮かばない。
そこで、気を利かせた仲間のうーどんが、
いたちの好物、麻凛堂のブレドを持たせてくれた。
「もいちどん、もしいたちに襲われたら、このブレドを渡すんだよ。
このブレドは浦和でも人気の食べ物なんだ。
絶対にいたちも食べたがると思うよ。そのすきに逃げればいいんだよ。」
こころやさしいうーどんにお礼を言った。
そうして出てきたのだった。
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もいちは、念願のおいなりを食べることができ、
ご機嫌で帰ろうとした時だった。
聖天山の山門の陰になにやら怪しく動く物影が・・・
「さては、仲間の言っていたいたちでは?」
警戒しながら近づいていくと、やはり、そこにはいたちがいた。
でも、よく見ると、なんとも品のある白と黒のいたちではありませんか。
ここで何をしているのか、話を聞いてみると、
あまじょっぱいおいなりの食べ過ぎで、まいっているとのこと。
口直しに麻凛堂のブレドを勧めると、たいそう喜んでくれ、
お礼にと言って聖天山のおいなりは、
他にも2店舗で買えることを教えてくれました。
もいちは、帰ろうとしたところでしたが、
大好物のお店があと2軒も有ることを知って大喜び。
仲間へのお土産に買って帰ることにしました。
白と黒のいたちさん達にお礼を言って、
仲間達のお土産をいっぱい抱えたもいちは、
なんだかしあわせな気持ちでした。
また、いたちさんと会えるといいな。そんな気持ちでした。
めでたし、めでたし。
追伸:もいちは、仕事を休んで、おいなりを食べに出かけました。
しかし白と黒のいたちさん達が気になります。
ブログ界では、カリスマ的存在なんですが・・・
まあ、とりあえずは、見てくだされば、
いたちさんが何者かわかります。