世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

オラブ①

2017-11-26 04:12:53 | 風紋


冬の日々は穏やかに過ぎていった。

エマナのほかにも、3人の女が無事に子供を産んだ。それは恵みの少ない寒い冬の日々を、明るくしてくれるいいことだった。

赤ん坊は、アルカラの恵みをこのカシワナ族の村に持って来てくれるのだ。大事に育てれば、皆を喜ばせるいいやつになってくれる。

アシメックも赤子を見に行った。族長として、新たに村に加わったものはちゃんと覚えておかねばならない。

エマナのところにいくと、エマナはアシメックを見てうれしそうに眼を輝かせた。そして子供を抱いてくれとせがんだ。アシメックは喜んで抱いてやった。

小鳥のように軽い子だった。生まれてすぐに目があいたんだよ、とエマナが言った。かわいくてしょうがないというように。アシメックは子供の愛らしさをほめ、がんばったエマナをほめてやった。エマナは本当にうれしそうだった。

エマナに赤子を返すと、エマナは本当に愛おしそうに赤子を抱いた。その顔を見て、アシメックは感慨を受けざるを得なかった。どんな女でも、子を抱く時の笑顔は神のようにうるわしい。

エマナの家を出ながら、女はいいものだ、とアシメックは思った。子を産んでくれる。大事に育ててくれる。今、村のために働いてくれている男も女も、みんな女が産んで育ててくれたのだ。大事にせねばならない。




この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« イメージ・ギャラリー⑧ | トップ | オラブ② »
最新の画像もっと見る

風紋」カテゴリの最新記事