世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

君子は器ならず

2013-03-29 03:15:15 | てんこの論語

子曰く、君子は器ならず。(論語・為政)
先生はおっしゃった。立派な人物というのは、何かの役に立つ道具のようなものではない。有能であるというよりは、愛そのものの体現なのである。

   *

以前、別館ブログで「半眼の星」というエッセイを書いたことがありますが、これも似たような内容です。その時扱った言葉は確か、「政をなすに徳をもってす。たとえば北辰のそのところにいて…」でしたね。

わたしはその言葉から、「北辰制」などということばを考えてみたのですが。要するに、愛を体現することのできる、徳高い、すなわち深い教養と高い愛を持った人間を北辰として真ん中におき、それを中心として、高い能力を持った人々が集まって政治を運営していくと。
これには、前にわたしが小学校のPTA会長をしていたときの経験がもとになっているのですが、それをひな形に、政治の理想的形として、「北辰制」という言葉を思いついたのです。まだ言葉だけで、それをどういう風に作っていくか、運営していくかなどは、まったくわかりません。わたしは女性で、夢のごとき言葉を織る詩職人であり、政治は専門ではないので、それにぴったりと思える言葉を生み出すことしかできない。

実際に政治に、北辰という考えを取り込んでいくには、わたしよりもほかの、もっと政治に卓越した知識と経験を持つ人の力が必要だと思っています。

北辰とは、総理大臣や大統領や議員など、政治的な技術の持ち主ではありません。プロじゃない。ただ、愛ゆえに皆を愛し、皆の存在の意義を光らせ、皆の本当の力を引き出すことのできる、高い人格を持った、すばらしい人のことなのです。北辰がいれば、才能ある人が、真に才能を発揮することができ、それによって、正しく政治が運営されていくようになる。

北辰は、その人の能力的に有能なことよりも、その人の愛の深さ、高さが、大切だ。国を愛し、国の人々を愛し、国をなんとかしてくれる有能な人を愛し、それゆえにすべてに愛が行き渡り、命の本当のみずみずしい生命力が花開き、人間の本当の力が目覚めてくる。そのような深い愛の体現たるものが、君子であり、北辰なのです。

しかし、この「愛」というあまりにも高く、繊細な概念を、現実の政治の中に、取り込んでいくのは、相当に難しいでしょう。北辰を選挙で選ぶことはできない。その人の愛の深さを、どうして知ることができるか、どのようにして政治に取り込んでゆくことができるのか、実に私には皆目見当もつきません。だが。

わたしは、それをやってくれる、とても力のある天使か人間が、助けにきてくれると信じている。人々のために、もっともよき人を選ぶための、方法を、作ってくれる素晴らしい人がこの世に生まれてきてくれると、信じている。

わたしは甘い人間なので、こう考える。でも、わたしの願いは、本当にかなうのですよ。

子曰く、魏魏乎たり。舜、禹の天下をたもつや、而してあずからず。(論語・泰伯)
先生はおっしゃった。ああなんとすばらしいことだ。舜や禹の時代の政治は。彼らがただ、君臨していたというだけで、国は平和で美しかった。

その人がそこにいた、というだけで、すべてのことがうまくいき、みなが平和に楽しく暮らすことができた。孔子の理想の政治とはこういうものだったのです。北辰とは、君子とは、高い政治的技術を持っていると言う人ではない。高い徳性を持ち、すべての人を愛で豊かに満たすことのできる人のことなのだ。その愛があってこそ、多くの人が、自分の本当の力を出すことができる。そしてその、みんなの力で、国は正しく動いてゆくことができる。

理想論と言われて、軽んじられることも多かった、孔子の言葉ですが、そう、結局はここに帰ってくる。どう考えても、これは正しいことだからだ。本当に、結局は、正しいものが勝つ。たとえ、三千年、四千年と時間がかかろうと、物事はすべて、正しい理想に帰ってくるのだ。

民主主義は今、堕落と荒廃の坂を転げ落ちている。実際わたしは、オバマの次の大統領がいるのか、未来に希望を見ることができない。もう民主主義は限界を超え、ただ、今もやっているだけだという空っぽの制度になっているような気がする。

これからの未来が、どう変わっていくのか、どう動いていくのかは、わからない。ただわたしに言えることは一つ。

わたしはひとつの、あばら家を建てた。

そして新しい国は、種をまいた土地から一本の楠が盛り上がってくるかのように、いつの間にかできてくる。




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