アシメックは、おそらくアロンダを狙ったのだろうと考えた。オラブは、カシワナの女にはみんな嫌われている。子供のころからいやらしい悪戯ばかりしてきたからだ。オラブもそんな女たちには冷たかった。だがヤルスベの女にはそんな事情はない。痛いことをしたいと思っても抵抗はないだろう。あんな美女ならなおさら追いかけたくなるのに違いない。
宝蔵に行くと、アシメックはエルヅに言って、鹿皮と魚骨ビーズの首飾りをいくつか出してくれと言った。エルヅは宝蔵の中から、一番いいものを取り出して、アシメックに渡した。
「かなりのものだな。これで何とかしてくれるといいんだが」
「フウロ鳥の羽飾りも出そうか。きれいなのがあるよ」
「ああ、たのむよ」
アシメックはエルヅから渡された宝をもつと、自分の家に帰った。家の中に入ると、コルがアシメックに大きな干しキノコを持って来た。
「どうしたんだ、これ」
「さっきサリクが持って来た。詫びの品物に使ってくれって」
「ほう」
アシメックは干しキノコを受け取った。珍しいキノコだった。珍味を好まれるが、山でもあまりとれない。サリクが見つけて、大事にとっておいたものだろう。アシメックは目が痛くなった。涙が出そうになると、いつも彼はそうなる。
みな、心配してくれているのだろう。アシメックはありがたくサリクの気持ちを受け取ることにした。