ルネ・マグリット、20世紀ベルギー、シュルレアリスム。
マグリットはシュルレアリストの中ではまだ見られる画家である。エルンストなどは狂気に落ちているが、まだこれは理性の中に残っている。
若い男の顔を青い林檎が隠している。林檎は原罪の暗喩でもある。その林檎と男を組み合わせるとき、妙に安堵感を覚えるのは、それは本来男のものであるからだ。イヴの誘惑も、イエスの殺害も、男がやったことだからである。逃げてはならない罪から逃げていたことが自分の中に作る呵責を、この絵は幾分癒してくれるのだ。これが正しいのだと。