世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

いがぐり

2013-04-16 03:33:37 | 詩集・貝の琴

ちいさないがぐりの形した
かわいい人形を買った
修学旅行のおみやげに
おかあさんに あげようと思って

よろこんでくれたら
うれしいなって
思って 家に帰ったら
箱ごと渡した
でも おかあさんは
特に興味もない様子で
さっさと隅っこにおいて
それきり忘れたみたいだった

そんなもの買ってきても
どうせわたしの稼ぎなんだからと
言われた覚えがある
それはかなり わたしの心臓深くに
棘刺さって まだ抜けない

悪いことしてしまったのかな
馬鹿なことしてしまったのかな
どんなにがんばっても
よいことができないのはどうしてだろう
なんでわたしはいつも へまばかりやるのだろう

そんな思いが 日に日に
わたしの心に塗り重ねられていく
墨のように 黒い影が深まっていく

忘れたつもりだったけれど
今でも鮮明に思い出すのは
まだ癒えていないからだろう

痛いことは終わればもう痛くないから
すべて忘れて 明日に飛び込もう
わたしはそれでずっとやってきた
そうしたら 気付いた時には
わたしの心臓はまるでいがぐりのように
棘だらけになっていた
刺さった棘は 無理に抜こうとすると痛い
とても複雑に絡みついていて

甘すぎて優しすぎる自分の弱さは
こんな風に 皆に嫌われてできたのだと思う
わたしはよくたくさんの人に嫌われた
特に悪いことなどした覚えはなかったが
わたしがいるだけで 人は気持ちがいやらしくなって
その自分のいやらしさがいやで
人はわたしに気持ちをぶつけてくるのだった

心臓の棘は 時間をかけて
ゆっくり抜いていかなといけないらしい
それにはもう 残りの人生すべての時間がかかるらしい
わたしは 自分ではわからないが
ほんとうに 大変なことになっていて
とても深く傷ついているらしいのだ
心が崩れないように 誰かが支えてくれているのには
本当はだいぶ前から気付いていた

いいんだよと言った あのときのわたし
痛いことは終わってしまえば痛くない
すべて忘れて ないことにして
明日の光を浴びるために前に進もう

愚か者とはわたしのことか
彼は 少しは自分を大事にしろと
言いたいのだろうな




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