世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

さくら さくら

2013-04-04 06:40:47 | 詩集・貝の琴

さくら さくら
れんぎょう
ゆきやなぎ

花が 愛したいと
思うと 風が 来る
神さまの すきとおった
指のように

なずな なずな
ひめきんぎょそう
しろい すみれ
おらんだみみなぐさ
ヒマラヤすぎは 青い

神さまの 指は
やわらかな ガラスでできていて
せんぼんもある
風の中を 魚のように飛んで
花をゆらしにくる

はやくゆかないと
愛したいのに 動けない と
花が小さな涙を落とすから

からすのえんどう
たんぽぽ なのはな
はなかいどう
もくれんが 風に散る
白い花びらは
小さなお人形の
ブラウスをつくるのに
ちょうどいい 布

きれいだね
去年よりずっと きれいだね
わたしを 深く愛してくれる

去年は 犬と一緒に歩いた
花の散歩道を
今年は ひとりで歩く
時は 風といっしょに流れてゆく
記憶の 小さな割れ目に
すいせんの香りを塗り
わたしは何かをしばし忘れる

ながみひなげしは
今年 咲いてくれるだろうか
去年は 少ししか咲いてくれなかった
何かつらいことがあったのだろうか
花はときどき
種はあっても 自分の意志で咲かないときがある
今年はいっぱい咲いておくれ

さくら ゆきやなぎ
せんだんはまだ はだかの枝
くすのきは
月の空




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする