あなたの口は
まるで ケーキのようだ
声はすがすがしい シフォンの手触り
強すぎず 弱すぎぬ かすかにも確かな
甘いヴァニラの香り
雪のようにとけていく
清らかな生クリーム
水晶の薔薇の飾りが
ところどころに灯っている
それを食べるだけで
人々は幸せに酔う
(ああ あなたには
そういうふうに
わたしが みえるのですか)
ええ そうです
あまりにも かわいらしい
見ているだけで
めまいをおこしそうですよ
(そうかもしれません
わたしは はるかな断崖の絶壁を
羽一枚で 上ろうとしているようなもの)
ふ
(おわらいにもなるでしょう
たしかに おろかものだ
わたしは)
ふ
わらえるものなら とうにわらっている
どこまでも やるおかたよ
わらえるものがいたら わたしがそいつの
首を落とす
(試練の天使よ
あなたの口は
まるで 虹の鉄だ)
ほう?
(色とりどりの鉄の牙を並べ
見事な詩を織る
美しいが 痛い
鏡の湖面のように静かかと思えば
その奥で熱い炎が煮えたぎっている
そのむごさは人の心臓を砕く
その口から あなたは鉄の嵐を吹き
人々の黒い嘘の眼を これ以上にないほど
正確に貫いていく)
ほう
ケーキと 鉄ですか
まことに おもしろいことをいいなさる
(まことに そのとおり
だが わたしはうれしい
あなたとこうして 話をできることが)
まことに そのとおり
わたしもですよ