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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

島よりの風

2011-10-27 09:28:10 | 詩集・貝の琴

永遠の透明な壁に囲まれた
小さな島にわたしはいます
混沌の海に小さく浮かぶ
虫のような島です

永遠は夜のような闇に
虹色につやめいて
尊い月の光を
わたしへの便りにして
ひそやかに
ことばを明かします

わたしは馬鹿なことをやりました
すばらしい命のすべてに
馬鹿のしるしをつけて
自分だけが尊い王になろうとしました
いえ 神になろうとしました

すべてが自分の思い通りになる
ただひとりの馬鹿になろうとしました
永遠の壁の向こうから
ひたひたという無音が響きます
聞こえるはずのない音です
それなのにひたひたと響くのです

あまりにも遠く離れてしまった
なつかしい愛の記憶から
遠くに見える月光を風にまぜて
今でも思うていると
だれかがわたしに伝えようと
していることを
わたしは感じます

心臓に塩を塗るように
わたしは今日もまた後悔の涙に濡れ
むせび泣くのです
すべては すべては
わたしが愚かでした
もはや
二度とは会えぬひとに
わたしも わたしも 伝えなければ

風向きの変わるのを待って
わたしの声は 
あらん限りの力をこめ
瀕死の蝶の吐息のように 
かろうじて ねじりだされ 
月光に濡れた静寂の琴を 
かすかに弾くのです

わたしも 愛していると
そのひとに 伝えたいのです





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2011-10-14 17:49:27 | 詩集・貝の琴

月天の丘の下を
馬鹿が転がっていく
ついに得た神の苦い御しるしを
なめながら 転がってゆく
あーいーを 馬鹿なものといった
馬鹿は 真実の苦みに
凍りつくほど震えながら
へらへらと笑い
いーやーだー という

つうらあい つうらあい
つうらあい
いーたーまーしーい いーたーまーしーい

積み重なった時の塩に
どっぷりと漬かって
あまい あまい あまいものに
おれはなりたいという
神よ
全世界の神よ
ゆうるうしいたあまあええええ
ゆうるうしいたあまあええええ

わるかった
わるかった
わるかった
ゆうるうしいたあまあええええ
ゆうるうしいたあまあええええ

つらい つらい つらい
つらい つらい つらい

ゆうるうしいたあまあええええ

銀の鈴を鳴らしながら
月下の砂丘に降りて来るものがいる
それがだれか
今は知りたくない
なんとなくわかっているが
決して知りたくはない

痛い馬鹿は鈴の音に背を向け
経のようにただくりかえす
ゆうるうしいたあまあえええええ
ゆうるうしいたあまあえええええ

どこにいけばいい
なんといえばいい
すべてを暗闇に塗りつぶして
なかったことにしたいことを
なかったことにしたい
だのに
月だけはそれを明々と照らしだす

(わるかった)
ことばにならぬことばを
肺の中にためこみ
鈴の音の去っていく気配を耳が探る
神の苦い飴をなめながら振り向く
月光の下に誰かがいたその輪郭が
かすかな匂いとなって残っている
おれは
ぜんぶ 馬鹿だ











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月照の生か 混沌の死か

2011-10-13 09:44:16 | 詩集・貝の琴

その道をゆくな
その道をゆくな
たとえ永久に近い時がかかろうとも
木片でつくられた不器用な人形のように
馬鹿にならなくてはならないとしても
今のおまえに
もっともよい道をゆけ
そちらなら必ず 月が照らしてくれる
生きてゆける

 つらい つらい つらい
 あんまりだ あんまりだ あんまりだ
 ぜんぶ ぜんぶ いやだ

その道をゆくな
その道は永久の道だ
決して目的地にゆきつくことのない
混沌の道だ
あなたは生きてゆけない
今まで自分が吐いてきた毒を
すべて口に詰められて
永久を測る時計の砂の中で
じっくりと罪に燃やされていく
おわりのない永い時を
あなたは死者の死者として
石のように打ち捨てられる
自分自身によって

屈辱に耐えよ
苦いプライドは捨てよ
生きることだ
生きてさえいれば
あなたの魂はいつか必ずゆき着く
ゆくべき所にゆき着く
永久に近い道ならば
どんなに永くとも 苦しくとも
終わりは来るのだから

月照の生か
混沌の死か
さあ今 自分で決めたまえ











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よい勉強

2011-10-03 17:09:57 | 詩集・貝の琴

目の前のひとが
苦しそうにして
つらい と
心の中で言っているのに
平気でいやなことを
言えるひとは
たぶん あほです

心の中の細やかな感性のひだが
まだ未熟なのです
つらい思いをしたことはあっても
それを自らの糧にせず
ずっと人におしつけてきたんでしょう

いつも だれかが悪いと
ばかりいっている人は
まだ 魂の未熟な人です
人を馬鹿にする言葉は
たとえその人が悪くても
不注意に言ってはいけないのです

「言葉」が強い作用を持っている
魔法なのだということを
勉強している人は
ずいぶんなことは言いません
あまり きついことは言いません
言われた人の気持ちが
苦しく伝わってくるからです

でも勉強の進んでいない人は
平気で 人を馬鹿にするのです
どんな小さなことでも
簡単に馬鹿にします
自分以外の人にも
感受性をもつ魂があることを
まだよくわかっていないのです

勉強のすすんでいない魂は
すべてを馬鹿にします
そして自分が一番偉くなるはずだと
いつも思っています
自分以外の人間は
何にもわかっていないと思っています
なぜって
みんなが自分の思い通りにならないからです
だから すべてを馬鹿にするのです

心の未熟な人に出会ったら
まずはこれから忍耐を勉強するのだと
受け取りましょう
つらいつらいとばかりは思わず
時間をかけてでも
自分を強くすることを勉強しましょう
その人の癖を見つけ
こっちの心が傷つかないように
上手によけることを学びましょう

こんなことは 実のところ
たいていの女の人が
ずっとやってることですけどね

よい勉強ができますよ









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マトリョーシカ

2011-01-29 09:21:44 | 詩集・貝の琴
かわる
マトリョーシカのように
こどもたちをつつんでいたものが
なくなる

歩きだした山は
こどもたちにも
容赦をしない

すべてを
正しい形にもどそうとする

こどもたちさえ
まちがっていたのだ
この世界は

さわいではいけない
うらんでもいけない
おんなのこも
おとこのこも

何千年もの間
辱められていた正義の神が
もっとも正しいことをした
その結果なのだ

すうっと いなくなる
たましいが
ネズミのように
逃げだしていく 

こどもたちは
たえねばならない
ふりむかずに放っておいた
重荷をもう背負わなければならない

逃げてはいけないのに
こどもたちは裏切る
全部捨てて 逃げていく














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きのうまで

2011-01-28 17:25:00 | 詩集・貝の琴
きのうまであったものが
今日はもうありません
神さまはとてもおやさしく
とてもおきびしい

いけないものはいけないと
いうのではなく
さいごまでゆるそうとなさった
かべを
わたしたちがこわしたのです

何がおこりそれがどうなるのかは
神さまの御胸にしまわれています
わたしたちにできることは
そのときがきて驚かないことだけです

どうすればいいかは
わかりません
神にいのりましょう

なくしたものは
もどってきません
もともと自分のものではなかったからです
とりもどそうとしてはいけません
すべては消えていきます

ただひとつ言えることがあるなら
どうか神さま
あわれみを





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山が

2011-01-28 12:27:13 | 詩集・貝の琴
山が 歩きだす
世界を燃やす薪を割るために
黄金のぶどう酒に酔っていた世界を
一本の太い釘で殺すために

真実の正義に
誰が道化の衣装を着せた
真実の愛を
誰が汚辱の鎖で縛った

一杯の盃に酒を満たすように
おまえはだれも知らないうちに
世界に虚偽の水を注いだ
そうしてつくった
おまえの世界の破壊は
幽霊のように静かに訪れる

山が 歩きだす
赤子をあやす
子守唄のように
静かに
おまえのもとにやってくる






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かわうそ

2010-11-29 15:19:19 | 詩集・貝の琴
銀河の気層を羊毛のようによって
神様はDNAをおつくりになった
そしてそれをレースのように編んで
神様は子らのためにケープをおつくりになった

ところが、いたずら好きのかわうそが
神様のケープをみんな盗んで
全部、ひどい人にやってしまった

そのケープを着ると、なんとまあみな
それはかわいらしく、りっぱに見えるものだから
ひどい人たちはそれをみなほしがったのだ
そしてひどい人たちはみな
美しくなった自分を喜んで
まるでそれが美しさの特権であるかのように
かげにおもてに
ひどいことをした

神様は、たいそうお怒りになった
それで、ひどい人たちから、もう
ひとりのこらずケープをとりあげることになさった

いったい何が欲しかったのか
いったい何をしたかったのか
真実の津波がせまってくる 
ケープに隠した本当の心を
神様が暴きにいらっしゃる

とうとう暴きにいらっしゃる

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2010-06-04 12:19:06 | 詩集・貝の琴
ひとつの山を越えたら
また 新しい山が目の前にそびえる

ぼくは 笑う
死ぬほどがんばってその答えは
永遠に ぼくは ぼくだということ
目の前のその山に向かって
もう歩き始めている

前よりもはるかに高く
はるかにけわしいあの山をのぼるために
ぼくはまた ぼくを生きはじめる

ずっと信じてきた この「ぼく」は
あたらしい光を歌いながら
まっすぐにすすんでいく

だいじょうぶかな できるかな
しめった不安がぼくの胸をぬらす
でも そのとき
友達がぼくの耳にささやく
ひとりじゃないよって

できるよって





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自由

2009-10-13 11:55:33 | 詩集・貝の琴
わたしは、わたしだ。
わたしは、自由、だ。
わたしは、愛、だ。
愛ゆえに、自由、だ。

虫籠の中の、蝶を、
青い野に解き放つことができる、
その自由があるように、
人には人を愛する、
自由が、ある。

あなたが、苦しいのは、
あなたが、あなたでは、ないからだ。
そのくびきが、
あなたの自由を、はばんでいるのだ。

反抗は、あなたの苦しみを、
長引かせるだけだ。
あなたは自由だ。

あなたは自由なのだ。


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