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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

青い地球

2012-10-09 07:16:22 | 詩集・貝の琴

青い地球の青い毛布を
ちょいとめくると
ほら人間が隠したものが
いっぱい出てくるんだよ

濡れたままの おねしょのシーツだとか
食べたふりして残した にんじんだとか
壊してしまった おとうさんのコップだとか
十二点の 算数のテストだとか
隣の子の机から 消しゴムを盗んだ時の
小さな心の痛みとか

みんな捨てて こんなところに
隠してあったんだね
さてとわたしは どうしよう
放っておくわけにもいかないから まあ
とにかくシーツは洗濯して 干して
にんじんは腐ってしまったから 埋めるしかないね
お父さんのコップは なんとか直してみよう
この算数の点数ときたら どうだろう
一応教えておくよ 誰だか知らないけど
いちたすには ろくだからね

さてこの小さな心の痛みは どうしよう
あらよくみたら たくさんあるなあ
同じようなものが
小石のようにたくさん 転がっている
ひとりではとても 掃除できない
みんなに頼まないと

みんな 手伝っておくれ
地球を きれいにするのを



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星の言葉・5

2012-10-08 07:44:05 | 詩集・貝の琴
今日のわたしは 少々憂鬱だ
昨日悲しいことがあったし
悲哀の蜂が ぶんぶんと
体の周りを 飛びまわるものだから

でもこんなときに限って
星がわたしのところに
また どうか人々に伝えてくれと
下りてくるものだから

わたしは憂鬱だから いやだといっても
そう悪いことではないかと思えたのだが
でも 性分というのは
どうしようもないので
ああ いいですよと 言ってしまうわけで

星はわたしの気持ちがわかって
つらそうにしていたけれど
やはり義務というか使命とかいうものが
あるらしくて 言うのだ

どうか 伝えてください
人々に 伝えてください
もっと 生きるものを 大事にしてくださいと

たとえば
スーパーで買った魚を
まな板の上で うろこをそる時
それがとても むごいことだと
一度でも 気づくことができる
そういう感性を 学んでください
魚は苦しいのです 痛いのです
ああ だから人間は 魚のために
無量の愛をそそいでください

たとえば 
犬を もっと大事にしてください
犬は たとえ人間が 
どのような闇や愚に落ちようとも
真実の愛で愛してくれます
ですから お願いです
鎖を もう少し 長くしてください
散歩をもう少し 長くしてください
簡単に 殺さないでください
暴力を ふるわないでください
愛していると 言ってください
苦しみを わかってやってください

ここは 生きるものを
殺さねば 生きていけない世界
だからこそ 愛がナイフの刃のように
心臓に触れてゆく
その痛みは 電流のように
魂を刺してゆく
愛のナイフは 決して心臓を刺すことはない
けれども 何百度も突き刺してゆく

人々よ
人間は 万物の霊長ではありません
青いたまごの中で
すべての愛に育てられている
小さな 命なのです
あらゆる命が 人間を育てている
その愛に こたえるということを
もっと深く学んでください
愛の段階を もう一段上がってください
そのために一番初めにやらねばならないことを
ああ ひとつだけ いいます

それは 耐えねばならないことです
恥ずかしいということに
耐えねばならないことです
人々よ どうかわかってください

わたしは こうして
星の言葉を伝えた
以上が 星の言った言葉である
なお 星の言った言葉は
実際はもっと簡単で
いくつかの単語を並べた短いものだった
それを わたしが
わかりやすく 噛み砕いておいた
だから ここに書いた星の言葉には
わたしの表現力が影響している

そういうことも考えて
よく 読み下してほしいと思う




 



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びじん

2012-10-07 06:52:48 | 詩集・貝の琴

さて 今の自分はどんなやつかというと
まあ おんなで
あたまが そこそこよくて
かなり かわいい
うそじゃなく うぬぼれてるわけでもなく
ほんとにかわいいんだ
だって神様がそういうから


こういう状況で 何ができるかと
いうことを考えてみる
女で ほんとにあたまのいいやつは
自分のために ずるいことなんかしないよ
ひっそりとね 自分を影に沈めて
だまって そばにいてあげるんだ
それだけで 人を幸せにできるんだよ
ほんとにあたまのいい女の子は
そういうことができるんだ

きれいだということを
一番よいことのために使うんだ
やさしくほほえんであげるんだ
風のようによりそってあげるんだ
馬鹿なふりして 気がつかないふりをして
痛むところに そっと薬を塗ってあげるんだよ
だいぶ忍耐は必要だけど
そういうことができるのが 
ほんとにかわいい女ってものだから

ほんとのほんとに かわいい子は
ずっとこんなことを やっているよ
馬鹿なふりをして 頭の悪いふりをして
いいよ いいよって言って
どんなつらいときでも
ああ いいよって言って
全てを背負うのさ
それができるのが ほんとのびじんてものなんだよ



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十億匹の猿

2012-10-06 06:43:08 | 詩集・貝の琴

十億匹の猿が
神様の蔵から
ブルーベリーの実を一個盗んだ
そしてそれを銀行にもっていったら
なんと金貨で山ができたってさ

うれしくってうれしくって
猿はどうしたと思う
金の飛行機を作って
それで空を飛んだのさ
世界中を回って
珍しい宝をたくさん買いたいんだってさ

でも飛行場のちかくまで飛んできて
さて猿はふと気がついた
この飛行機 どうやったら降りるんだい?
猿はお互いの顔を見合わせていったものさ
え? え? え?
誰も知らないのかい? 誰も知らないのかい?

降りられなくて困った猿の飛行機は
空の上でぐるぐる回ってる
どうしよう どうしよう
このままでは燃料がきれて
飛行機が落ちてしまう
だれか 思いきって
飛行機をおろしてくれるものはいないか
金ならいくらでもあるから
飛行機を下ろしてくれ
でも猿はおどおどするばかりで
何もしない 何もできない

下から見てた人は言ったものさ
やあ 金の飛行機が飛んでいる
大きいね ぴかぴかだね うそみたいだ
何で降りて来ないのかね



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きみよ

2012-10-05 07:13:22 | 詩集・貝の琴

おどろくな きみよ
きみの すんでいる
きみの いえが
ほんの 五分のうちに
くずれさっても
おどろくな きみよ

なぜならそれは
さいしょから
きみのものではなかったからだ
きみよ どうかこのことを
しっかりと忘れないで
胸にきざんでいておくれ

きみのすむ その家は
ほんとうは ちがう人の家なのだ
きみのために
蜂の翅をもつプーカが
宝石の中に折りたたんで
盗んできたのだ
だからそれは いずれ本当の持ち主に
返さなければならない

きみよ おどろくな
なぜならきみはそれを 今は知らないから
そのきみの たいせつなたから
すべて きえてゆくことを
いつかそれを 知らなければならないときが
くるときのために 言っておく

きみよ すべてが
夢と消えても 驚くな
それは 最初からなかったものだから
本当の幸せは その中には
かけらもないのだ

きみよ きみよ
おぼえていておくれ
すべてをうしなったとき
これだけは言わないように
つらいと くるしいと いわないように
憎まず 涙を飲んで 耐えるように

ああそれでも 憎いときみがいうとき
きみを静かに 照らしてくれる月を 
せめて その愛を
あたりまえと 思うな
きみのために 涙を落してくれる空の
風にこめた愛のささやきにさえ
気付かずに 何もかもを見捨てて 
ひきとめる風を千切って 逃げるな




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神様

2012-10-04 07:16:27 | 詩集・貝の琴

君の幸せは 君がつかむものではない
君はすでに 幸せなのだ
でも今は それを言わないでおこう
いずれ君にも わかるだろうから
幸せとは 気づくものなのだと

野に倒れ込んで
やわらかな大地の胸に飛び込んで
風に自分をさらしてみる
自分にふれている何もかもが
虹のようにささやいて 愛で
何もかもを与えてくれるのが わかる

それがわかったとき 
君は幸せなのだ
幸せは君なのだ
君は幸せなのだ
愛が君を愛している

光を吸い込んだ宝石を雨のように散らして
赤ん坊のような笑顔で空を温めているのはだれ?
おまえがいるかぎり
どんなにかわたしは幸せだろうと
笑いかけてくれるあの大きな瞳はだれ?

知っている あれが
あれが
神様



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仮面

2012-10-03 07:00:22 | 詩集・貝の琴

にんげんが 自分の顔をささえている
その棒は 案外に 
もろすぎるものだ
金や銀の色を塗って
いかにも丈夫そうに見せているのだが
中はからっぽで ほんとうは
舞台の劇で使う偽物なんだよ

ああ 大切な人生のテーマを
書いた看板の縁を飾る薔薇の花が
ため息をついて教えている
嘘はおやめ
みな見抜いている

ああ にんげんが 支えている
重い石のような自分が
ほんとうは舞台用の
道化の仮面だと言うことに
いつ気付くのだい 君は
本当の君は
ジーザス・クライストのように
木に釘打たれて
ドライアードに抱かれて
ゆっくりと木に血を吸われているのだ

たましいを煮込む涙のスープの中で
ゆったりと温泉気分で
まどろみながら言っているのだ 君は

ああ 酒を 酒をもう一杯



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さみしさをみるとき

2012-10-02 07:33:35 | 詩集・貝の琴

さみしさを みるとき
わたしは いちめんの
みずいろの 水面の
上に 浮かんでいて
ためいきの ほそい糸で編んだ
白いレースの翼で
飛んでいます

水は静かで 広い鏡のようだ
わたしは 見えない糸に
空から つりさげられているかのように
あるいは 
飛んでいるまま 画像を止められたかのように
じっと動かずにいます

ああ 胸に巣くう熱い鳥が
ぐるぐる回りながら鳴いています
朱色の透き通った涙が
ほたほたと 水面に落ちます
すると一面の水は
まるで巨大な水琴窟のように

こおうん…

という音を たてるのだ
まるで わたしの魂を閉じ込めた
水晶の頭骨を 砕き散らすように

(目をとじなさい
というこえが きこえる
わたしは 目をとじる)

さみしさを みるとき
ふるさとを 思い出す前に
心臓に住む鳥を 毛糸で編んだ袋に入れて
眠らせてしまおう

そうすれば わたしは
まだ 生きていられるのだろう



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パキラ

2012-10-01 07:27:29 | 詩集・貝の琴

春まだ遠き頃
咲いたちいさな水仙の
こおりのため息を
砕いて 溶かした
愛に 月の光を
こめては 星のように
飛んでゆこうとする 思いの
どこにゆけばいいと
問う声に
緑のパキラが答える
静かな風に ついておいき
道はすべて
同じところにむかっている
晴れた空の 底なしの青の中に
飛びこんでお行き
まっさかさまに 水に落ちて行く
銀の魚のように


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マルス

2012-08-25 06:27:54 | 詩集・貝の琴

はてもない灰の荒野に
人間が虹の色で描いた
幻の町を
少しずつ 神様が描き直しています

汚れてしまった額縁を
布で拭いて きれいにしています
偽物の貝殻の飾りを
こっそり 本物と入れ替えています

人間は 幻の町を見て
人間はすごいなあ なんでもできる
と 思っていますが
知らないところで 神様が
どんな苦労をなさっているか
まるで知りません

虹は美しいけれど
すぐに 消えてしまうものだから
神様が 描き直さないと
町は すぐに消えてしまう

でも どんなに苦労して描き直しても
やはり 人間がまた描いてしまうものだから
どうしても、絵のところどころが崩れて
遠いはるかな 星の砂漠の
真実が漏れ見えてしまう

マルスの星の砂漠は
まるで人間の胸に広がる
虚無の風の荒野のようだ

真実を見た人は 
本当の町を作るための
本当の絵の具を作るために
額縁を抜けて 額縁のない
本当の世界を 歩き出す



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