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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

オリンピアード

2012-08-13 10:49:08 | 詩集・貝の琴

よきものは あしきもの
ただしきものは あやまちたもの
たかきものは ひくきもの
歓喜の歌は 忘却に埋めた 
彼方からの 青い呼び声

オリンピアード 
やっと終わったか

遠い未来の者が
おまえを見るときの驚愕を
だれもが今知らぬことは
幸福やもしれぬなれど

痛き秘密の証しよ
今宵見る夢が
苦しみに歪むのは
まことに幸福と思うておるがよい





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人間は

2012-08-08 07:25:07 | 詩集・貝の琴

人間は いやなことをするのが
いやだから
いやなことをするんです

人間は 悪いことをするのが
いやだから
悪いことをするんです

そんなに いやなことをするのが
悪いことをするのが いやなら
なぜ いやなことを 悪いことを
するのを やめないのですか?

すると悲しい人はこういうのです
「そんなことは馬鹿だ」 と

で 馬鹿とはどういう意味ですか と問うと
すっと後ろを向いて 逃げていくのです
さてわたしは 彼のあとを追いかけて
もう一度聞きます

どうして 人間は 悪いことをするのですか
「悪いことをする自分が いやだからです」
それならなぜ 悪いことをやめないのですか

するとその人は 速足で逃げながら答えるのです
「馬鹿だからです 馬鹿がいやだからです
自分が馬鹿なのがいやだからです
みんなを馬鹿にしないと ぼくひとり
一番の馬鹿になってしまうから
誰も知らない 秘密の暗い場所で
いっぱい悪いことをして
みんなに意地悪をして みんなを馬鹿にして
ぼくだけが偉いことにして
ぜんぶぼくのものにするんです」

「そうしたら 悪いことをする
馬鹿でいやな自分なんか
どっか遠い山奥にでも捨てて
何もかも新しい
すっかりいい自分になり変われるって思うんです」

「だから悪いことをするんです
そして 悪いことをして
気分が悪くて いつも苦しくて…」

なぜ 悪いことをやめないのですか?





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星の言葉・4

2012-08-02 07:45:14 | 詩集・貝の琴

今日も今日とて
わたしが書斎で
物語など書いていると
また誰かが窓をとんとんとたたいて
わたしを呼ぶ声がするのだ

わたしは ああまたかといって
窓をあけると
そこには赤い星と 青い星が二つ
くるくる回りながら
何やら少々いらいらしているような様子で
わたしに言うのだ

今回も人間に言ってもらえませんか
ほんとうにわたしたちは
困っているのです

わたしがまた ああいいですよというと
赤い星が いっそう赤くなって
青い星は いっそう青ざめて
声を合わせて わたしにあることを言って
また空に帰って言った

星との約束なので
わたしはこれをここに書かねばならない
読む人は少々気分を悪くするかもしれないが
約束したことなので 仕方ない
星はこう言った

人間よ なんでもやっていいものではないのだ
ものには加減というものがあるのだ
いい加減に馬鹿なことはやめなさい

わたしは約束通り 書いた
言っておくけど
これは 星がわたしに
人間に伝えてくれと言って
言ったことだ
多分星は 人間に
努力することはいいことだが
愛がたらなすぎると 言いたかったのだろう
もう少し みなを愛してくれと 
言いたかったのだろう



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みよちゃん

2012-07-19 06:13:45 | 詩集・貝の琴

みよちゃんがお嫁にゆくとき
おとうさんは みよちゃんに言ったそうだ
おまえの のちのちのためのことを考えて
あそこに嫁にやるから
わかってくれよ

みよちゃんは お嫁にいったさきで
下働きのように働かされた
お姑さんは意地悪で 口も悪くて
自分は何にもしないで遊んでばかりで
家のことはなんでもみよちゃんにやらせて
しまいにはおむつの交換までやらせて
死んでしまった

一緒になった旦那さんは
いつもいばってて
みよちゃんに文句ばっかり言ってた
醤油の位置が悪いだとか
みそしるがぬるいだとか
みよちゃんがどんなにきちんとやっても
旦那さんはつまらないことでいつも
みよちゃんを馬鹿にして叱るのだ

みよちゃんは お姑さんと旦那さんに
好きなだけこき使われて
たくさんの苦労をしていた
一度だけだけど 親を怨むようなことも言った
なんでこんなとこに嫁に来させたのかと

そして今 みよちゃんは病院で
酸素のパイプを鼻につけながら
眠っている
苦労ばかりの人生だったね
辛かったろう 苦しかったろう
楽しいことなんて いくらもなかったろう
でも お父さんは本当に
みよちゃんのためを思って
お嫁にやったんだよ

人間はねえ 苦労をしないといけないのだ
苦労が足りないと 馬鹿になってしまうのだ
だから みよちゃんのお父さんは
みよちゃんに苦労させるために
嫁にやったのだ
そうすることが 
ほんとうにみよちゃんのためになるからだ

幸せじゃなかったって思っているかもしれない
だけど人間は幸せになるために生きるのではないのだ
苦労続きだったね つらいことばかりあったね
愛しているよ みよちゃん
生きるってことは そういうことなんだよ
幸せはいつもみよちゃんのそばで花のように咲いていた

ほんとうに がんばったね



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星の言葉・3

2012-07-16 07:25:00 | 詩集・貝の琴

何やら外から
きれいな音が聞こえるので
窓を開けてみると
そこに 星がいくつか並んでいて
鈴のように震えて音楽を奏でているのだ

それは ハンドベルの音を
薄絹のようにやわらかくしたような
それは澄んだきれいな歌なのだ
わたしはしばし耳を傾けていたのだが
その音を聞いていると
胸がどんどん楽しくなってきて
微笑みが花のようにほわほわと咲いて
うれしくてたまらなくなるのだ

あんまり幸福なので
ついうっとりとため息をついてしまうと
星は合奏をやめて
静かにわたしに言うのだ

このたびもどうか伝えてください
この世界で 一番の幸せは
正しくあることだということを

わかりました 伝えますと言うと
星はまたうれしげに空に帰ってゆく
だからこうしてわたしは
詩に 星の言葉を書いているのだが

ああ たしかに
本当に幸せなのは
自分が正しいことをしていることだなあと
深く思いを同じくするのだった



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虹の夢

2012-07-04 08:05:38 | 詩集・貝の琴

夢が 剥げ落ちてくる
遠い昔 人間が
世界中に塗った 虹の夢が
剥げ落ちてくる

ミケランジェロの天井から
絵の具が 粉雪のように落ちてくるように
夢が 剥げ落ちてくる
今まで子どもの宝物だったおもちゃが
突然つまらないがらくたになったかのように
夢が 覚めてくる

何をしていたのか 今まで と
すべてに気がつく前に 
用意をしておこう
ちょうちょうや 花や 風の
声を聞いて
やさしさに 心をやわらかくしておこう
風に空に 神さまの声を探して
ほんとうのことの 感触を
胸に覚えておこう
深紅の薔薇の茂みに 手を差し出して
真実の痛みに 少しずつ
自分を慣らしておこう

夢が 剥げ落ちてくる
遠い昔 人間が
世界中に塗った 虹の夢が

少しずつ 剥げ落ちてくる





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星の言葉・2

2012-06-22 07:33:58 | 詩集・貝の琴

ゆうべまた
星が わたしのところにきて
自分の代わりに どうしても
みんなに伝えてほしいことがあると
わたしに言うのだ

遠い昔から
みなにそれを伝えられないことが
とてもつらく
長い長い間 星は悲しく
苦しんでいたというのだ

だからわたしは
星の代わりに言わねばならない
星は言った

戦争とは 大体
どんなものだと思いますか

わたしは言った
ああ それは
本当にむごいことだと思います

すると星は
悲しみと憐みに染まった瞳で
かすかに笑い わたしにこう言ったのだ

戦争とは
人殺しと 泥棒を
みんなでいっしょにやることです




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きみよ

2012-06-11 07:42:07 | 詩集・貝の琴

ああ なのはなの きいろき野に
きみよ ことのはを どこにかくした
ちょうのように わたしのみみが
かぜにさらわれ それをさがしにゆく

ああ 銀のなみの くりかえし
すなを あらう 潮騒の森に
きみよ ことのはを どこにかくした
とりのように わたしのまなこが
かぜにさらわれ それをさがしにゆく

ああ 見えぬガラスの 向こうの
はてしなき 灰の野に
きみよ ことのはを どこにかくした
わたしの のどのおくの 
こおりの ためいきが
かげろうのように 風にさらわれ
それを よびにゆく

きみよ ことのはを
どこにかくした
それとも
ことのはは もはや
ないのか
どこに かくした
ああ わたしの 心臓のおくの
白い 孤独のはねが
とおい 風をもとめ
さがしに ゆく
さがしに ゆく

きみを さがしにゆく



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段階

2012-06-08 07:10:35 | 詩集・貝の琴

人間もそうですが
花や木や動物などにも
魂の段階というものが ありましてね
要するに 魂として
何年生くらいかなという感じのものです

段階の違いというものは
どういうものかと申しますと
例えば これはとてもつらく苦しい例ですが
ある人が 誰かに自分の子供をさらわれ
殺されてしまったとします
ほんとうに 悲しいことです

人間は 自分の子供を殺した人を
激しく憎みます
心も魂も割れそうなほど悲しみます
それほどに つらいことなのです
子を持つ人間なら だれしもわかることでしょう

けれども
段階をすすんだ人ならば
自分の子供を殺した人を
許すことができるのです
なぜなら 愛する子供を
無残な悲劇で失ったという経験をしたということは
それは自分が持っていた罪の浄化であるか
あるいは神によって自分に与えられた
魂の試練という愛であるかもしれないということを
わかっているからです

火の玉のような憎悪を飲み込み 頬を涙で洗いながらも
自分の荒ぶる感情と戦い それを耐え忍び
殺意にさえ染まった肉塊のような感情を
自ら引きちぎり 血まみれの心になりながら
すべてを愛の中に帰し
もっとも憎いはずの人間を 許すという
魂の勉強をしたのです その人は
そして罪を犯した人の その浄化の苦しみを思い
その苦しみを自分の苦しみとして味わうこともできる

子を失った悲しみは同じでも
人間には これはまだ できません

これが 段階というものなのです


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野菫

2012-06-07 07:04:11 | 詩集・貝の琴

愛だけで ただすきだというだけで
ものごとをやっていると
なんともすがすがしくて 気持ち良い

まるで透明で清らかな流れの中に生きている
水晶のような魚のきれいなここちがして
気持ち良い

生きることや 自分として在ることが
それはそれは 快い
薄紫の菫が お日様をいっぱいにあびて
やわらかい土から しっとりとした水をのみ
闇に埋もれた 小さな鉱石の甘い雫を食べて
体中に歓喜が満ち足りて
あふれんばかりに うれしくて
ああ 涙がとまらない
幸福に弾けそうになる

ただちょっと残念なのは
ひとりぼっちだということだけかなあ
幸せなことを 誰かと分かち合いたくても
君はわたしのそばにいないから
君ならば どういうふうに
この幸せを歌うだろう
きっとそれは美しく歌うだろう
そしてそれは わたしと全く違う歌だろう
君はこの幸せをどんなふうに歌うだろうか
聞いてみたいけれど

野菫のように小さくなって
青い野の隅に隠れて
わたしは静かに歌を歌っている
ああ今日も 神様に向かって
まっすぐに額をあげて
挨拶をすることができる
なんて幸せなんだろう



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