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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

いにしえ

2013-03-21 06:42:50 | 詩集・貝の琴


古き罪を
影の鎖にひきずり
おまえはゆく

冷風の中を泳ぐ
白い砂の魚を
追い求め
それを食わんとして

いにしえの 彼方
記憶の歌が 空にとけてゆく
何が起こった 何があった
大切な宝の入った箱の
金の鍵を どこに置き忘れた
ああ 何を失った

砂の魚を捕まえて 
砂糖のようにそれを砕いて
なめる
かすかな甘みに酔いながら
同時にしびれる毒に侵されてゆく

何があった 何が起こって
こうなった
人間は こんなものでは
なかったはずなのに

幻の町の中を
白い砂の魚が泳いでいく
あれはなんだ
ここはどこだ
おれたちは どこから来た

神様
とうさん かあさん

じいざ…す……



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わたしに

2013-03-19 06:52:56 | 詩集・貝の琴


わたしに
いとおしいと 言ってくれる人は
いなかった
父も 母も 子供の頃にいなくなったし
わたしはどこへいっても邪魔者で
役立たずで だから
一生懸命 そこにいてもいいというものに
なろうとしていた
そのためには
世話になっている人のいうことは
なんでもきかなければいけなかったし
馬鹿だと言われても
やっかいものだと言われても
はいそうですと 言うことしかできなかった

わたしには この世界で
いるところがなかった
ああ 何度夢見たことだろう
風のようなものになりたいと
暖かな炎を心臓に燃やし
風のように 誰にも見えないものになりたいと
そうすれば いる場所など必要なくなる
嘘と真実の間の境界に
無理矢理ナイフを刺しこんで
悲鳴のような嘘をつこうとして
つくことができずに
心がこわれてしまいそうになることもない

そうとも わたしは風なのだ
見えても だれにも見えはしない
わたしの心も わたしの瞳も
もはやはるかかなたに飛んでいってしまった

わたしはだれか?
ここにいる わたしはだれか?
わからない
確かにわたしは 地球上のある場所にいることはいるのだが
ほんとうはどうやら いないらしいのだ
どういう仕組みでそうなったかはわからぬが
なんだかわたしは とても変わったことになってしまったらしい

風の声を聞く
光の歌を歌う
野のしとねを仮の家として
たんぽぽのごとく横たわる
胎児の心臓の音に耳をすますごとく
地球の声に耳を澄ます
白い魚が 耳の奥で光る
小さく ぱしゃりとはねる

見えぬが いるぞ
わたしは

見えても おらぬぞ
わたしは




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くすのき

2013-03-01 07:04:32 | 詩集・貝の琴

生きてゆく 苦しみや悩みを
くぐりぬけてゆくために
わたしは 木々や花々の愛に頼って
生きてきた
にんげんは 信用することができなかった
なぜなら
わたしの考えていたことは
にんげんを超えていたから
とても にんげんには言うことができないことを
やろうとしていた
不可能だとも思えることだが
不可能だとは思えなかった
できるような気がしていた
なぜだかは わからない
ただ 自分にはできるような気がしていた

孤独のともしびの中に隠していた思いを
くすのきよ あなたが知っていたかどうかは知らない
いや知りはしなかったろう
あなただけだった
本気でわたしを守ろうとしてくれたのは
木々の気持ちで わたしを信じてくれたのは
うつくしいくすのきよ あなたはもういない

ひとびとは あなたを失うことで
何を失うかを知らない
おしえてもいいが
あなたはそうはしないでくれというだろう
それを知れば にんげんが苦しくなるからと

にんげんが 生きることを支えるために
どれだけたくさんの もの言わぬものたちが
働いてくれているかを
にんげんよ すべて知れとはいわない
だが
ただ一本のくすのきが わたしを
心から愛してくれたことによって
わたしが生きながらえて
使命をはたすことができたことを
忘れないでほしい

くすのきよ なぜわたしがあなたを友に選んだのか
それはあなたが 森ではなく
人里の空き地に一人立つ孤独な木であったからだ
いずれは邪魔ものにされ 伐られる運命にあった
あなたの心が 姿が どんなに美しいものであろうと
にんげんにはわからない
にんげんにはまだ あなたが
邪魔なものにしか見えない
わたしもまた あなたと同じようなものであった

遠く故郷を離れ 見知らぬ人里に
独り生きている 見知らぬ生き物
にんげんによく似ているが
わたしにはにんげんのすることがどうしてもできない
どうやればみなのようにできるのか
まことにわからない

そしてくすのきは去り わたしはまだ地上に残る
やらねばならないことがあるからだが
もう二度と 毎日のようにあなたに会いに行っていたあの道を
通ることはないだろう
消えてしまったあなたの残骸を見たくはない
わたしはいまだに
昔わたしの犬が眠っていた犬小屋が
玄関先にあるような気がしている
まだいるのだ 彼女は
そう思っていなければ 支えられない何かを
今のわたしは抱いているのだろう

心配しなくていい
わたしは生きていける
ささえてくれている友がいるから
ただわたしは くすのきよ
わたしの くすのきよ
あなたが地上にいてくれたことを しっかりと記すために
わたしはこの詩を書きたかったのだ

住宅街に囲まれた せまいのっぱらの
隅っこに立っていた 小さなくすのきよ
愛していた 愛している
小さなかわいいわたしの犬といっしょに
あなたをわたしの記憶の宝箱に入れる
年月が経てば それは
美しい森林の思い出の染みる
ふしぎな水晶の結晶となって出てくるだろう

その水晶の名前を わたしは
緑金石と名付けよう
揺れる木漏れ日に染まった 透き通った緑の石だ
耳を寄せれば 風に踊るこずえの歌が聞こえる

ああ わたしの周りには今
愛が いっぱいだ
あふれる ほどに




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あこがれ

2013-02-27 06:57:28 | 詩集・貝の琴


荒れ野に 虹を描き
あこがれの 火を焚いた

灰の衣に 身を預け
蝋の薔薇を 食い
すべてを 笑い飛ばすために
狂った王の 玉座を作る

黒雲の帳が 星を隠し
水の太陽を 空に呼ぶ
おまえの涙の 太陽を

何が 欲しかった
すべてを 灰にしてまで
骨まで 水に溶けるまで
何を求めて やった

荒れ野に 虹を描き
あこがれの 火を焚いた
あこがれの 火を

つぶれかけた目に
砂をこすりつけ
ヤニに腐った 歯を抜いて
笑いながら おまえは言う

あなたの 白い衣が
欲しかった






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神様

2013-02-26 05:57:06 | 詩集・貝の琴

神様が君に 頬ずりをしに来る
たったひとりの 君のために

神様の心のために 風がざわめく
花が咲く 花が咲く 花が咲く
木々が揺れる
こいぬが転ぶ
猫が見つめる
小鳥が窓辺にやってくる

神様が君の所へ来るための
道をつくるために
世界中のすべてのものが動く
光が君を抱く 青空は澄み渡る
君はまだそれに 気付くことはできない
でも

世界中が 君を愛している
たったひとりの君に 愛を送るために
歌を歌い続けている




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2013-02-05 06:34:58 | 詩集・貝の琴

昔は 
宝物をいっぱい 持っていた

大きな翡翠の実 真っ赤な真珠
青い珊瑚 金の冠
絹の羽織に 空のような傘
白い牡牛の引く 螺鈿の車
銀の鈴なる 月毛の馬
月の桂の香りする 館
青い海のほとりに住む 美しい乙女なる 妻
すなどりなどして 春と秋にはともに住み
冬と夏には別れて住んだ
潮の香りのする文が 彼女から届くのが
それは幸せだったからだ

長い年月が経った
妻はいなくなり 館もなくなった
馬も牛も傘も服も金も珊瑚も珠玉も
すべて 消えた
砂時計の 砂とともに
時の中に吸い込まれていった
別に かまわないのだ
幸せのそれはふちどりにすぎなかったから
それはきれいなふちどりであったが
わたしは 簡素な幸せでも かまわない

なのに

猫が一匹 残った
猫が

わたしのもとに 残った
たった一つの 宝は
一匹の 水晶の目をした 白い小さな
猫 だった



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めざめたか

2012-11-11 06:54:58 | 詩集・貝の琴

めざめたか
どうだ
おおきい だろう
おまえは

思っていたいじょうに
いいだろう
自分は

どうだ
つよいだろう
おまえの 腕
どうだ
はやいだろう
おまえの 足

どうだ
うつくしいだろう
おまえの 瞳

どうだ どうだ
おまえ
おまえの やりごこちは
ありごこちは
生きごこちは



さいこう です



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かつてなく

2012-11-11 03:08:53 | 詩集・貝の琴

かつてなく
またとない
あたらしき ものよ
めざめなさい

ひとりではない
あなたには ともがいる
たすけあい
あいしあいなさい
ときには
たたかいなさい

みちは つらく
きびしく そしてながい
だが あなたはゆく

あなたは あなたとして
あなたを 創造してゆきなさい
あなたの あるいたみちは
かつてなく
またとない
あたらしき くにとなる
あなたの ゆくてには
かつてなく
またとない
あたらしき みちがある

たえなさい
すべてのことに
それはよろこびとなるであろう
なによりの
こうふくとなるであろう

やがて
かつてなく
またとない
あたらしきものに
神が おどろく
そして 発見する
あなたを

ゆきなさい
はてしなきみちを

あいしている



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でてゆかむ

2012-11-10 03:15:59 | 詩集・貝の琴

あたらしきものが きたる世に
そのものたちが みる
この世の すがたが
いかなるものと うつるか
君たちに
想像することが できるか

空気の鉄の部屋で
明るいテレビの 光と音が
世界のまぼろしをつくる
その世界の中にいる
君たちには わからないものを
あたらしきものは みる

夢みるものに 明日はないと
きつつきが とびらをたたいて鳴く
その歌に 耳が背を向ける
君たちは 眠り続けるのか

ただ 白い猫だけがひとり
その歌を 見染め
夢の硬い扉を
月の形の爪で
かりかりと掻く

でてゆかむ


猫は言う



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天使の仕事

2012-11-04 07:34:43 | 詩集・貝の琴

ほんとうに 人間が
なにもしない ものだから
しかたなく 
天使がやっているんだよ
そのくらいのことは
人間がやらなくてはならないということ
天使がやっているんだよ

今はね 君たちは
何にも知らなくて
のほほんとしているけど
ほんとうはね
大変なことなんだよ
それを一応 教えておいてあげよう

いつか そう遠くない未来
君は そっちにだけは
絶対にいきたくないという
道に入っていかねばならない
他の道にいこうとしたら
海にどぼんと落ちて溺れたり
怖い毒蛇を踏んでひどいことになったり
妙な病気にかかって寝込んだり
そんなことがあるから
絶対にその道以外の道には進めない
そういうことに 追い込まれるのだ

君はきっと思う
そんなことは 馬鹿のやることだ
そんなことは 女のやることだ
そんなことは 偉い俺様のやることじゃない

でも 神様は甘くない
絶対にそれを君はやらなくてはならない
馬鹿や女や偉くない人のやることを
天使はずっとやってきたからだ

もう少しで わたしの言いたいことが
君にもわかるだろうから
言っておくよ
その時が来たら
絶対に嫌だと言って逃げないで
その 最も行きたくない道に
飛び込んでいきなさい

それ以外に 君が助かる道はないからだ



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